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2013年7月19日 (金)

45_2▲金井五段-△永瀬六段戦は、お互い一歩も引かぬ攻め合いになり、一気に終盤戦へ突入しました。

【図】は現在の局面。△7三同銀▲7二飛の打ち込みは△5二金打で後手が受かっているという意見も出ていましたが、別の棋士から「それは▲5四桂が大変だろう」との指摘。

△7三同銀と取れないようでは後手が厳しいかとも思われましたが、今現在中継室を訪れている棋士の検討では△8七飛と打って次に△6七とからの寄せを狙う手が相当に早いのではと話されています。

関六段「これはちょっと先手がイヤなんじゃないかなぁ。△7八歩で勝てれば話は早そうですね。そうか△8七飛もあるのか」

△8七飛と打たれると、先手玉は挟み撃ちの状態になる。▲2七銀と歩を取って状況を改善しようとしても、△6七とが厳しいので状況の根本的解決は望めないようだ。

Photo_4(金井五段と永瀬六段、読み勝っているのはどちらなのだろうか?)

39再開から▲3三飛成△同桂▲8七金と進んだのが、上の【図】の局面。

予想されていたのは、(A)△3六飛▲7四歩△7六歩▲7三歩成。これは△同銀なら取られそうな桂を手順に▲6五桂と逃げながら攻めることが出来るので先手好調か。(B)△7五飛▲同角△同歩。この攻め合いは、先手が先に▲7四歩と攻められるので有利かと見られていた。

しかし、永瀬六段の選択は予想されていなかった△7五歩。飛車を逃げない勝負手に、中継室を訪れている関六段も「第3の手、意外でしたね」と驚きを隠せない様子だった。

(A)△3六飛や(B)△7五飛とは違い、(C)△7五歩は▲7六金△同歩▲7四歩と一直線の攻め合いになった時に△7七歩成と攻めを先着できるのが利点だろうか。確かに、これは先手も楽な勝負ではない。

△7七歩成以下、▲7三歩成△同銀に▲7二飛と打ち込んで優勢ならば先手も話が早いのだが、△5二金打と受けられて後続手が難しい。

Photo_3(勝負に出た永瀬六段)

15(朝の羽生三冠)

63再開後、端から仕掛けていった羽生三冠ですが、後手に立て直す猶予を与えずに続けて▲2四歩と踏みこみました。

しかし、この手は関六段が「△同歩▲同角に△2二香のカウンターがあるので、やりにくいのでは」と話していた攻め。△2二香には▲4二角成と切って、△同玉▲2二香成△同金の瞬間に先手に決め手があるということなのでしょうか?

Photo_2関六段「もしかして、▲5五香から一気に寄ったりするするのかなぁ。一例だと、▲5五香△同銀直▲同銀△同銀▲5一銀。本当に寄っているかは分かりませんけど、一見はこの順が筋ですよね」

Dsc_0434(扇子を片手に熟考する関六段)

両対局が長考に入ったところで、この空いた時間を使って対局者の視点で東京・将棋会館の入口から対局室までの道を紹介してみたい。

Dsc_0299_3
(東京・将棋会館エントランス。棋士も、一般の方と同じく正面玄関から入って対局室のある4階に向かう)

Dsc_0405(対局室のある4階エレベーターホール。エレベーターを降りて右側が、対局室のあるフロアだ)

Dsc_0406(対局室があるフロアの入口。正面ホワイトボードには、組み合わせが表示されている)

Dsc_0408(本局が行われている特別対局室は、入口から見て右奥側にある)

Dsc_0411_2(対局室通路。一番奥が特別対局室だ)

Dsc_0413(特別対局室の入口。東京・将棋会館の対局室では、最上位の部屋だ)

Dsc_0415(対局室入口の札ひとつからも、歴史を感じることが出来る)

Dsc_0404(特別対局室の光景。本日は、入口側で▲金井五段-△永瀬六段戦、奥側で▲羽生三冠-△森内名人戦が行われている)

Dsc_0437_3(永瀬六段は対局再開後、少し間を置いて集中を高めてから……)

Dsc_0439(△8七歩と着手した)

Dsc_0443_2(これを受けて、金井五段は腕組みのポーズ)

Dsc_0446(金井五段が腕組みをしたままジッと考えている中、横では羽生三冠が体をゆっくり前後に揺らしながら考えている。静と動、棋士によって考えるスタイルも様々だ)

36(再開後、15分程で△8七歩▲9七角△7六飛と進んだのが【図】の局面。後手は次に△7七角成▲同金△同飛成の突破を狙っているが、先手も▲3三飛成とバッサリ切って△同桂▲8七金と飛車を狙って動いていく筋がある)

Dsc_0448_2(金井五段の腕組みポーズに呼応するかのように、永瀬六段も)

Dsc_0441(13時の対局再開時、森内名人は朝の対局開始時とは違い上着を脱いでいた。また、再開前には横で行われている永瀬六段-金井五段戦の盤面に目をやっていた)

Dsc_0444_2(羽生三冠も、上着を脱いで戦闘モードといった様相)

Dsc_0445(羽生三冠は、再開から5分程時間を使ってから▲1八香と着手した)

45再開後、いったんは▲1八香と仕掛けずに待った羽生三冠ですが、森内名人が△1一玉と穴熊に潜ったところで▲4五歩と仕掛けました。 後手が後戻りできないような状態になってから仕掛けるというのが羽生三冠の工夫のようだ。

Photo▲羽生三冠-△森内名人戦戦は、お互いの駒組みが飽和状態を迎えたところで後手の森内名人が△1二香と穴熊を目指したのに対して、羽生三冠が25分考えて昼食休憩の時間になりました。

Dsc_0421(後手側から見た実際の盤面。多くの前例では、後手が穴熊に入ることを阻止するべく先手がここで仕掛けている。やはり、穴熊の堅さは簡単には許せない)

Dsc_0425(昼食の出前注文、羽生三冠は冷やし中華を注文した)

33【図】(33手目▲7五歩まで)の局面で永瀬六段が39分考え、昼食休憩の時間になりました。

Dsc_0430(本日、東京・将棋会館で行われる対局の立会人を務める関浩六段)

関六段「(現状の局面について)現状、先手の角は働いていないですが▲6五桂と跳ねれば一気に激しくなってきます。いや、どうなってるんだろうな……。とりあえず、午後は長考合戦になるでしょうね」

Dsc_0429(永瀬六段は、昼食の出前注文で親子重を注文)

10▲羽生善治三冠-△森内俊之名人戦は、角換わりに進みました。

お互い角を手持ちにする戦型、序盤は角の打ち込みや相手の速攻などを許さぬよう細心の注意を払いながら駒組みを進めていきます。

Dsc_0360(1組3位での本戦出場、羽生三冠)

Dsc_0376(1組2位での本戦出場、森内名人)

3811時頃の局面。先手は▲6六歩をギリギリまで保留したまま進めているのが工夫点でしょうか。先に進めていくうちに合流する可能性もありますが、既に前例のない局面になっています。

19振り飛車のイメージが強い永瀬六段ですが、最近は積極的に居飛車も採用しており、本局も4手目に△8四歩と居飛車を選択しました。

そこから本譜は横歩取りの戦型になり、金井五段は▲3六歩(19手目)と『青野流』と呼ばれる指し方を選択しています。その名前から想像できる通り、青野照市九段が得意にしていた手法で、▲3六飛と引くよりも攻撃を重視した意味合いがあります。

Dsc_0306(6組優勝で本戦出場を決めた金井五段。鋭い視線の先には……)

Dsc_0322(上座に座るのは、4組優勝で本戦出場を決めた永瀬六段。)