両者は過去に1度だけ対戦があり、それが第3期(2013年)女流王座戦。本局と同じ本戦トーナメントの準決勝で顔を合わせました。当時の伊藤女流初段は、女流棋士ではなく奨励会員としての参加で、一次予選からの勝ち上がりです。
対局は里見女流四冠(当時)の先手で相振り飛車(三間飛車対向かい飛車)になりました。石田流本組から角の転回で間合いを計った里見四冠でしたが、手損が響いて伊藤奨励会員がペースをつかみます。
第1図は5七の角を▲6八角と引いた局面。ここで△2六歩▲同歩△4五桂が機敏な仕掛けで、以下▲2七銀△7四歩▲5六飛△4四角▲3五角△同歩と進み、駒得の後手がリードしました。
しかし里見女流四冠も粘り強い指し回しで決め手を与えず迎えた第2図。ここで△5八歩成も有力でしたが、伊藤奨励会員は△5二金と引き、あえて▲6一銀を打たせる順を選びます。以下△6七馬▲5二飛成△同飛▲同銀不成△5八歩成▲同金△同馬▲6三銀成(△同金なら▲5二飛)と進み、激しい寄せ合いに突入しました。
勝負を分けたのは第3図。ここで伊藤奨励会員は△5九飛と打ちましたが、代えて△5七飛と上から打つ手が勝ったようです。本譜は△5九飛に▲5三飛が、角取りを受けながら▲7三飛成を狙った攻防手。この手を境に流れが変わり、最後は里見四冠が熱戦を制しました。
【第3期リコー杯女流王座戦本戦トーナメント▲里見香奈女流四冠-△伊藤沙恵奨励会1級】
http://live.shogi.or.jp/joryu_ouza/kifu/3/joryu_ouza201308140101.html