2011年11月19日 (土)

前夜祭挨拶(3)

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(両対局者が退場したあとの棋士インタビュー。司会は村田智穂女流二段)

【久保利明棋王・王将】
秘策があるということで、びっくりしました。僕も1度言ってみたいですね。創意工夫があるのはいいことと思うので楽しみです。加藤さんは奨励会でももまれているし、一直線ではなくて時には将棋の中で駆け引きができる。いい将棋を指すという印象です。(加藤1級の挨拶を聞いて)何が飛び出すかわからなくなりましたので、楽しみになりました。リコー杯女流王座戦は女性なら誰でも1番を目指せるということが素晴らしいし、これから将棋を始める人にも目標になると思う。今後、皆さんで強くなっていけばさらに盛り上がる棋戦です。

【谷川浩司九段】
第1局は清水さんの先手で相掛かり。途中まで手順が一緒の公式戦があり、清水さんも加藤さんもよく研究しているなと思いました。第2局は加藤さんの先手で横歩取り。第1局は直線的な将棋で、第2局はどちらかというと曲線的な将棋でした。1勝1敗で、内容もいい勝負だったと思います。第3局の予想をしたところで加藤さんのひとことには勝てないですね。対局開始から30分くらいをまず注目したい。
 加藤さんは先ほども控え室に棋士が入ってくるたびにきちんと挨拶をしていて、礼儀正しいです。奨励会1級という立場で、普段は記録係をして対局者にお茶を入れる立場なので当然のことなのですが、きちんとしている印象です。9月21日の対局のときは私も東京にいました。清水さんと中村真梨花さん(女流二段)の対局は双方1分将棋で延々と続き、どちらが勝つか最後までわかりませんでした。記者会見予定時刻ぎりぎりまで対局が続いていたその一戦が、今期リコー杯女流王座戦を象徴していたのかなと思います。

【山崎隆之七段】
加藤さんも清水さんも居飛車党なのでまず相居飛車かと思ったんですが……、衝撃の一言が出ましたね。秘策があると。加藤さんがよく教わっている棋士に永瀬さん(拓矢四段)という人がいます。彼が振り飛車党なので振り飛車もあるかもしれません。秘策があると言われると、戦型予想もにわかに混乱してきました。言われたらやっぱり考えてしまいます。清水さんは悩む羽目になったかもしれませんね。僕なら眠れません。激しく攻め合って魅力ある将棋なので、皆さんに注目していただければと思います。

【室谷由紀女流初段】
この五番勝負は振り飛車党の私が見ていても勉強になることが多いです。清水さんは女流棋界で長年にわたって活躍していて、今期も勝率8割を超えていて好調です。加藤さんは16歳でとても勢いがあるように思います。この第3局で勝ったほうが第4局、第5局はとても指しやすくなると思います。気合が入っているんじゃないでしょうか。

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【有吉道夫九段】(閉会のあいさつ)
先ほどから加藤桃子さんが奨励会1級であると紹介されています。この奨励会とは少年少女たち叩き合いの世界で、『奨励』と気軽に入れるような名前ですが、びっくりするのが当たり前の世界なんですね。びっくりして辞めてしまう子もいれば、我慢して修行を続ける子もいます。加藤さんは16歳で1級。私の16歳の頃は3級で、2級に上がれずに大変苦しい思いをしていた時期です。天才と言う人もいるかもしれません。
清水さんは女流棋界では羽生さんのような実績を作り上げてきました。私は女流棋士とコンピュータとどちらが早く強くなるのかなと思っていましたが、どちらもスピードがあってどんどん強くなっています。将棋の世界を離れても注目される戦いです。秘策もあるということですし、女流棋士の充実ぶりと奨励会の実力にご注目ください。

(翔)