2010年8月の記事
驚愕の一手、△3六歩
21時前、控え室の様子をネット中継で知った野月浩貴七段が、彗星のごとく控え室に現れた。そしてほどなく、羽生名人による驚愕の一手が指される。
21時すぎのこと。4九の角が取られそうな状況で、羽生名人は△3六歩と突き出した。この手が指された瞬間、控え室の棋士から悲鳴があがる。「こんな手があるの?」「ええっ、どういうこと?」この手は▲4九金によちよち△3七歩成と成ろうということだが、△3七歩成自体は久保二冠の玉への詰めろではない。つまり、その瞬間に詰めろをかけられたら、羽生名人は非常に簡単な「一手負け」の図式に当てはまるわけだ。「野月くん、一番いいタイミングで来たね」と勝又六段。
早速バタバタと検討が行われるが、▲4九金△3七歩成の局面でなかなか後手玉に詰めろがかけられない。「なんで?」「寄らない」とほうぼうで驚きの声が上がる。「これは久保さんも読んでないだろうね。残り時間少なくなった中で全く読んでない手が飛んできたらつらいよ。久保さんしびれたんじゃないかな」と勝又六段。「おかしいでしょ、こんな終盤で手を渡すなんて」。
控え室の熱気が上がっている。
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20時30分頃の対局室
検討が進む。やや居飛車が指せそうか
「よくわからない」局面、難所を迎える
「居飛車がそんなによさそうには見えないんですが」
夕食休憩時の特別対局室
夕食休憩に入る。再開は19時より
「どう進んだのか全然わからなくて」
17時40分頃、控え室を高野秀行五段が訪れた。「下の道場にモニタがあって今の盤面はわかるんだけど、昼食休憩からどう進んだのか全然わからなくて」と、パソコンで手順を確認。「これは△2四歩突くよねえ。突いたらどうするんだろ?」と考えているところへ、モニタに△2四歩を着手する羽生の手が映る。「やっぱり突きますよねえ。で……うーん。やっぱり居飛車がいいですよねえ」。
ひと通り継ぎ盤で検討した後、高野五段が口を開く。「そういえばさっき羽生さんがコーヒーを買いに下(2階)に来てて、道場のお客さんがどよめいてましたよ。小さな子なんかサインをお願いしてて。羽生さんは『対局中だからごめんね』って言ってましたけど(笑)」
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