カテゴリ「第21期竜王戦七番勝負第1局」の記事 Feed

2008年10月20日 (月)

 さざ波のように襲う変化手順の検討を進める中、渡辺竜王が89手目、▲67金と指した。検討陣一同、「これは詰みですね。」

 羽生名人の手が盤上に伸び、△88金と指す。▲同玉△78金。ここまで、激闘を続けてきた両雄の頭が盤上に被る。終局の合図だ。パリでの激闘を制したのは、挑戦者である羽生善治名人。初戦を白星で飾った。

 終局後、両者疲労困憊の様相。これが、パリの激闘を何よりも如実に物語っている。25dsc_0255_2 26dsc_0255_2 27dsc_0255

24dsc_0255  超難解な終盤戦、これぞまさしく将棋界を代表する頭脳同士の闘い。そして超絶技巧の応酬。芸術の都パリに相応しい二人が織り成すこの将棋、この勝負。これを芸術と云わずして何と言おう。

 しかしながら、控え室検討陣は、この局面で、再び苛まれている。果たしてどっちが勝っているのか?優勢なのか?激しい意見の応酬がこちら側で交わされている。

4_2  81手目、▲7七同桂と渡辺竜王が指したところで、羽生名人の手がピタリと止まる。この数手、両者ノータイムで指していたが、果たしてどうなのだろうか?米長会長の解説によると、▲7七同桂の局面での千日手の筋があるとのこと。
 「△8八歩に▲同金△7九銀。この局面は後手の持ち駒が金二枚だが、もし金銀ならば△8八銀成▲同玉△7九銀▲同玉△5七馬で先手玉が詰むので、以下▲6三歩△同金▲5二銀(右変化図1)と後手玉に詰めろをかけていく。41_3
 そこで後手は危険なので△6二金打とはじくが、▲6三銀成△同金で、こんどは駒が入れ替わったので先手玉が詰めろ。よって▲8九金打として△8八銀成▲同金△7九銀。▲5二銀(再び変化図)とせまって△6二金と打って・・・という千日手になる可能性もある。」
 つまり循環手順は、変化図から△6二金打▲6三銀成△同金▲8九金打△8八銀成▲同金△7九銀▲5二銀の八手一組。「こんな筋は見たことがない」と一同。

2008年10月19日 (日)

 今回のパリ対局でも、勿論大盤解説会を開催している。それに先立って、19日の午前中に指導対局も行った。

 前日同様、皆さん熱心なことこの上なく、只管、将棋を教わることに夢中である。
 午後1時30分から、大盤解説会。通訳付での解説会となる。米長会長が、ユーモアを交えながら、一手一手の解説を行っている。これから、佐藤棋王や佐藤(紳)六段も解説を行う。

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 パリには、古い街並みを保持しなくてはならないという条例があるらしい。市内の建物の味わい深さはこういったことで、守られているのだ。しかし、そうとは言え、新しさも混在するのが、パリである。その新旧の織り交ぜこそ、創造力豊かなエネルギーを生み出し、古くから欧州の中心都市の一つとして、歴史を牽引し、彩ってきたわけだ。

 凱旋門は、ナポレオンの命によって、1806年に礎石が置かれ、今や、パリの代名詞ともいえる建造物である。そこには、フランスのために、命を捧げた数多く戦士の名が刻まれ、フランスの歴史でもある。

 一方で、新凱旋門グランド・アルシュは、1990年に完成した。ラ・デファンス地区は、超高層ビルなどが立ち並び、新しいパリの象徴とも言え、その様相は、旧地区とは全く異なる。14dsc_0255_2 15dsc_0255

13dsc_0255  四段中村太地。棋士番号261、東京都出身、米長邦雄門下。1988年6月1日生まれのふたご座。今回のパリ対局で記録係りを担当している。私も、なかなか彼とは、接する機会がなかったが、今回の長旅で好青年ぶりを、とても強く感じることができた。人気が出て不思議でない。

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第1局のパリでも、17日、19時からホテル内の「ロンシャン」で前夜祭が行われた。150名が出席し、女性も多く大盛況であった。米長会長は、「桂馬という駒は、世界の将棋で共通した駒。これは、全世界の将棋が結ばれている証拠。」と挨拶。

 フランス将棋連盟会長・ファビアン・オスモン氏が、両対局者ら出演棋士一人一人を詳しく紹介。最後に、支部のメンバーとともにフランス語の四間飛車の本を棋士に手渡した。フランスにおける、将棋の普及にとても尽力されており、今回の前夜祭でも、氏の協力なしには、できなかったであろう。