共同インタビューの内容を一部掲載します。
──シリーズ通じて第4局、第5局と「自信がなかった」と言われていましたが、苦しくなってからの指し方など、考えていたりしますか?
ひとつは「相手に分かりやすい決め手を与えない」ということ、あとは「例え最善手でなくても、勝ちやすい形を作る」ということですね。
──早指しで相手に考える余裕を与えないのは、意識してのことですか?
竜王戦は普段より時間(持ち時間)が多いですが、なくなってしまえば同じなので。良いときはなるべく(早指し)しないよう心掛けてます。ただ悪いときは逆転しないといけませんし、時間も戦術のひとつなので。あと自分が悪いと思っているときは、積極的に(読みを)飛ばしますね。読みの枝がいくつもある中で、ひとつ都合の悪い変化があれば、それをどんどん切り捨てていく。苦しいときほど切り捨てる手がはっきりするので、必然的に早指しになりやすいです。ただ今日の将棋のように序盤で早く指して悪くなるなら、もっと考えろよって話ですよね(苦笑)
──挑戦者決定戦で羽生善治名人、七番勝負で森内俊之竜王を破ったことで「羽生世代」に対しての勢力図は変わりそうですか?
豊島(将之七段)さんや中村(太地六段)さんといった、今まで挑戦された人たちも、まだ挑戦していない人たちも、これからもっとぶつかっていけるのではと思います。私見ですが、私たちの1つ上の世代は序盤戦術が卓越しているので、終盤力で戦っていかないと、経験値の差で勝てないと思います。
──やはり終盤で勝負すべきと?
最近は(コンピュータ)ソフトが強くなり、人間はまだまだ終盤が間違っていることが多いと分かってきたので、そこをもっと鍛えれば、もっと正確に指せるのではと思います。
──普段はソフトを活用しますか?
家のパソコンにソフトは入ってなくて、連盟のパソコンでたまに指したり、棋譜を見たりするぐらいです。基本的に力は中終盤に寄ってまして、人間ももっと中終盤をうまくできると思います。今までと同じ感覚で中終盤で時間がなくなったらつらいんじゃないかなと。具体的には先ほど言った「枝切り」ですね。短い時間で、飛ばして、正しく読める力が必要になってくるような気がします。
──森(信雄七段)一門での初タイトルとなった点については?
師匠に良い恩返しができたと思います。今後も獲り続けていけるよう頑張りたいです。
──大学(現在休学中)の方は?
今、研究している学問も結構重要なことなので復学したいんですけど、今はなかなか時間が取れません。
(夏芽)