モニタに中村六段が頭を下げる様子が映ると、関係者が対局室へ慌ただしく移動する。インタビューが行われたのち、二人はファンの待つ解説会場へ移動した。
―― 中盤までほとんど時間を使われていなかったですね。
羽生 そうですね、その後にどうするかというのが予想がつかなかったので。
―― 途中、長考された局面(△8五歩……74手目)がありましたが。
羽生 攻めが細いので、気をつけて攻めないといけなかったですね、切れないように。形勢自体は微妙だと思っていました。
―― 勝ちと思われたのはどの辺りですか。
羽生 △5四角と打ったあたりで。
―― これで2連勝、棋聖戦5連覇にあと1勝です。通算獲得タイトル81期もあと1勝と間近に迫っているのですが、次への意気込みをお願いします。
羽生 そうですね、ええ。まあ、変わらずに、一生懸命指せたらいいなと思います。
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
中村 ずっと受ける展開だったので、あまり本意の展開ではなかったですね。
―― △3五歩(69手目)に随分考えられたんですが(1時間4分)、その辺りは。
中村 受けを探していたんですが、どう指したらいいかわからなくて、少し苦しいかなと思いました。
―― これで後がない展開ですが、次へ向けての意気込みをお願いします。
中村 そうですね、意識せずに、普段通り指したいと思います。
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棋聖戦第2局は116手で羽生棋聖が制し連勝した。終局は19時4分、消費時間は▲中村3時間59分、△羽生3時間48分。第3局は7月5日(木)島根県江津市「旅館ぬしや」にて行われます。
大盤解説会では△7二銀(76手目)の局面で次の一手クイズが出題され、石田九段と室田女流初段が当選者を発表した。
(当選番号を読み上げる石田九段。「46番の方、おめでとうございました。次はよんじゅう……4が多いね、縁起でもない」)
(「それではちょっと解説をしましょうか、この角は……角はどこでしたかね?」と石田九段。室田女流初段が8三の地点に戻し、「こんな、角が歩みたいに向かい合う将棋は見たことがないですよ」)
(石田九段が2008年の▲石田和雄九段-△中村太地四段(当時)戦を並べた。結果は先手勝ち。「今みたいな将棋が毎回指せればいいんですけど、もうできなくなったのでね」)
(局面が元に戻っているか確認。室田女流初段の師匠、杉本七段も見守る)
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図は16時10分頃の局面。羽生棋聖は△7二銀(図)と引いて角に当てた。先手の攻めを催促した手だ。控室では▲7三歩成△8三銀▲6二と△9三角(参考図)が並べられ、この端角が受けにくいと言われている。飛車を見捨てる大胆な順だ。
単純な銀取りではなく、その先に金を狙っているのが厳しい手たるゆえん。ここで(1)▲6六銀は、△8六歩▲7七金△3九角と数を足されて受けにくい。(2)▲7六歩は、△7四銀▲8四歩△7五銀で攻めが続く形だ。どちらの変化も、先手の玉形が不安定で後手の玉は堅いという差が、後手にとって大きくプラスに働いている。攻め合いは後手に分があるのだ。中村六段は持ち時間も残り少なく、苦しい状況に追い込まれている。
(検討する豊島七段と室田女流初段)
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