図は▲4八金上と金を逃げた局面。里見女流四冠は5三金を取らずに我慢し、馬の利きから金を逃がしました。そこで伊藤1級は△5二金。
棋士室では意外と言われました。△5八歩成から飛車を押さえ込むほうが自然で、▲6一銀の受け方がわからないからです。実戦は▲6一銀△6七馬と進んでいます。
▲6一銀を打たせ、局面を急な流れにするのが伊藤1級の狙いでした。△6七馬は攻め合いを志向した手で、▲5二飛成△同飛▲同銀不成△5八歩成で勝とうとしています。一直線の攻め合いになれば銀冠の違い(端歩が入っている後手の方が堅い)が生きると判断したのでしょう。
手厚く受けることができる局面で、この踏み込み。伊藤1級はかなりの成算があって臨んでいると思われます。