2008年10月19日 (日)

 パリには、古い街並みを保持しなくてはならないという条例があるらしい。市内の建物の味わい深さはこういったことで、守られているのだ。しかし、そうとは言え、新しさも混在するのが、パリである。その新旧の織り交ぜこそ、創造力豊かなエネルギーを生み出し、古くから欧州の中心都市の一つとして、歴史を牽引し、彩ってきたわけだ。

 凱旋門は、ナポレオンの命によって、1806年に礎石が置かれ、今や、パリの代名詞ともいえる建造物である。そこには、フランスのために、命を捧げた数多く戦士の名が刻まれ、フランスの歴史でもある。

 一方で、新凱旋門グランド・アルシュは、1990年に完成した。ラ・デファンス地区は、超高層ビルなどが立ち並び、新しいパリの象徴とも言え、その様相は、旧地区とは全く異なる。14dsc_0255_2 15dsc_0255

13dsc_0255  四段中村太地。棋士番号261、東京都出身、米長邦雄門下。1988年6月1日生まれのふたご座。今回のパリ対局で記録係りを担当している。私も、なかなか彼とは、接する機会がなかったが、今回の長旅で好青年ぶりを、とても強く感じることができた。人気が出て不思議でない。

 昨日、佐藤康光棋王にお願いした、昼食休憩時点での「5級向け解説」と「初段向け解説」と「五段向け解説」が好評だったので、指導対局に出かけている佐藤棋王に代わって、今日は米長邦雄会長に、二日目昼食時点での「5級向け解説」と「初段向け解説」と「五段向け解説」をお願いすることにした。

 

「5級向け」

 現在の形勢は、渡辺竜王のほうが玉が堅くて、羽生名人のほうの玉がやや危ない状態。そこで△6四角と打って徹底的に守ろうとしたのが、羽生名人の強いところです。
 これによって5三の地点が堅くなったので、渡辺竜王は▲7五歩から攻めの方向を変えました。
 難しい形勢です。 

 

「初段向け」

 渡辺竜王が攻めて、羽生名人が受けている局面です。4枚の攻めなら指しきらない。3枚の攻めだと攻め切れません。龍と金の2枚で攻めている。持ち駒には桂馬がある。もう一枚、駒がほしい。

 そのためにですね、▲7五歩と突く手では、▲4五銀△同歩▲同桂、と桂馬を参加させる手も考えられた。

 また、単に▲4五桂と跳ねて、△同歩と取らせて▲4四歩とたらして、「と金製造株式会社」社長として、4枚の攻めを完成させることもできた。

 ▲4五桂打△同歩▲同桂として、やはり銀を取って4枚の攻めにしようということも考えられた。

 しかしいずれもうまくいきそうにないので、▲7五歩は、将来、7四歩という拠点を作ることによって、4枚の攻めを実現させるという手です。

 もうひとつ、先手は▲4六銀と▲3七桂の2枚を「自分で動かす」ことによって活用するか、それとも▲7五歩と突いて、手を渡して、銀と桂を「取らせる」ことによって活用するか。

 この局面はですね、羽生名人は、放置しておいてもたいしたことはない。ないんですが、次に▲7四歩と取り込まれ、△同馬ということになると、4六銀と3七桂を取ることができないという仕組みになっているわけです。

 

「五段向け」

 この将棋は戦いの焦点が5三の地点をめぐる攻防だったが、この局面から、今度は一転して7筋の勢力争いになってきた。7筋を制するものがこの将棋を制する。7筋をどちらが制するか。これによって優劣が定まるであろう。

 次の展開の一例をあげると、△4六馬が自然な手で、その後、お互いに7五の地点あたりをめぐっての勢力争いとなろう。そのあとは、▲7四歩△同銀▲6六桂がある。そこで、△4六馬ではなく、一発△6七歩とたたく手がある。▲同金直には、再度△6六歩と打つ。相手の▲6六桂の狙いを消すとともに、攻め合いで勝とうともしている。たとえば、これを▲6六同銀なら、△8六歩▲同歩△6九馬▲6八金引△同馬▲同金△8七歩でたちまちのうちに、後手勝勢となる。

 現時点は羽生持ちという気がします。


 

 ▲7五歩の局面で昼食休憩に入った。

 記録係の中村太地四段が、控え室に戻ってきた。

 彼は、控え室の検討情報からは遮断された対局室で、ひとり対局者とともに読み続けていた。

 そこで控え室に戻ってきた瞬間に、彼に話してもらうことにした。

 黒子役の記録係に、対局途中の感想を尋ねるのは無理筋なのだが、中村四段は米長会長のお弟子さんであり、ブログ公開を前提に、以下のようなやり取りの中で、中村四段は現在の形勢判断についてこう語った。

 米長「記録係の中村太地は、ここまで先輩たちの指し手に対し沈黙を貫いていたが、師匠の米長邦雄会長がどうしても喋れと言うので、師匠の命を受けて従わざるをえなかった。というわけで、形勢と、自分ならどっちを持ちたいかを喋りなさい」

 中村「僕、今、羽生先生のほうを持ちたいですけどね。理由ですか? うーん……。△6四角がいい手だと思ったので。(予想していたかという問いに) 候補手の一つとしては予想していたのですが、△6四銀とあがるほうが一般的かと思っていたもので。でも、その後、竜王は88分くらい考えていましたからね。竜王は△6四角を軽視していたのではないかと思います。」

 米長「では次は、ここからの、中村太地の次の一手を!」

 中村「自然なのは△4六馬ですけど。それか△6七歩を打つのか、△8六歩とつきすてるのか、その3つですかね、おそらく。」

 中村「あと、竜王の▲2三角が意外でした。▲3五歩とつくのかなと思っていました。」

 米長「いいじゃないですか!『中村太地は近い将来、必ずタイトル戦に出るであろう。師匠の米長は確信した』と書いておいてください。麗しい師弟愛だね~」

 

 

 追記。午後再開後の一手は、△6七歩でした。▲同金直に△8六歩という、中村四段の指摘通りに推移しました。

 

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対局前日の駒選び、対局場検分の日に。