2025年9月12日 (金)

今期、五番勝負の日程は次の通りです。

第1局 10月22日(水)東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
第2局 11月12日(水)福島県郡山市「郡山ビューホテルアネックス」
第3局 11月19日(水)山形県天童市「天童ホテル」
第4局 12月8日(月)東京都渋谷区「将棋会館」
第5局 12月15日(月)東京都渋谷区「将棋会館」

以上で本局の更新を終わります。
ご観戦誠にありがとうございました。

感想戦終了後、福間女流王座と西山朋佳女流二冠の記者会見が行われました。

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【記者会見】

――(西山女流二冠)五番勝負への抱負。

西山「今日の対局は、奨励会を退会された中さんとの初の対戦となりまして、凄く注目していただいたかと思うのですけど。厳しい内容で苦戦を意識していたのですけど。最後はなんとか攻めを手にすることができて勝つことができたのかなと思っています。昨年に引き続いて五番勝負を戦わせていただくということで。前回も一方的な内容で負けてしまう将棋が多く、少し残念な気持ちもありますので。そういったところも踏まえて、今期は頑張っていけたらなと思っております」

――(福間女流王座)西山女流二冠の印象。五番勝負への抱負。

福間「西山さんの印象は、いつも安定して勝たれている印象があります。本局も凄く難し対応の将棋だったと思うんですけれども。うまく勝機を見出して勝たれたなという印象がありました。今期の抱負は、昨年は私の出産によって日程変更や対局場変更をしていただきましたので、地方に伺うことができなくて、現地の方々や関係のみなさまには、本当に感謝の気持ちで一杯ですし、伺えなかったことは、個人的にも凄く残念に思うところなので。今期は、またそういった地方に伺うことも凄く楽しみですし。自分の全力を尽くして、対局も一生懸命頑張っていきたいと思っております」

――(西山女流二冠)中女流三段と初手合いでしたが、印象をもう少し聞かせてください。

西山「中さんとは、公式戦では初手合いだったのですが。奨励会では何局か当たっておりまして。その時は、香落ちと平手で2局か3局ぐらいやったと思うのですけれど。その時よりも、たくさん戦域を広げられていて。本当に何でも指されるオールラウンダーで。全体を通して本筋の指し手が多いと思っています。本局も対抗形としては、かなり王道の展開に進んで。一手一手妥協なく選ばれる印象があったので。本譜も苦戦していたのかな、といったところでした」

――(福間女流王座)タイトル戦では特に防衛戦で力を発揮されている印象があるのですが。挑戦する場合と防衛戦で、気持ちの持ちようの違いとか、そういったものはありますでしょうか。

福間「自分自身は、そこまで変わりがないのかなというふうには思うんですけど。女流王座戦ならでは、というところでいうと、やはり前夜祭が凄く華やかですので。そういったところから、緊張感やモチベーションが徐々に上がっていって。そういう女流王座戦ならではのものも、一つ楽しみではあるのかなと思っています。あとは、秋口にかけて対局数が増えることが多いので。その中で戦うことの難しさというのは、実感していますので。体調管理に気を付けることが第一なのかなと思います」

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――この五番勝負で、お二人の対戦が100番に到達する可能性もあるかと思います。100局指すというのは、とても偉大なことだと思うのですが、お二人でそれだけの対局を重ねて来られたことについて感想を聞かせてください。

西山「いま教えていただいて、初めて認識したところではあるのですが。基本的に福間さんが多くのタイトルを保持されていて。そこに挑戦してという構図になっているかと思っていますので。その中で、たくさん対局を重ねられているというのは、なんとかトーナメントやリーグ戦を勝ち進んで来られたというところでもあるのかなと思うので、私にとっては喜ばしいことなのかなと思っています」

福間「あまり意識していなかったのですけど。100局というと、私の中では羽生・谷川の100番勝負という棋書もありましたし。もの凄く対局数が多いんだなということを率直に実感しています。西山さんと対局することで、凄く自分自身の成長を実感していますので。なんとか吸収して力を付けられるように対局できたらなと思っています」

――中女流三段についてお聞きします。お二人に続いて女性では3人目の奨励会三段ということで。中さんが女流棋士になって、今回のようにタイトル挑戦に絡んで来たということで。お二人の二強時代という勢力図が変わっていく可能性もあるかと思いますが、その辺りはどのようにお考えでしょうか。

西山「中さんの将棋を拝見すると、凄く完成度が高くて強い方だなと認識しておりまして。今日も本当に幸運な結果だったなというところで。私としては、中さんと福間さんで、という構図になってしまうというところを、なんとか頑張っていければというところなのかなと思っております」

福間「中さんは本当になんでも指されて。しかも、本筋の将棋で。的を絞りにくいというところはあるのかなと思っています。私は最年長なので、どうしても早めに体力とか、技術面とかが落ちてきやすいのは免れないのですけど。そこをなんとか維持というか、向上できるように、若いお二人に食らいついていけたらという気持ちでやっています」

――春先に西山女流二冠の体調不良ということがあり、また、福間女流王座も出産直後ということで。体調面はもう大丈夫かと思いますが、この五番勝負に臨むにあたって、体調面についてはいかがでしょうか。

西山「女流王位戦では多くのみなさまにご迷惑をおかけしてしまって。自分の管理といったところを見直す機会にもなりました。みなさまにご配慮いただきまして、おかげさまでいまは健康に過ごしておりますので。また、以前の形でタイトル戦に挑んでいけそうかなと思っております。なので、病気というよりは、その時々の感染症だったりに気を付けて、しっかり予防して、こういったことを繰り返さないように努めることを意識していきたいなと思っています」

福間「この女流王座戦もそうなのですが、私の出産によって日程変更もしていただきまして。本当に関係者のみなさまには感謝の気持ちで一杯です。出産も終えて、しばらくして落ち着いて。いまはもう体調もだいぶ戻ってきていますので。引き続き、対局過多の時期に入っていくので。体調管理にしっかり努めて、一局一局、全力を尽くせるように頑張っていきたいと思っています」

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終局直後の両対局者にインタビューが行われました。なお、本局ではインタビュー中のスチール撮影はありません。ご了承ください。

【西山女流二冠の談話】
―― 一局を振り返って、どのような将棋でしたか。
「ダイレクト向かい飛車の一番突っ張った将棋になって。手持ちの金をどこに使うか。使わなければならないという、その辺りが形勢の境界線なのかなと思っていて。戦いになって、本当に難しいかなと思っていたのですけど。打ったところ(68手目△3五金)も自信があったわけではなくて。難解な局面が続いていたのかなと思いました」

――手応えを感じた局面はどの辺りでしょうか。
「▲6八金打(83手目)が手強い受けかと思っていたのですが、△5七と(86手目)▲同金上△4七銀成が見えて。思ったより攻勢が取れているのかなと思っていて。自玉がしばらく安泰なので、実戦的には結構、こちらの手の難易度のほうがわかりやすいのかなと思いました」

――これで2期連続挑戦となりました。連続挑戦を決められての感想をお願いします。
「女流王座戦には何度か挑戦させていただいていて。不出来な内容も多かったのかと、記憶に残っているところではあるので。少しでも、そういったところを踏まえて、いい将棋を求めて頑張っていきたいなと思っています。

【中女流三段の談話】
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
「仕掛けてから、ずっと自信がない将棋だったかなと思います」

――挑戦者決定戦は敗れましたが、この結果については、どう受け止めておられますか。
「いまの自分の実力では仕方がないのかなと思っています」

――西山女流二冠とは初手合いでしたが、対戦してみての印象をお願いします。
「タイトル保持者とは勝ち上がらないと対局できないので。対局できてよかったです」

20250912104図は16時28分の局面。
ここまでの消費時間は▲中3時間0分、△西山2時間42分。
西山女流二冠の猛攻が続いています。角取りを放置して△4六桂が好手。これで後手の攻めが続くと見られています。西山女流二冠が一気に流れに乗りました。2年連続の挑戦が近づいています。

2025091294図は16時20分頃の局面。
ここまでの消費時間は▲中2時間58分、△西山2時間39分。
手厚い先手が好調と見られていた局面から、西山女流二冠が剛腕を発揮して、先手陣に飛車を成り込みました。図の△4五金も厚い攻めで好手と見られています。どうやら形勢は逆転模様。中女流三段は持ち時間をほぼ使い切っていることも不安材料です。

2025091273図は15時40分頃の局面。
ここまでの消費時間は▲中2時間35分、△西山2時間21分。
一時は後手がうまく立ち回って有利になったのではないか、と見られていた局面もありましたが、現局面は桂を成り捨てて飛車を成り込んだ先手が手厚く、好調と見られています。例えば、図から△2二歩は▲3三歩成と勝負されて、後手がつらくなります。とはいえ、先手陣もかなり攻められるので、一手間違えれば、すぐに状況が逆転してもおかしくありません。残り時間も少なくなっているため、ここから勝負所になりそうです。

Dsc01882_2 桂を犠牲に飛車をさばいた中女流三段が好調と見られている。

Dsc01866 終盤力に定評のある西山女流二冠は勝負に持ち込めるか。

2025091251図は13時45分頃の局面。
先手は▲2三角と飛車取りに角を打ちこみ、△4二飛に▲6六歩△4三角▲6七角成と自陣に馬を作りました。控室では「先手陣が手厚い」と評価されています。一方、後手は図から△2五歩▲2九飛に△3六歩と桂頭を目標に反撃に出ています。相手の手に乗った好調子の反撃で、こちらも主張があります。

Dsc01874 中女流三段が手厚い陣形を築いた。

Dsc01877 西山女流二冠は手順に反撃に出ている。