昼食休憩
山崎八段の構想を探る
22手目から33手目まで
△6二銀▲8八玉△3二金▲9八香△5四歩▲9九玉
△4一飛▲8八銀△4二角▲6六歩△7四歩▲6七金
22手目△6二銀が珍しい手でした。山崎八段の構想が注目されます。控室では図から△9一飛を実現させる順を検討していますがどうなるでしょうか。後手は4二角の利きを止めたくありません。したがって△6四歩から△6三銀のような駒組みは選びづらいです。▲5九角から▲3七角(間接的に角で9一をにらむ)にも注意したいところです。
ほかには△7一金でエルモ囲い風に指す構想もあるかもしれませんが、△4一飛と引いた手との関連が薄いという意見もあります。
戦型は後手四間飛車
初手から21手目まで
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△3二銀
▲6八玉△9四歩▲5八金右△3三角▲2五歩△9五歩
▲3六歩△4二飛▲5六歩△6二玉▲7八玉△7二玉
▲5七銀△4三銀▲7七角
戦型は先手居飛車、後手四間飛車の対抗形になりました。最近の山崎八段は、2手目△3四歩、4手目△4四歩、6手目△9四歩の出だしをよく指しています。居飛車と振り飛車のどちらも天秤にかける指し方ですが、結果的に四間飛車になったのは意外でした。振り飛車自体は最近も指していますが、角道を止めたノーマルな四間飛車を指すのは四段時代以来のようです。
山崎八段が振り飛車にした理由について、観戦記を担当する上村亘五段は(1)△9五歩と端を突き越せたこと、(2)▲3六歩を先手が選んだことの2点を挙げます。
「通常の振り飛車の出だしだと△9四歩に▲9六歩と受けられることが多いです。本局は端の突き越しが振り飛車の主張です。また、▲3六歩は居飛車穴熊にする場合は不急の一手です。それで山崎八段は振り飛車にしたのではないでしょうか。一方、居飛車側の視点からすると、最近は▲3六歩を突いてから穴熊に組んでも大丈夫という認識があります。広瀬八段としては、居飛車党の山崎八段の飛車を振らせたという考え方もできます」(上村五段)
過去の挑決三番勝負
挑戦者決定トーナメントが現在の形になったのは第19期からです。前期までの挑戦者決定三番勝負の結果をまとめました。(1優)は1組優勝、(13)は1組3位、(22)は2組2位を示しています。○や●は左側の棋士からみた勝敗です。
第19期 丸山忠久九段(1優)●● 佐藤康光棋聖(13)
第20期 木村一基八段(1優)●○● 佐藤康光二冠(12)
第21期 羽生善治名人(15)○●○ 木村一基八段(12)
第22期 深浦康市王位(1優)○●● 森内俊之名人(2優)
第23期 久保利明二冠(14)●● 羽生善治名人(13)
第24期 丸山忠久九段(1優)●○○ 久保利明二冠(12)
第25期 丸山忠久九段(14)○●○ 山崎隆之七段(12)
第26期 郷田真隆九段(14)○●● 森内俊之名人(12)
第27期 羽生善治名人(1優)●○● 糸谷哲郎六段(3優)
第28期 永瀬拓矢六段(4優)●○● 渡辺 明棋王(22)
第29期 丸山忠久九段(1優)○●● 三浦弘行九段(13)
第30期 松尾 歩八段(1優)●○● 羽生善治三冠(12)
第31期 広瀬章人八段(1優)●○○ 深浦康市九段(22)
第32期 豊島将之名人(14)○●○ 木村一基九段(13)
第33期 羽生善治九段(1優)●○○ 丸山忠久九段(22)
第34期 永瀬拓矢王座(1優)●● 藤井聡太二冠(2優)
今回の山崎八段と同じ1組4位の挑決は過去に4回あり、挑戦権獲得は2回。広瀬八段と同じ2組優勝は2回あり、挑戦権獲得は2回です。
過去16期のうち、トーナメントの左山を勝ち抜いた棋士(上記リストの左側)の挑戦権獲得は6回で38%。第1局に勝った棋士の挑戦権獲得は10回で63%。初戦から連勝は3回で19%。フルセットが多いのも挑決三番勝負の特徴です。(記事内の段位や肩書は当時)