2023年11月10日 (金)

対局場の「懐石料理 東洋館」は1907年創業の老舗料亭。阿部次郎や土井晩翠、東北大学ゆかりの文学者が通った名店として知られます。リコー杯女流王座戦の開催は初めて。過去には1955年に第4期王将戦七番将棋(注・第4期は七番勝負ではなく七番将棋となった)第3局の千日手後日指し直し局が行われた記録があります。大山康晴王将と松田茂役九段(当時八段)が王将位を争ったシリーズでした。松田九段は1957年、タイトル戦に格上げされる前の王座戦で優勝しています。晩年に名前を茂行から茂役に改名。弟子には加瀬純一七段、木下浩一七段、真田圭一八段、長沢千和子女流四段がいます。

今朝、控室では棋士と女流棋士が継ぎ盤で当時の棋譜を鑑賞していました。斎藤明五段は次のように語ります。

「当たり前なんですが、強いですね。中盤でリードを奪ったのは大山先生です。松田先生が追撃して最終盤はギリギリのように見えました。しかし、気づきにくい詰みがあって、大山先生がうまく勝ちきっています。大山先生といえば受けのイメージが強烈ですが、切れ味も当然ながら鋭くて勉強になりました」

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昼食休憩中、対局室には里見女流王座、加藤女流四段の順に戻りました。13時になって記録係の和田あき女流二段から再開が告げられると、里見女流王座はすぐに着手。加藤女流四段も指し手を予想していたのか少しの間を置いて指していました。

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12時、里見女流王座が7分使って昼食休憩に入りました。消費時間は▲加藤女流四段37分、△里見女流王座1時間8分。昼食は里見女流王座が海鮮丼(ご飯少なめ)、紫芋くず焼き、さつまいものブリュレ。加藤女流四段は海鮮丼、季節の和菓子、お抹茶。対局は13時に再開されます。

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斎藤明五段が前夜祭で予想したように、里見女流王座が中飛車に振って対抗形に進みました。加藤女流四段が角道を開ける手を保留し、里見女流王座も飛車先を受けずに交換させて、趣向を凝らした序盤戦になっています。2筋を受けて△3二金(14手目)と上がった局面は、2人が戦った2022年8月の大成建設杯清麗戦五番勝負第3局と同一。結果は後手勝ちでした。

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清麗戦は加藤清麗(当時)が早めに▲3六歩と突いていましたが、本局は加藤女流四段が保留したことで里見女流王座が△3五歩と位を取り、▲3六歩(31手目)と反発して異なる展開になっています。中川八段は「いい勝負だ」と話しながら継ぎ盤に向かっています。

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11時から東洋館の2階で事前に申し込まれた方に指導対局が行われています。斎藤明五段、武富女流初段、脇田女流初段は公式戦さながらの真剣な表情でした。

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13時30分開始の現地大盤解説会は、リコー杯女流王座戦のYouTubeチャンネルでライブ中継を行います。

【大盤解説会LIVE】リコー杯女流王座戦 五番勝負 第2局
https://www.youtube.com/watch?v=kT4gu9_E3kc

対局室に設置されている360度カメラ『RICOH THETA』の映像では、リアルタイムで対局室の様子をご覧いただけます。

【対局風景LIVE】リコー杯女流王座戦 五番勝負 第2局
https://www.youtube.com/watch?v=iDacVS0r770

10時30分、おやつの時間になりました。里見女流王座はホットの紅茶にミルクティー用の牛乳、「矢部園 伊達茶」を注文。加藤女流四段は「矢部園 伊達茶」を氷なし、常温で注文しています。お茶は宮城県石巻の茶畑産。茶の生産は仙台藩藩祖の伊達政宗が茶栽培を奨励してから今日まで受け継がれています。

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対局室には里見女流王座、加藤女流四段の順に入室しました。里見女流王座が駒箱を開けて、2人が駒を並べていきます。並べ終えると2人は目を閉じて集中を高めている様子でした。定刻の10時、中川八段が開始を告げて両対局者が一礼。加藤女流四段は息を吐いてから盤上に手を伸ばし、早いペースで手が進んでいきました。

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2023年11月 9日 (木)

検分終了後、場所を移して前夜祭が行われました。両対局者の決意表明の前には、10月7・8日に仙台市内各所で開催された第26回みちのくYOSAKOIまつりの一般部門コンテストで優秀賞を獲得した地元のチーム「羽跳天(うちょうてん)」のパフォーマンスが会場を盛り上げました。

両対局者が対局に備えて退場してからは、棋士と女流棋士が明日の見どころについて語りました。中川八段は「第1局は大変な熱戦。加藤さんが攻めて里見さんが受けに回る、お互いの棋風が盤上に表れた好局だった。明日も加藤さんが先攻して里見さんがどう反撃するかがひとつのポイント」、斎藤明五段は「この2人のカードで加藤さんが先手番だとゴキゲン中飛車が多い。加藤さんのパンチが当たるか、里見女流王座の技が光るか。中終盤のねじり合いがすさまじいので、そこに注目している」と展開を予想。脇田女流初段は「2人とも序盤巧者。中盤から終盤にかけて抜け出すスピード感がすごく、自分が一歩一歩進むところを3歩も4歩も進んでいる」、和田あき女流二段は「2人とも一手でもゆるい手を指すと許してもらえない」と、両対局者との対局経験を踏まえて印象を語ります。進行をリードした武富女流初段は「居飛車穴熊党なので加藤桃子さんの将棋を並べている。一番の見どころはやはり終盤戦」と話しました。

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株式会社リコーグラフィックコミュニケーションズ商品事業統括本部長 佐藤眞澄
「リコー杯女流王座戦を仙台で開催するのは2015年以来、8年ぶりです。明日の対局も最高レベルの戦い、熱戦になると思われますので、皆さん、期待してください。 将棋で勝つために必要な決断力、創造力はビジネスや社会でも重要です」

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公益社団法人日本将棋連盟 常務理事 清水市代
「第1期の桃子ちゃんは初々しく、また若いのにしっかりしていた印象があります。今回、挑戦者になられた時の記者会見では虎視眈々とタイトルを狙っていきますとしっかり強く宣言されておりました。かわいい桃ちゃんが虎になっちゃったんだな、と。その力強さを盤上でどのように発揮してくるのか、私も大変楽しみにしております。里見女流王座は大変なスケジュールの中で、いつも泰然自若、自然体で臨まれています。その姿はこれから女流棋士を目指す少女たちにとって強い憧れになるでしょうし、里見さんの魅力はその強さとしなやかさだと思います」

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仙台市長 郡和子
「おばんでございます。女流王座戦の舞台のひとつに仙台を選んでいただいたことは大変、光栄です。仙台では『将棋の日』のイベントを開催する予定でして、将棋でこの街が活気づいている状態で、ありがたく思います。子どもたちが刺激を受けて、中川大輔八段に続くプロ棋士が次々とこの仙台から誕生すること、そしてまた将棋文化が発展することにも心から期待を寄せるものでございます」

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里見香奈女流王座
「仙台に対局者として来ることができてうれしく思います。明日は自分の力を出しきれるように全力を尽くしたい」

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加藤桃子女流四段
「虎になりました女流棋士の加藤です。育ててくださったのは清水先生です。ありがとうございます。仙台には対局でもプライベートでも来ていて、グルメを堪能しました。今日は仙台市内を数台走っている水素タクシーの、楽天イーグルスのとある選手がご指名のタクシーに乗ることができて、対局に向けて福がついたような気持ちになりました」

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リコージャパン株式会社 執行役員 宮城支社長 石下義治
「当日は『RICOH THETA』の360度の映像と大盤解説会をお楽しみいただければと思います」