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2025年6月 2日 (月)

前夜祭(2)

両対局者は明日に向けて抱負を語りました。

20250602a7302460(藤井聡棋聖)

「今期の棋聖戦は杉本六段とのシリーズになりまして、私にとってとても新鮮な五番勝負になるのかなと思っています。一手一手を大切に指せていけたらと思っています。
さて、今日は東武特急「スペーシアX」に乗って、こちらにやって参りました。今回は特別に先頭車両の「コックピットラウンジ」に乗車する機会をいただきまして、社内の雰囲気と前面展望をより一層楽しむことができたと感じています。前面展望を見ていますと、景色が少しずつ移り変わっていって、それを見ていると本当に飽きないなという感じがします。
明日の対局では盤上において、そういった一手ごとの景色の移り変わりというのも表現できるように全力を尽くしたいと思っています」

20250602a7302467(杉本和六段)

「前夜祭にたくさんの方にご来場いただきまして、とても嬉しく思うとともに、自分がタイトル戦に出ているんだなという実感を改めて感じているところでございます。
私は日光に来るのは初めてだったのですが、先ほど日光東照宮に参拝させていただいて、荘厳な雰囲気に圧倒されました。対局場の日光金谷ホテル様の素晴らしい建造物、歴史的な建造物の中で明日の対局を行えるということに、棋士冥利に尽きるなと改めて感じております。
私の師匠の米長は初タイトルが棋聖で、永世棋聖の称号を獲得するなど、棋聖戦は大変ゆかりのあるタイトルとなっています。今回も挑戦を決めた際に師匠の奥様に一応、挑戦の報告をしに行ったんですけれども、大変驚かれてしまいまして。その時に幸運にも和服をいただけることになりまして、明日の第1局はそれを着用して臨もうかなと思っています。
師匠は「さわやか流」と「泥沼」をあわせもった棋風といわれています。自分はかなり泥沼の部分を受け継いだような棋風になっているんですけれども、そういった自分の持ち味を発揮して、明日は皆様に熱戦をお見せできたらなと思っております」

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(書き起こし=紋蛇、写真=玉響)

前夜祭(1)

18時からは対局場の日光金谷ホテルで前夜祭が開催されました。

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20250602a7302403(司会は和田あき女流二段。明日は大盤解説会の聞き手を務める)

20250602a7302408(近藤哲司・産業経済新聞社代表取締役社長)

「杉本六段は対抗形を好む振り飛車党でありますが、実は藤井棋聖のこれまでのタイトル戦で振り飛車党の相手は少なかったと聞いております。そうした意味でも、ファンからの注目が非常に高い今期の棋聖戦、明日の第1局を心より楽しみにいたしております」

20250602a7302419(片上大輔・日本将棋連盟常務理事)

「杉本さんのように初めてのタイトル戦、あるいは初獲得が棋聖戦だったという棋士が非常に多い。また、昨年は山崎隆之九段が15年ぶりにタイトル戦に出るなど、様々なエポックがたくさんある棋戦です。藤井さん自身も初めて取ったタイトルでもあります。そういう意味でも、明日からの五番勝負は将棋界の歴史にひとつ刻まれるタイトル戦になるのかなと期待しています」

20250602a7302422(都筑豊・東武鉄道代表取締役社長)

「日光金谷ホテルでございますが、指定登録有形文化財となっておりますし、日本最古のクラシックリゾートホテルでもございます。これまで皇室をはじめ多くの著名人の方がご利用、ご宿泊をいただいております。是非、将棋ファンの皆様におかれましても、この建物自体が醸し出す雰囲気やストーリーなどを堪能していただければ幸いだと思っております」

(書き起こし=紋蛇、写真=玉響)

記者会見

17時からは記者会見が開かれました。

20250602a7302367_2 (杉本六段)

――4月の下旬に棋聖の挑戦権を獲得した。これまでの1ヶ月間をどのように過ごしてきたか。
初めの1、2週間は和服やスーツを作ったりとか、対局以外のことをこなす時間も多かったんですけれども、対局が近づくにつれて徐々に藤井棋聖の対策を立てる時間をかなり重視するような生活になっていきました。

――藤井棋聖はどんな対戦相手だと思うか。
棋譜を見ていても全くスキが見当たらないといいますか、最強の相手といいますか、そういった印象があります。自分がいかにその相手に対してバランスを崩さずに食らいついていけるかが、かなりポイントになるかなとは思っています。

――抱負について。
先ほど検分で藤井棋聖と盤を挟む瞬間がありまして、やはり画面越しではない直接の雰囲気というものを少し感じ取ることができました。徐々に自分としても戦う気持ちが高まってきたところであります。明日は自分の出せる力を精一杯出して、全力でぶつかりたいなと思っています。

――棋聖は、師匠の米長邦雄永世棋聖の初タイトル。どんな気持ちか。
師匠にとって棋聖戦はゆかりのあるタイトルです。明日は師匠の和服をいただいたものを着用する予定で、師匠のパワーを少しは感じられたらよいかなとは思っています。

――歴史的な建造物、金谷ホテルでの対局となる。印象はどうか。
金谷ホテルさんは挑戦が決まった瞬間から来られることをすごく楽しみにしておりました。実際に部屋にうかがうと、とても1人で泊まるのがもったいないぐらいの素晴らしい部屋でした。こうした歴史的な空間で将棋を指せるということは、すごく棋士冥利に尽きるなと感じる次第です。また、日光全体の街並みもすごく自然が豊かでした。最近、家でパソコンを触る時間が多くて、ちょっと疲れたところにいい気分転換ができたかなとは思います。

――振り飛車にファンの方々が期待している。藤井棋聖にとっても振り飛車党との対戦は非常に珍しい。自分の武器をどういう風に盤上に表現していくのか。
これが武器というのもなかなか難しいんですけども、うーん……。序盤の戦略であったり、終盤の粘り強さみたいなものは持ち味かなとは思っていて。そういった自分の持ち味みたいなものが発揮できる展開になれば面白いかなとは思っています。

20250602a7302378_2(藤井棋聖)

――先日まで名人戦七番勝負が行われていた。棋聖戦五番勝負を迎えるに当たってのコンディションはどうか。
比較的、日を置かずに迎えるということにはなりました。体調としても問題なく臨めそうだなと思っています。

――挑戦者の杉本和陽六段は、菅井竜也八段に続いて久しぶりの振り飛車党とのタイトル戦。振り飛車党との対戦、杉本六段の印象について。
振り飛車党とのタイトル戦はかなり久しぶりのことになります。杉本六段との対局も久しぶりで、新鮮なシリーズになるのかなと思っています。

――今期の五番勝負の抱負について。
対抗形の展開がメインになるかなと思っています。どういうふうに序盤戦、中盤戦が進んでいくかは、やってみないとわからないところもあると思うので、その中でしっかりと読みを入れてよい手を見つけられるように頑張っていきたいです。

――歴史的な建造物、金谷ホテルでの対局となる。印象はどうか。
非常に歴史のあるホテルということで、今回うかがうことを楽しみにしていました。雰囲気も素晴らしくて、対局に集中して臨めそうだなと感じています。

――棋聖戦の賞金額が上がったことについて。
驚きの気持ちもあったんですけども、本当にすごくありがたい、このことだと感じています。また、対局者としてより一層気持ちが引き締まるところもあるのかなと思っています。ただ、対局に臨む上では自然体が一番いいのかなと思っているので、明日からそういう気持ちで一生懸命頑張りたいなと思っています。

(書き起こし=紋蛇、写真=玉響)

対局検分

16時頃、対局室の検分が行われました。検分では使用する盤駒、室温や騒音などが対局を行うに当たって問題ないかを確認します。今回は照明がやや明るいとのことで、調整がなされました。

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20250602a7302293(藤井棋聖)

20250602a7302318(杉本六段)

20250602a7302296(玉将を置く杉本六段。互いに駒の感触を確かめた)

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(左から正立会人の藤井猛九段、副立会人の近藤正七段)

20250602a7302344(検分は滞りなく終了した)

20250602a7302349(本局の使用駒は日本将棋連盟所蔵の掬水作・水無瀬書の盛上駒)

(玉響) 

コーヒーブレイク(2)

Dsc_5019_2(吉田響三段が考えていたのは……『詰将棋パラダイス 2025年5月号』に掲載された、藤井猛九段の詰将棋。藤井猛九段に「解きましたか?」といわれたそうだ) 

※当初は「藤井棋聖にいわれた」としていましたが、藤井猛九段の誤りでした。お詫びし、訂正いたします。

Dsc_5027(談笑の声が響く中、黙々と考える)

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(「ぜひ、駒を動かしてください」と藤井猛九段。『詰将棋解答選手権・チャンピオン戦』を見ていると、棋士・女流棋士・奨励会員は問題図のまま考えるのが暗黙のルール。作者の言葉には、自信が感じられる)

(紋蛇)

コーヒーブレイク(1)

日光金谷ホテルに到着後、関係者は2階の「メインダイニングルーム」でコーヒーを片手に休憩しました。森に囲まれた景色を眺めながら穏やかな時間が流れ、世間話に花を咲かせました。

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Dsc_5026(杉本六段も参加した。藤井棋聖は自室でゆっくり過ごしたようだ)

(紋蛇)

日光金谷ホテルに到着

日光東照宮で祈祷を終えた両対局者は、対局場の「日光金谷ホテル」に向かいました。

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(玉響)

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