カテゴリ「第26期竜王戦七番勝負第3局」の記事
ギアチェンジ
2日目に入り、森内名人は▲7三馬から飛車を取り、▲5一飛と打ち下ろしました。受け切りは難しいので攻め合いに出ました。控室では「ギアチェンジですね」の声も。ただし、この▲5一飛は自陣に利かした意味もあり、「攻め合いに見せて、受けも考えた指し方です」と村山六段。なお、▲5一飛は49手目▲9六歩によって指せたもの。△9五角の王手飛車取りを防いでいます。名人は1日目からこのような展開を想定したのでしょうか。
加藤九段、豊川七段、村山六段による継ぎ盤では▲5一飛に△4九角▲2三歩△同金▲5八銀や△4四角▲5五歩△5三歩などが検討されています。
対局再開まで2
対局再開まで1
封じ手は▲7三馬
ニコニコ生放送の案内
本局はニコニコ生放送によるライブストリーミング中継が行われます。
1日目の解説は田丸昇九段、聞き手は上田初美女流三段。
1日目は8時50分開場、9時開演。封じ手まで放送。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv152237731
2日目の解説は森下卓九段、聞き手は安食総子女流初段。
2日目は8時50分開場、9時開演。終局まで放送します。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv152238398
おはようございます
村山六段による封じ手局面の見解
「僕が控室に着いたのは△1四歩と突いたところでした。最初は苦しくて実戦的な手なのかと思っていましたが、後から間合いをはかった手と気付きました。△1四歩に▲9六歩はぬるく、▲8二馬から▲9三馬で相手を焦らせるのかと考えていたのですがそうではなかったのです。後の△7五歩▲同歩△6四飛の筋を見て考えが変わりました。
△1四歩に▲8二馬だと、後手はやはり△7五歩▲同歩△6四飛とします。そこで▲7三馬なら▲8二馬が1手パスで先手が損です。一見△1四歩▲9六歩は不思議な手順ですが、森内名人は△7五歩▲同歩△6四飛の筋を読みの中で看破して、▲8二馬は損な手と認識されたのでしょう。そこで、損にならない手として▲1六歩と▲9六歩のどちらかの選択で▲9六歩とされたのだと思います。
▲9六歩に対しても渡辺竜王は△7五歩と指してきました。封じ手の局面は、先手が駒得で悪いとは思えないですが、検討すると後手の攻めはうるさいです。先手は攻め合いにならないため受け切る感じにしたいのですが。現段階では先手を持ちたくありません。
△7五歩▲同歩△6四飛は見たことのない攻め筋で、おそらく渡辺竜王はそれを研究段階で発見したのでしょう。それがすごいです。今日は間合いをはかりつつ、いつ△7五歩の筋を決行するかを考えていたのでしょう。
封じ手は▲7三馬でしょう。▲6六歩もないわけではありませんが駒をさばかれてしまいます。つまり、▲6六歩に△7六歩▲6五歩△7七歩成▲同桂△6五桂(参考1図)の変化です。
なので、先手は▲8八銀の壁銀を甘受することになるのではないでしょうか。▲7三馬△7六歩▲8八銀△5六銀に▲6六歩か▲6六香か。▲6六香は△5四飛▲5五歩△6七銀成▲同金△4四飛▲5八銀(参考2図)が一例です。▲5八銀は△4九角を消していますが、駒を使うと4四飛を狙いにくくなります。▲5八銀に△8六歩としてどうか。例えば▲同歩には△8七歩▲9七銀△8八金などとして無理やりにでも、手になれば後手は陣形が堅いですからペースをつかめます」
中田七段による封じ手局面の見解
「竜王が新しい指し方を見せました。駒損の代わりに固めて攻める方針。封じ手以降で名人がどうしのぐのか。明日の午前が勝負どころでしょう。見応え十分です。
竜王は『堅い・攻めてる・切れない』をできるか。前二つはできているので、最後の攻めが途切れるかどうかがキーポイントになりそうです。今日の手順は▲9一角成としてから端歩の交換がすごい。素晴らしい将棋だと思います」
豊川七段による封じ手局面の見解
「△5三銀右急戦がシリーズになるとは思いませんでした。△3三銀から△2二玉~△4二金上は驚きましたね。香損甘受でしかも封じ手が▲7三馬なら桂香損ですよ。
竜王は玉が堅い棋風とはいえ浮かばない指し方で驚きマンモス。いや、冗談ではなく、下手したら後手がいいかもしれません。
名人の封じ手が興味津々。封じ手は▲7三馬だとは思います。▲6六歩は悔しくて打てないと思いますね。現状は先手が悪いとは思えないんですけど、調べるとなかなか大変。
加藤先生のおっしゃっている▲7三馬に△7六歩▲8八銀△5六銀▲6六歩△6七銀成▲同金△4九角の変化は、▲3九銀に△5八金▲7八玉△5六歩(参考図)がぴったりしています。本筋の手順ですけど、△4九角がうるさそうです。この変化で後手良しというのは先手からすると嫌な感じです。
短時間の将棋で実戦的にこう指すなら分かりますが、今回は2日制の将棋で相手も丹念に読めます。それで指したのがすごいですね。森内名人がどのように受けるか。どちらかというと、渡辺竜王の方が指し手は分かりやすいですね」