▲8四歩△同歩▲8三歩で図の局面。▲8四歩△同歩は飛車を狭くする意味で自然。そして▲8三歩がさらに好評を博す一手でした。「うまい手渡しだと思います」と屋敷九段。
△8三同玉は▲7四銀△同歩▲7一飛があります。かといって、玉近くの垂れ歩を放置するのも気持ち悪いもの。後手は指し手の悩ましい局面を迎えています。あまり激しく動くと、それこそ8三歩を生かして反撃されそう。じっとしているわけにもいかなそうです。先手が攻めてくる可能性もありますし、▲3七銀でも差が開くかもしれません。西山女流二冠の60手目△3六歩はさすがの一手でしたが、福間女流王座の対応も見事です。



図から43分の考慮で▲3六同歩。福間女流王座は逸ることなく、グッとギアを落としました。激しい変化をすべて読んだうえでの選択と思われます。継ぎ盤周りから「強い」の声が漏れ聞こえました。▲3六同歩に△9五歩なら▲8四歩△同歩▲3七銀(8筋を突かずに▲3七銀は△9四飛)とさらに手を入れるかもしれません。▲3七銀は壁銀を立て直して大きな手になります。
「ねじり合うのかと思いましたが」と藤森五段。控え室の予想とは異なり、ストレートに激しく戦う将棋になりました。福間女流王座は9三にいた銀を▲9三角成(57手目)で食いちぎり、▲7五銀(59手目)で飛車を捕獲しました。
