2022年7月15日 (金)

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この局面で、稲葉八段が13分考えて夕食休憩に入りました。ここまでの消費時間は▲伊藤匠4時間1分、△稲葉2時間38分(持ち時間各5時間)。夕食の注文は、稲葉八段が「珍豚美人(白米、カップスープ)」(レストランイレブン)、伊藤五段が「肉なんばうどん」(やまがそば)。対局は18時40分に再開します。

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稲葉八段が端攻めで桂を捕獲し、駒得を確定させたところです。対する伊藤匠五段は▲5九玉と移動して、桂を取られたあとの△7六桂(王手竜取り)から早逃げしました。次に(1)▲4八玉~▲2九飛で右玉の好形となり、働きの弱かった飛車にも活が入ります。また、ここ数手のやりとりで持ち歩が増えたことで(2)▲2四歩△同歩▲2五歩という継ぎ歩攻めも選びやすくなりました。

ただし、そこまで陣形整備をする猶予はないかもしれません。例えば現局面で△1五歩▲同歩△9五香▲9八歩△9七歩成▲同歩に△1六歩(変化図)と垂らして、次に△1七歩成▲同香△1九角から先手陣右辺を荒らす手段が考えられます。これは▲5九玉をとがめたことになりそうです。また1筋ではなく3筋の歩突きから攻めを作るのも一案です。

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先手はバランスのよい陣形に組みきれればそれが主張となるでしょう。一方の後手は、駒得確定であること、そして前述のような端攻めなどこの瞬間に動く権利があることが主張です。時刻は17時25分、稲葉八段が40分以上の長考に沈んでいます。

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数手前、稲葉八段にも1時間以上の長考がありました。それでも残り時間では相手よりも圧倒的に余裕があります。56手目△7三銀までの消費時間は▲伊藤匠3時間49分、△稲葉1時間7分。

いまは激しい変化を回避して戦いがいったん落ち着き、局面は中盤に戻ったといってよいでしょう。以下(1)▲8三桂には△8一金▲9一桂成△同金で、先手に追撃手段がありません。むしろ後手に桂が渡ることで△7六桂の王手竜取りが生じてしまいます。実戦はここから(2)▲7二歩△8二金▲7一歩成と進みました。稲葉八段としては先手の攻めを切らして、持ち駒の豊富さや、盤上の駒の働きでまさる点(先手の2八飛や9七桂が使えていない)を生かしたいところです。

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6六飛を取るのに1時間30分を費やしました。これにより、両者の消費時間には3時間47分の開きが生じています。以下△7四銀に▲8二飛と王手を掛けたところで、ここまで1分しか計上していなかった稲葉八段の手も止まっています。

Img_7123(じっくりと読みを入れた伊藤匠五段。もう長考できる機会は多くないが、果たして)