前夜祭(2)
両対局者は明日に向けて抱負を語りました。
「今期の棋聖戦は杉本六段とのシリーズになりまして、私にとってとても新鮮な五番勝負になるのかなと思っています。一手一手を大切に指せていけたらと思っています。
さて、今日は東武特急「スペーシアX」に乗って、こちらにやって参りました。今回は特別に先頭車両の「コックピットラウンジ」に乗車する機会をいただきまして、社内の雰囲気と前面展望をより一層楽しむことができたと感じています。前面展望を見ていますと、景色が少しずつ移り変わっていって、それを見ていると本当に飽きないなという感じがします。
明日の対局では盤上において、そういった一手ごとの景色の移り変わりというのも表現できるように全力を尽くしたいと思っています」
「前夜祭にたくさんの方にご来場いただきまして、とても嬉しく思うとともに、自分がタイトル戦に出ているんだなという実感を改めて感じているところでございます。
私は日光に来るのは初めてだったのですが、先ほど日光東照宮に参拝させていただいて、荘厳な雰囲気に圧倒されました。対局場の日光金谷ホテル様の素晴らしい建造物、歴史的な建造物の中で明日の対局を行えるということに、棋士冥利に尽きるなと改めて感じております。
私の師匠の米長は初タイトルが棋聖で、永世棋聖の称号を獲得するなど、棋聖戦は大変ゆかりのあるタイトルとなっています。今回も挑戦を決めた際に師匠の奥様に一応、挑戦の報告をしに行ったんですけれども、大変驚かれてしまいまして。その時に幸運にも和服をいただけることになりまして、明日の第1局はそれを着用して臨もうかなと思っています。
師匠は「さわやか流」と「泥沼」をあわせもった棋風といわれています。自分はかなり泥沼の部分を受け継いだような棋風になっているんですけれども、そういった自分の持ち味を発揮して、明日は皆様に熱戦をお見せできたらなと思っております」
(書き起こし=紋蛇、写真=玉響)