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第93期棋聖戦挑戦者決定戦

2022年4月25日 (月)

五番勝負日程

第1局 6月3日(金) 兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」
第2局 6月15日(水) 新潟県西蒲区「高志の宿 高島屋」
第3局 7月4日(月) 千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」
第4局 7月17日(日) 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」
第5局 7月27日(水) 静岡県沼津市「沼津御用邸東付属邸第1学問所」

永瀬挑戦者インタビュー

感想戦終了後、挑戦を決めた永瀬王座にインタビューが行われました。

――挑戦者決定戦を制して、藤井棋聖への挑戦権を獲得しました。
永瀬 初めてのタイトル戦ですので、実現できてよかったです。
――3期前に当時の藤井七段と挑戦者決定戦で敗れました。その藤井棋聖が待ち構えていることについていかがでしょうか。
永瀬 七段当時に挑戦者決定戦を戦って、そこから藤井棋聖のタイトル戦の連勝が始まった印象です。七段でしたが、力の差があると感じてしまっていたので結果は仕方ないと思っていました。現在はやってみないとわかりませんが、強いことはわかっているので、まずは1勝を上げられるようにと思っています。
――藤井棋聖との対戦成績は永瀬王座から見て3勝7敗ですが、2連勝中でもあります。
永瀬 3勝7敗ですが、渡辺名人とのスコアのほうがかなり悪いので気にしていないところはあります。藤井棋聖との対戦は最初にかなり差があると感じていましたが、3勝7敗なら仕方ないと思います。
――6月3日に五番勝負が開幕します。そこまでに向けてはいかがですか。
永瀬 藤井棋聖の実力は自分がいちばんわかっていると思います。1ヵ月ちょっとの時間を精一杯あてて、なりふり構わずやらないと勝負にならないという印象です。
――昨年の王将リーグで勝たれたことが大きかったとうかがっています。その対局を振り返って、対戦のヒントを得ましたか。
永瀬 藤井さんと対局できると得るものはたくさんあります。王将リーグは一日のことを鮮明に覚えている対局で、自分はそこから浮上できたので大きな1勝でした。あと、藤井棋聖は消化試合だったのですが、それは気にしないタイプなのは知っていました。そこで勝つことができたのは大きかったと思います。
――永瀬さんが名古屋にいったり、藤井さんが東京にきたり研究会をやっているとうかがっています。この1年の交流はいかがでしょうか。
永瀬 1年では会って指したのは1回ありました。自分が名古屋での対局の前にありました。朝日杯の前です。藤井棋聖が二冠のころです。それ以外は対面ではやっていません。ただ、藤井棋聖は対面のほうが集中型なのが知っているので、対面でやるとまた違うのかなと思います。
――オンラインはどのくらいやっていますか。
永瀬 頻度は言えませんが、定期的にという感じです。

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――藤井棋聖の強さをどこに感じますか。また、ほかの対局もご覧になって、藤井棋聖の将棋をどう感じていますか。
永瀬 最近は藤井棋聖の対局がなかったですが、エンジンをかけてくると思います。藤井棋聖は棋士になりたてのころから知っていますが、変わらないのがすごみだと思います。普通は変わってしまう気がしますけど。それがすごいところだと思います。
――変わらないのは将棋に対する姿勢とか気持ちの面でしょうか。
永瀬 気持ちですね。タイトル戦負けなしですし、余裕を持たれて何かをするのが自然と思いますが、結果を出しても満足していないタイプだと思います。例えば、99うまくいっても、残りの1でうまくいかなかった部分を掘り下げてくるタイプです。それを知っているので、すごいことだなと。タイトル戦で負けなしなら、99勝っているなら、1を掘り下げる必要がないと思うのですが、掘り下げてくるのが明らかにわかります。出た結果ではなく、全体で見るんです。少し悪いところがあれば、しっかり見るんです。それが四段のころからまったく変わっていなくて、それがすごいことだと思っています。
――タイトル戦は初めてです。特別な気持ちはありますか。
永瀬 タイトル戦自体が厳しいと思っています。なので、感慨に浸っている場合ではなく、しがみついていくしかないという印象です。感傷に浸る余裕はないと思っています。
――五番勝負に向けてコメントをお願いします。
永瀬 渡辺名人には去年も負けていますし、勝ててよかったです。藤井棋聖との対局を注目していただけるかは自分次第と思っています。6月までの日程をうまく使って1勝できるように、こちらが棋力を上げられるように勉強したいと思っています。

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(書き起こし=銀杏、撮影=文)

感想戦

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(文)

終局直後

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■永瀬拓矢王座

――本局を振り返っていかがでしたか。
永瀬 矢倉対雁木の力戦のような将棋でしたが、穴熊に組み替えられて、かなり神経を使う展開になって自信はありませんでした。
――△1五歩(36手目)と突いたあたりはいかがでしたか。
永瀬 少し進めると手が詰まりそうだったので、主張を作らないといけないと感じました。
――どのあたりでいけると思いましたか。
永瀬 △1七玉(144手目)と入玉はできましたが、よくわかっていなかったです。
――攻め駒を攻めて、完封した感じの将棋に見えましたが、いかがでしたか。
永瀬 攻め駒を攻める展開になりましたが、穴熊が残っていて、一つでも網が破れるといけないので、神経を使う展開が続いていたと思います。
――棋聖戦では2回目の挑戦です。お気持ちはいかがですか。
永瀬 挑戦することができてよかったです。去年と同じカードの挑戦者決定戦で、去年もチャンスはあったと思ったので、最後まで気を抜けないと思いました。
――藤井棋聖とは初めてのタイトル戦です。お気持ちと抱負をお願いします。
永瀬 大舞台で藤井棋聖と対局できることが実現できたのはよかったと思います。五番勝負が始まるまでに内容をよくして、いい勝負ができるようにしなければならないと思っています。

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■渡辺明名人

――本局、研究を重ねてこられたと思いましたが、序盤、中盤はいかがでしたか。
渡辺 組み上がりは失敗したかなと思ったんですけど、そのあと無理に打開していったのがよくなくて、攻めが細い展開になってしまいました。
――穴熊に組む展開は誤算があったんでしょうか。
渡辺 千日手を打開するならそれくらいかなと思ったんですけど、結果的には無理だったかもしれないですね。
――挑戦者決定戦に敗れて藤井棋聖への挑戦はなくなりましたが、そのあたりのお気持ちは。
渡辺 挑決に来たからには勝ちたいというのがあったので、そこはすごく残念です。

(文)

永瀬王座が挑戦権獲得

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藤井聡太棋聖への挑戦を目指す第93期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦▲渡辺明名人-△永瀬拓矢王座戦は、19時24分に158手で永瀬王座の勝ちとなりました。消費時間は▲渡辺3時間50分、△永瀬3時間42分。
勝った永瀬王座が挑戦権を獲得です。五番勝負第1局は6月3日に兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」で指されます。
(銀杏)

不倒の永瀬流

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永瀬王座は△2四玉(116手目)から入玉を含みにして負けない態勢を目指しました。渡辺名人は嫌みをつけて追いすがっていますが、この玉を寄せるのは至難の業。永瀬王座が着実にリードを広げています。

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(文)

押さえ込みの壁

20220425k渡辺名人が手を尽くして攻めていますが、永瀬王座の押さえ込みの壁が厚く、突破口を見いだすのは難しい状況です。

控室に日本将棋連盟会長の佐藤康光九段が訪れました。棋聖6期の実績を持ち、永世棋聖の有資格者。勝又七段と継ぎ盤で検討した手が実戦で出ると「けっこう当たってますね」と手応えを感じている様子でした。

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(文)

いよいよ決戦

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渡辺名人が▲4六歩(79手目)と反攻に出て決戦になりました。実戦は△4六同歩▲2五歩△同歩▲4五歩と進行。積極的に攻めかかっています。

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狙いは△4五同桂▲同桂△同銀▲4四桂で、こう進めば先手成功です。とにかく先手陣が堅いので順調に攻めが続けばいいのですが、参加しているのは飛角桂で非常に攻めが細いのが問題。渡辺名人が得意とする展開ではありますが、条件は先手にとって厳しそうです。ただ、堅さが大差のため、一発でもいいパンチが入れば後手玉は空中分解してしまう恐れもあります。永瀬王座にとって神経を使う中盤戦になりそうです。

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名人の辛抱

20220425g戦いが始まり、永瀬王座がじりじりと態勢を整えています。穴熊は堅い囲いですが、金銀が偏ることが弱み。永瀬王座は△6四角(68手目)から△3三桂(74手目)と、角と桂のコンビネーションで手薄な方面に狙いをつけました。次に△2五桂▲同桂△1九角成と飛車を目標にする順があり、先手としてはやっかいです。渡辺名人はなんと▲2六歩(75手目)と辛抱しました。

20220425h囲いの補修なら歩を打つのは自然ですが、2筋は先手にとって攻撃陣。飛車も使えなくなるので部分的には相当につらい手です。

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永瀬王座が動く

20220425f渡辺名人が穴熊への組み替えを見せると、永瀬王座が△6五歩(64手目)と動きました。渡辺名人は歩を取らずに▲9九玉と引いて迎え撃ちましたが、相手に好きなように攻めさせるだけに勇気のいる方針選択です。控室には深浦康市九段が訪れ、勝又七段と「1筋の位が大きい」という話をしていました。現状は攻勢に出ている永瀬王座がペースを握っていますが、堅い穴熊のカウンターも怖いという評判です。

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(文)

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