終局直後
終局直後にインタビューがありました。
【杉本和陽六段がタイトル初挑戦 声震わせ「くさらず良かった」】
https://www.youtube.com/watch?v=po2_AzDk_BU
(杉本和陽五段は初のタイトル挑戦。規定により六段昇段)
――本局を振り返って。
杉本 準備してきた形にはなったんですけど、昼食休憩の局面で想定から外れてしまって、思わしい順があまり見えなかったので、作戦がどうだったかという感じはしていました。
――夕方くらいまで苦しい状況が続いていたか。
杉本 はい、苦しい展開だと思いました。
――どこで好転したか。
杉本 ▲3三桂(103手目)と打ったあたりで少し楽しみが出てきたのかなと思いました。
――抜け出したと思った局面は。
杉本 最後の詰みが見えたあたりです。
――初めてのタイトル戦となる。
杉本 棋士になったときは、自分がタイトル戦に出るのは想像しがたい部分もあったんですけど、腐らずやってきてよかったと思います。
――五番勝負では藤井聡太棋聖に挑む。
杉本 人生でもなかなかない機会だと思うので、できることはすべてやって臨みたいと思います。
――タイトル挑戦で六段に昇段した。
杉本 段位をひとつ上げるのも大変だったので、そこは素直にうれしく思います。
(永瀬九段はあと一歩で挑戦権を逃した)
――本局を振り返って。
永瀬 ▲2八銀打(87手目)の局面は、さすがによくなったと思いました。
――夕方くらいまで、かなりよかったか。
永瀬 よかったですけど、うーん。何といいますか、盤上だけでいうと、もう少し形勢がよくなったという決断をすべきだった気がします。
――どこで形勢が難しくなってきたと感じたか。
永瀬 ▲5七歩(99手目)をうっかりしてしまって、急に粘る感じになってしまいました。対局が多いとうっかりしやすんですけど、それが出てしまったのは残念でした。
――棋聖挑戦は惜しくもならなかった。
永瀬 本局は残念でしたけど、ベストは尽くせたのかなと思います。





杉本和五段が永瀬九段に勝ちました。終局時刻は20時2分。消費時間は、▲杉本3時間50分、△永瀬3時間59分。杉本五段は自身初のタイトル挑戦とともに、六段昇段を果たしました。藤井聡太棋聖との五番勝負は、6月3日(火)に栃木県日光市「日光金谷ホテル」で開幕します。
手数は150手を超え、いよいよ1筋の攻防に入りました。最終盤に突入です。
一度は消えた先手の二枚飛車がここにきて復活。後手は自玉周りに駒を打ちつけて耐えようとしています。川上七段も容易に形勢判断を下せない熱戦が続いています。
図の局面は先手が後手玉に食いつき、逆転しています。しかも残り時間は▲27分、△4分でかなりの差があります。仕掛けで銀損になって以降、ここ数手で初めて先手よしの評判になりました。杉本五段にとって棋士人生で最大の勝負は、ドラマチックな展開を見せています。途中の粘りの姿勢が功を奏しました。ただ、永瀬九段の粘り強さも棋界随一です。再逆転はあるのか。白熱した戦いです。
後手は図から△6六角と打ちました。それ以前にも△3六桂や△5九飛を決め、明らかに寄せに出ています。しかし、△6六角に▲5七歩△同飛成▲3四歩△5二竜と一転、受けに転じました。▲5七歩に△同角成ではなく△同飛成としたのは、▲5四角を消したり、△5一歩を残すためだと思われますが、攻めていた流れを考えると先手変調です。
102手目の局面。残り時間は▲杉本40分、△永瀬8分です。
72手目▲4二角成以下の攻めを受け止められた杉本五段。最後まであきらめずに粘りに出ています。後手には△5一歩の保険がありますが、穴熊自体は崩壊しているので、絶対に安全な玉とはいえません。正確な指し回しが求められます。