稲葉八段が端攻めで桂を捕獲し、駒得を確定させたところです。対する伊藤匠五段は▲5九玉と移動して、桂を取られたあとの△7六桂(王手竜取り)から早逃げしました。次に(1)▲4八玉~▲2九飛で右玉の好形となり、働きの弱かった飛車にも活が入ります。また、ここ数手のやりとりで持ち歩が増えたことで(2)▲2四歩△同歩▲2五歩という継ぎ歩攻めも選びやすくなりました。
ただし、そこまで陣形整備をする猶予はないかもしれません。例えば現局面で△1五歩▲同歩△9五香▲9八歩△9七歩成▲同歩に△1六歩(変化図)と垂らして、次に△1七歩成▲同香△1九角から先手陣右辺を荒らす手段が考えられます。これは▲5九玉をとがめたことになりそうです。また1筋ではなく3筋の歩突きから攻めを作るのも一案です。
先手はバランスのよい陣形に組みきれればそれが主張となるでしょう。一方の後手は、駒得確定であること、そして前述のような端攻めなどこの瞬間に動く権利があることが主張です。時刻は17時25分、稲葉八段が40分以上の長考に沈んでいます。