産経新聞(以下、産経) 本局は先手番でした。第1局と第2局は矢倉でしたが、今回は得意の角換わり腰掛け銀でいこうと思われていたのでしょうか。
藤井 そうですね。角換わりから腰掛け銀にしようと思っていました。
産経 開始からどんどん指し手が進みましたが、藤井七段としても研究範囲だったということでしょうか。
藤井 そうですね。途中まで考えたことのある局面でしたが、こちらの玉形が見慣れない形になって、うまくまとめられませんでした。
産経 どの辺りまでが想定の範囲内だったのでしょうか。
藤井 △9九角成(82手目)に▲7七桂で難しいイメージでしたが、△9九飛(90手目)と打たれて対応が分かりませんでした。そのあとにいくつかミスが出てしまったと思います。
産経 タイトル戦初黒星となりました。
藤井 今日の内容を反省して、次につなげたいと思います。第4局がまたすぐにあるので、いい状態で臨めるようにしたいです。
東京将棋記者会(以下、記者会) 大長考で▲9八銀(91手目)とされたところは、どのようなことを読んでいたのでしょうか。
藤井 (前手の)△9九飛が読みにない手で、形勢としてはいい勝負かと思ったんですけど、端玉であまりない形なので、そのあとはちょっとまとめ方が分からなかったです。
記者会 2勝0敗で迎えた本局でしたが、どのような心境で臨まれましたか。いつもと同じように指せたでしょうか。
藤井 自分としては普段通り臨めたかなと。途中で何回かミスが出てしまったのは、実力かなと思います。
(睡蓮)
産経新聞(以下、産経) 本局は後手番でした。藤井七段の角換わり腰掛け銀を想定して準備してこられましたか。
渡辺 そうですね。予定の本命というか。
産経 昼食休憩までに76手と、早いペースで進みました。どの辺りまで研究だったのでしょうか。
渡辺 そうですね。午前中はもちろん、予定の範囲内でした。ただ、そのあとは先手の手も広いので。△9九飛(90手目)くらいまでは考えたことがあったんですけど、変化が多いのであんまりきちんとは。
産経 △9九飛に▲9八銀と打たせて△6七馬としたところの手応えはいかがでしたか。
渡辺 合駒なら馬を逃げてという予定でやっていたので。
産経 やれるという感触があったのはどこでしょうか。
渡辺 △7八馬(112手目)と入ったところは指しやすいと思ったんですけど、終盤は読んでいない手がいっぱいあったので。
産経 次局の抱負をお願いします。
渡辺 とりあえず一つしのぐことができたので。依然としてカド番ですけど、この勢いで頑張れればいいかなと思います。
東京将棋記者会(以下、記者会) 本局は0勝2敗のスコアで迎えた大一番でした。どのような心境で臨まれましたか。プレッシャーを感じる部分はありましたか。
渡辺 状況が苦しかったので、開き直ってというか、思い切っていこうかなと。決めていたところはどんどん指そうと思っていました。
記者会 本局の勝利はご自身にとってどういう勝利だったでしょうか。
渡辺 作戦が当たったところはあるので、勝ち方の部類ではいいものではないでしょうけど、カド番で贅沢をいえる状況ではなかったので。結果に満足して次に向かいたいと思います。
記者会 終盤は慎重に指し進められました。
渡辺 想定を外れたところからいきなり終盤戦なので。時間がないと分が悪いなと思っていたので、そういう方針で進めていました。最後はちょっと上に逃げられるのをうっかりしてたんですけど、時間があったので冷静になれました。
(睡蓮)
渡辺明棋聖に藤井聡太七段が挑戦する第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局は、19時12分に142手で渡辺棋聖の勝ちとなりました。消費時間は▲藤井聡3時間59分、△渡辺明3時間47分。渡辺棋聖がカド番をしのぎ、五番勝負は渡辺1勝、藤井2勝となりました。
第4局は7月16日に大阪市「関西将棋会館」で指されます。(銀杏)