カテゴリ「第27期竜王戦七番勝負第5局」の記事 Feed

2014年12月 5日 (金)

翌朝、関係者はフロント前に集合し、マイクロバスで帰路につきました。

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(糸谷竜王はお土産コーナーにいました)

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(一夜明けて晴れやかな表情の糸谷哲郎竜王)

(夏芽)

2014年12月 4日 (木)

共同インタビューの内容を一部掲載します。

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──シリーズ通じて第4局、第5局と「自信がなかった」と言われていましたが、苦しくなってからの指し方など、考えていたりしますか?

ひとつは「相手に分かりやすい決め手を与えない」ということ、あとは「例え最善手でなくても、勝ちやすい形を作る」ということですね。

──早指しで相手に考える余裕を与えないのは、意識してのことですか?

竜王戦は普段より時間(持ち時間)が多いですが、なくなってしまえば同じなので。良いときはなるべく(早指し)しないよう心掛けてます。ただ悪いときは逆転しないといけませんし、時間も戦術のひとつなので。あと自分が悪いと思っているときは、積極的に(読みを)飛ばしますね。読みの枝がいくつもある中で、ひとつ都合の悪い変化があれば、それをどんどん切り捨てていく。苦しいときほど切り捨てる手がはっきりするので、必然的に早指しになりやすいです。ただ今日の将棋のように序盤で早く指して悪くなるなら、もっと考えろよって話ですよね(苦笑)

──挑戦者決定戦で羽生善治名人、七番勝負で森内俊之竜王を破ったことで「羽生世代」に対しての勢力図は変わりそうですか?

豊島(将之七段)さんや中村(太地六段)さんといった、今まで挑戦された人たちも、まだ挑戦していない人たちも、これからもっとぶつかっていけるのではと思います。私見ですが、私たちの1つ上の世代は序盤戦術が卓越しているので、終盤力で戦っていかないと、経験値の差で勝てないと思います。

──やはり終盤で勝負すべきと?

最近は(コンピュータ)ソフトが強くなり、人間はまだまだ終盤が間違っていることが多いと分かってきたので、そこをもっと鍛えれば、もっと正確に指せるのではと思います。

──普段はソフトを活用しますか?

家のパソコンにソフトは入ってなくて、連盟のパソコンでたまに指したり、棋譜を見たりするぐらいです。基本的に力は中終盤に寄ってまして、人間ももっと中終盤をうまくできると思います。今までと同じ感覚で中終盤で時間がなくなったらつらいんじゃないかなと。具体的には先ほど言った「枝切り」ですね。短い時間で、飛ばして、正しく読める力が必要になってくるような気がします。

──森(信雄七段)一門での初タイトルとなった点については?

師匠に良い恩返しができたと思います。今後も獲り続けていけるよう頑張りたいです。

──大学(現在休学中)の方は?

今、研究している学問も結構重要なことなので復学したいんですけど、今はなかなか時間が取れません。


(夏芽)

感想戦を終えた糸谷竜王は、大勢のファンが待つ大盤解説会場へ移動。それまで壇上に上がっていた青野九段が「ここは同じ関西ということで」と井上九段に聞き手を任せ、糸谷新竜王へのインタビューが始まりました。

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(以下、インタビュアーは井上九段)

──本局はいかがでしたか?

封じ手に入るかなり前から酷いなと思っていました。それも相当な酷さです。

──タイトルを獲られた今の心境は?

第4局、第5局と序盤酷い内容だったので、正直ホッとしています。竜王を獲ったという実感はまだないですね。

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──今後についていかがですか?

タイトルホルダーとして、その名にふさわしい将棋を指せるようにしていきたいです。

──賞金の使い道は考えられていますか?

今、8畳一間に住んでいて、もうひとつ部屋をほしいと思っています。関西将棋会館のどこか近くに借りたいですね。

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──タイトルホルダーとしての今後については?

普及の方で、もっと力を入れて貢献できるかと思います。

──関西の若手棋士として、結果が出ました。

豊島さん、稲葉さん、菅井さんも僕がタイトルを獲ったことで、奮起してくると思うので、そのきっかけになればいいと思います。

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──今後の目標はなんでしょうか?

他のタイトルも手が伸ばせるように、同時に竜王を維持できるようにしたいです。

──竜王を獲って、今一番気になっていることはなんですか?

免状署名ですね(場内爆笑)。ちょっとまた書道を習いに行かなければいけないと思っています。

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(最後に井上九段が「おめでとうございます。糸谷新竜王でした!」と締めて、大きな拍手の中、深々と一礼する糸谷新竜王)

(インタビュー書き起こし:潤記者、写真:夏芽)

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【糸谷哲郎新竜王のインタビュー】

──本局を振り返ってどうでしたか?

▲2五桂(55手目)があまり良くなくて、ずっと苦しい将棋でした。

──逆転の手応えはどの辺りで感じましたか?

▲9八同玉(137手目)と取ったところぐらいで「もしかしたら」と。

──シリーズ全体を振り返ってどうでしたか?

段々と内容が悪くなってしまって、序・中盤は反省点も多かったのですが、なんとか結果が出せて良かったです。

──シリーズ前に「自分らしい将棋を」という抱負でしたが、初めてのタイトル戦はどうでしたか?

最後まで時間配分ができなかったのですが、そこを除けば、よく指せたと思います。

──初タイトル、竜王位を獲得した今の感想を聞かせてください。

今は素直に嬉しいです。

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【森内俊之前竜王のインタビュー】

──本局を振り返ってどうでしたか?

うまく指せていたと思うのですが、途中で一気に攻めるか、ゆっくり攻めるか方針が定まらず、最後に負けにしてしまいました。

──1期での失冠となりましたが?

中・終盤でミスが多かったので仕方がないと思います。


(夏芽)

終局直後の様子。

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(終局と同時に多くの報道陣が一斉に対局室に入った)

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(竜王戦という最高の舞台で初タイトルを獲得した糸谷哲郎新竜王)

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(前期復位も1期で失冠となった森内俊之前竜王)

(夏芽)

第27期竜王戦七番勝負第5局は、161手で糸谷七段の勝ちとなりました。終了時刻は15時46分。消費時間は▲糸谷七段4時間29分、△森内竜王7時間59分。

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この結果、シリーズ4勝1敗で糸谷新竜王が誕生しました。

(夏芽)