2015年9月11日 (金)

五番勝負開催にあたって、対局者の記者会見が行われました。

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【専務理事 島朗九段】
「みなさんこんばんは。リコーさんの、この女流王座戦、今日挑戦者決定戦が行われまして、本当に実績のある甲斐さんを、新鋭の伊藤さんが見事に撃破されて、挑戦権をつかまれました。女流棋界は非常に各世代、争いが激化しておりますけれども、男性棋界と同様に若い方が――チャンピオンも若いですけど、伊藤さんも伸び盛りということで、奨励会でも何度も対戦している間柄でもありますし、手の内を知り尽くした戦いになると思いますけれども、加藤さんにとっては、いずれは戦わなければいけない相手が出て来たなと思います。伊藤さんはやはり、非常に実力がありながら、なかなかタイトル戦に出る機会が――実際にそれを実現することは大変なことで、今日そのチャンスをつかまれたことは、本当に素晴らしいことだと思います。特に今回、こういう言い方が正しいかどうかわかりませんが、トーナメントで里見さん(里見香奈女流名人・女流王位)という凄く大きな山、壁を、伊藤さん乗り越えてきたので、そういう意味ではですね、本当の挑戦するのにふさわしい、強敵を続々と破ってきたということもありまして、加藤さんもですね、最強の挑戦者を迎えたなと。今期の女流王座戦に限らず、この二人の戦いはこれから必ずずっと続いていくことだと思いますので、その第一幕がこの大舞台で展開されるのだと思います。加藤さんも本当に風格が出てきましたので、若い二人なんですけど、若くて勢いがあって、なお非常に風格のある番勝負になるのではないかと期待しております」

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【伊藤沙恵女流二段】
「まず、今期の女流王座戦は結構苦しい対局が多くて、精神的にもつらい部分があったのですが。里見さんと指して――以前、リコー杯で里見さんと指したことがあったので、まさか勝てるとは思っていなかったのですが、全力で指さなければいけないと思って、それがいい結果につながったのかなと。私の将棋は、ちょっと変わっていると思うんですね。今期の女流王座戦は玉が上部、相手陣に行くようなことが多くて、苦しい状況の中にあって、そこを勝ち切れてここまでこれたなと思います。五番勝負は、加藤さんということで、奨励会でも何度も対戦してきたのですが、私が女流棋士になったことで、こういう場でしか指すことができなくなってしまったのは残念に思っているのですが、このような形で、また加藤さんと指すことができて、嬉しく思っています。本当に手の内を知られてしまっている相手なので、そうですね、私もこのままじゃいけないなと思っています。精一杯、熱戦になるように頑張りたいと思います」

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【加藤桃子女流王座】
「まず、伊藤さんへの印象ですが、伊藤さんとは小学生の頃からとてもお世話になっていて、奨励会でもたくさん対戦してきた中で、お互いに、将棋もですし、性格もいろんなことがわかっている仲なんですけど、そういう方を挑戦者に迎えるということは初めてなので、どう振る舞っていいのかなということはありますけれども、ただ五番勝負ではやっぱり勝負師として戦うべきなので、ひたすらやるしかないかなと思っております」

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【質疑応答】
――伊藤さん、終局直後の談話の際に、ちょっと涙ぐまれたと思うのですが、あの涙はどういった思いがあったのでしょうか。
伊藤「まさか自分がこの場に立てるとは思っていなかったので、それを質問されたりとかして、挑戦したんだなということや、いろいろいままでの対局のことが込み上げてきてしまいました」

――加藤さん、(伊藤さんとは)奨励会時代たくさん指されていたと思うのですが、当時の戦績はいかがでしたか。
加藤「うーんと、たぶんですけど、五分といいたいのですが、私のほうが負け越していたような気がします」
伊藤「すみません、私は(自分が)負け越していると思うので、ちょっとびっくりしたのですが。あの、1級ぐらいで結構、桃子ちゃんとは、結構当たりましたよね? そのときに、結構負けた記憶しかない……。それで初段に上がられてからは、対戦がなくなったので、負け越しているかと思います(笑)」

――いまの続きですが、(お二人は)ざっと何局ぐらい対戦されているのですか。
加藤「たぶん……20局は指してますよね。30指してるかな? 20から30ぐらいだと思います」

――伊藤さんは、加藤さん同様にプロ棋士を目指していて、23歳という年齢で女流棋士になられたわけですが、その辺で女流としての決意のようなものはあったのでしょうか。
伊藤「そうですね、女流棋士になったからには、いつかタイトルに挑戦できたらいいなとは思っていたのですが、まさかこんなに早くできるとは自分でも思っていなかったので、自分でも驚いています。女流棋士になったひとつの理由として、やっぱりたくさん勝つと男性棋戦にも参加することができるので、そういう目標も持って女流棋士になりました」

――伊藤さん、小学生名人戦で、佐々木勇気君とかと同時期に指されていて、彼はいまプロで活躍していますが、そのへんはどういうふうに感じていますか。
「そうですね、小学生のときは、本当に佐々木君とはたくさん指していて、勝ったり負けたりだったんですが、いまはだいぶ差をつけられてしまいましたね。少しでも、プロに近づけたらなと思っています」

Img_1495最後に花束贈呈と記念撮影が行われて記者会見が終了した。

【五番勝負日程】

加藤桃子女流王座に伊藤沙恵女流二段が挑戦する、第5期リコー杯女流王座戦五番勝負は以下の日程で行われます。

第1局 10月22日(木) 宮城県仙台市「ホテルメトロポリタン」
第2局 11月7日(土) 静岡県静岡市「浮月楼」
第3局 11月28日(土) 大阪府大阪市「芝苑」
第4局 12月11日(金) 東京都渋谷区「東京・将棋会館」
第5局 12月25日(金) 東京都渋谷区「東京・将棋会館」

以上で本日の中継を終了いたします。
ご観戦誠にありがとうございました。

Img_1205終局直後の様子。

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伊藤女流初段はタイトル初挑戦。同時に規定により女流二段に昇段した。

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敗れた甲斐倉敷藤花。

終局直後に両者のインタビューが行われました。

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【伊藤沙恵新女流二段の談話】
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
「甲斐さんのほうの玉が凄く堅いので、攻め合いの将棋じゃないのかなと思ってはいたのですが……。ただ▲1五歩△3三玉(76手目)でどうされるのかちょっとわからなかったので、難しいのかなと。飛車が取れて(88手目)ちょっと良くなったかなと思っていました」

―― これでタイトル戦初挑戦ということになりましたが、それについて一言お願いします。
「なにかちょっと信じられないですけど……(少し涙ぐんで)……嬉しいです」

【甲斐智美倉敷藤花の談話】
―― 今日の将棋、全体的に振り返っていただいて一言お願いいたします。
「▲2五歩(53手目)から仕掛けていったのですけど、攻めが細くて終始ちょっと自信がないような将棋でした。もうちょっと、仕掛け方とか、工夫できるところがあったと思うのですが、強く入玉を目指されて、どうしても防ぐ手段が見つからなかったです」

Img_119716時過ぎ、控室には加藤桃子女流王座が来訪している。今日は、本局の勝者とともに五番勝負に向けた記者会見に出席する予定だ。

88図は16時15分頃の局面。先手は後手玉を押し返すことに成功していますが、その代償に飛車を取られています。ここまでの消費時間は▲甲斐2時間38分、△伊藤2時間3分。
控室の評判は後手良し。入玉は断念しても後手玉は寄りづらく、次に△6九成桂から一転して攻め勝つ見込みが立ってきたとのこと。先手は入玉を阻止するための代償が大き過ぎたようです。

80図は15時30分頃の局面。消費時間は▲甲斐1時間57分、△伊藤1時間51分。
検討陣は「この段階で後手の狙いが入玉のみというは珍しい展開で、あまり指したことがないから感覚が難しい」と言ってます。

Img_1195控室は、仕事の途中に立ち寄った棋士もいて賑わっている。現局面については、様々な意見が出されて侃々諤々の議論がなされている。

鈴木八段「私はもう入玉を止められる気がしない。先手を持ったら自信がないんですけど」
森下九段「普通は先手がいいと思いたいんですけど、確かにここまで来てしまうとちょっと自信が……」
藤井九段「いやもう、後手陣の駒を全部取って、先手も入玉して相入玉で勝つんだよ。……さすがに、それは苦しいか」
佐藤(康)九段「あ、これ後手がいいんですか。そうですか、なるほど……」
先崎九段「▲1四歩(77手目)取り込んだのが甘かったんじゃないかなあ」
藤井九段「仕掛けるときに▲5五歩と▲1五歩も突き捨てておきくべきだったでしょう」

結論は簡単にはでないようですが、好調に攻めていた先手の行く先に暗雲が垂れ込めてきたのは間違いないようです。

76図は14時45分頃の局面。後手の押さえ込みに対して、甲斐倉敷藤花は桂を取らせている間に角をさばいて攻めのきっかけをつかみました。自玉は手つかずのまま、一方的に攻められる好調な展開に持ち込んでいます。
しかし、いま指された△3三玉は、狙いを入玉一本に絞った油断のならない勝負手です。検討陣からも「△3三玉はなかなかの手。意外に難しい」の声があがっています。

「先手は▲1五歩をもう少し早いタイミングで突き捨てたかった気がします。本譜はタイミングが遅れたことで手を抜かれてしまいました。この影響で、現局面は後手の入玉を止めるのが意外に大変になっている感じがします」(鈴木大介八段)

Imgp3475桂損の攻めに出た甲斐倉敷藤花。入玉を止めて寄せることができるか。

Img_118614時過ぎ、控室に井道千尋女流初段が来訪。山口(恵)女流初段を継ぎ盤を挟む。

Img_118914時20分頃、矢倉の専門家として知られている森下卓九段(右奥)、と鈴木大介八段(左奥)が来訪。局面を少し戻して、過去に実戦例のある進行と本譜を比較している。

Img_118313時半頃、控室に山口恵梨子女流初段が来訪した。

Img_1184山口(恵)女流初段から差し入れがあった。

72図は13時55分頃の局面。後手の押さえ込みに対して、先手は中央から動きを見せています。山口(恵)女流初段は「自分なら、攻めの棋風なので先手を持ってみたいです」とのことだ。