(撮影タイムが終了し、記者会見が開始された)
―初タイトルを最年少の記録更新での獲得となりました。いまの気持ちは?
藤井 獲得についてはまだ、あまり実感がないのですが、とてもうれしく思っています。また、これからタイトルホルダーとして、しっかりした将棋をお見せしなければという思いもあります。
―今シリーズ五番勝負を振り返って?
藤井 シリーズを通して渡辺先生の指し手で勉強になるところが非常に多かったと思います。
シリーズを通して自分として成長できたかと思っています。
―師匠の杉本八段にも。弟子が初タイトルで藤井棋聖となり、お気持ちは?
杉本 タイトルは私たち棋士にとって夢の舞台で、すべての棋士の目標です。わが板谷一門では、私の師匠(故)板谷進九段、東海地方にタイトルを持ち帰るのが長年の悲願でした。それを私の弟子、私の師匠からすると孫弟子の藤井七段が今回、実現してくれて、東海地方にタイトルをついに持ち帰ってくれるんだなと思うと感慨深いですね。
―新記録について、タイトル挑戦、獲得も最年少記録を更新。どう思っているか?
藤井 最年少記録という点に関しては自分自身では、あまり意識することはなかったのですが、獲得できたというのは非常にうれしい結果だなと感じています。
―コロナウイルスの関係で対局ができない期間が約2ヵ月あり、対局再開されてから成績が16勝2敗(未放映のTV棋戦含む)と非常に絶好調。理由は?
藤井 4、5月にかけてしばらく対局が空きましたが、それで自分自身の将棋を見つめ直すことができたのがよかったかと思います。
―少し具体的に?
藤井 現状の自分の将棋の課題を見つけて、それを改善するという形でやっていました。
―差し支えない範囲で、普段の研究でAIをどのように活用しているか?
藤井 ソフトの読み筋や評価値を見て、自分の考えと照らし合わせるという使い方が多いです。
―ご家族にはどのように伝えたい?
藤井 いつも自分から結果を報告することはないのですが、対局はいつも見てくれていると思うので、こういう結果を出せてよかったと思います。
―(隣にいるが)師匠にはどのようにいいたい?
藤井 入門のときからずっとお世話になってきたので、1つ恩返しができたのかなと思っています。
―将棋めしが注目。今日の昼のみそ煮込みうどんは地元愛に満ちたメニューだが、どういう選択だった?
藤井 あまり深い意味はないのですが、愛知の名物でもあるので、今日の対局がそれで好結果を残せたのはよかったなと思います。
―今日の和服は?
杉本 私から答えてもいいですか。羽織と袴は私がプレゼントしたもので、中の白い着物は藤井七段が自分で作ったものですね。
―杉本八段が「東海に持ち帰ったタイトルは、大切にいつまでも保ち続けてください。これからも将棋が指せる幸せと、すべての人への感謝を忘れずに」のメッセージを寄せているが?
藤井 タイトルは獲得できましたが、これからさらにいっそうの精進が必要かと思っていますし、これからもファンの方に楽しんで見ていただけるような将棋を指せるように、頑張っていかなくてはいけないなと思います。
―かなり過密なスケジュールで対局が続いてファンの方からも疲れがないか心配の声も。対局を終えたいま、疲れ具合や体調は?
藤井 先日、王位戦の対局があって今日も中1日という形ではありましたが、前日に十分、休息が取れて今日もいい状態で対局に臨めたかなと思います。これからも体調管理に気をつけていい将棋が指せるようにしていきたいと思います。
―昭和に活躍した板谷進先生が、東海地方にタイトルを持ち帰るのを夢にしていた。夢をかなえた感想は?
藤井 これまで地元の多くの方に支えていただいたり、温かく見守っていただいたりしたからこそ、ここまでこられたと思います。これで地元の方にひとつ、いい報告ができるかと思います。
―将棋界はAIとの共存期を迎えた。そのような時代に人間、棋士の持つ可能性について?
藤井 数年前は棋士と将棋ソフトの対局が大きな話題になりましたが、そういう対決の時代を越えて共存の時代に入ったと思います。将棋プレイヤーとしてはソフトを活用することで自分自身、より成長できる可能性があると思っていますし、見ていただく方にとっても観戦の際の楽しみの1つにしていただければと思います。いまの時代においても、そういう将棋界の盤上の物語は不変と思いますし、その価値を自分自身、伝えられたらと思います。
―公式戦29連勝、今日も最年少タイトルで、次は何で驚かせて?
藤井 自分としてはさらに実力を高めて、よりいい将棋をお見せできるようにしたい。その結果としてさらなる活躍ができればと思います。
―各放送をご覧のたくさんのファンの方に向けて一言。
藤井 今日もご観戦いただきまして、ありがとうございました。今回、棋聖を獲得できて、これまで応援していただいた方にはいい報告ができることをうれしく思っています。これからもいっそう精進して、よりよい将棋を指せるように頑張っていきたいと思いますので、応援よろしくお願いいたしします。
(書き起こし=飛龍記者。写真=潤)