カテゴリ「第24期竜王戦ランキング戦6組(男性棋士vs.女流棋士)」の記事 Feed

2010年12月23日 (木)

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▲甲斐女流二冠-△永瀬四段戦は、永瀬四段がゆったりと指し進め、これをチャンスと見て甲斐女流二冠が▲6五歩(図)と仕掛けた。△3三角~△2二玉では、△4四歩~△7二飛と7筋を逆襲するのがよく見られる形。実戦は図の▲6五歩以下、△6五同歩▲同銀△6二飛▲7四歩(下図)と進んだ。
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これで後戻りのできない本格的な戦いに突入。持ち時間5時間の将棋としては非常に早い展開だ。図から△7四同歩▲同銀△同銀▲同飛△6九飛成▲7一飛成が一直線の手順で、こう進めば一気に寄せ合いになる。ただ、先の順では後手が先に飛車を成っている。それでは先手がおもしろくないので、工夫することになりそうだ。

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▲大石四段-△矢内女流四段戦では、矢内女流四段が△6四角(図)と角を据えた。8六歩・4六歩の両取りだ。確実に歩得が見込めるものの、角を手放してしまうデメリットも大きい。矢内女流四段はこの角をうまく使える形にしていく必要がある。
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11時40分頃、局面は上図のように進展した。先手と後手の陣形を比べれば、△6四角の影響がよくわかる。先手は角を打ち込まれる心配がなくなったため、気がねなく金銀を玉側に集めることができる。いっぽうの後手は、角打ちのスキを作ってはいけない。金銀を左右に配置してバランスをとっている。
矢内女流四段の狙いは△3五歩~△3六歩。角の利きを生かして飛車を攻める。先手は金銀の物量差を生かして、玉頭を圧倒する展開に持ち込みたい。

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11時30分頃、▲里見女流三冠-△吉田四段戦では、吉田四段が工夫を凝らした駒組みを見せている。早い段階で桂を活用した(▲3六歩~▲3七桂)里見女流三冠に対して、吉田四段は△4四銀~△4二角(図)で8筋からの仕掛けを狙った。この引き角が積極的な構想で、△4四歩~△4三金の展開よりも角が使いやすい。ただ角がラインを変えたことで、先手からの▲6五歩がいつでも切り札になる。現状では△8六歩の攻めが見えているので、里見女流三冠はそれを防がなくてはいけない。3筋の桂頭など、先手陣は弱みが多い形。いったんはしっかりと仕掛けを防ぎ、十分な態勢を整える時間を作りたいところだ。

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▲清水女流六段-△伊藤四段戦……後手石田流対▲6五角急戦
▲里見女流三冠-△吉田四段戦……先手中飛車
▲甲斐女流二冠-△永瀬四段戦……先手石田流対後手左美濃
▲大石四段-△矢内女流四段戦……後手ゴキゲン中飛車対先手丸山ワクチン+佐藤流

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遅れて始まった伊藤真四段-清水女流六段戦は、清水女流六段が先手を得た。初手から▲7六歩△3四歩▲6八玉と、清水女流六段は「中飛車封じ」を発動。対する伊藤真四段は△3五歩から石田流に構えた。数手進み、清水女流六段は角交換から▲6五角(図)と打つ。▲8三角成と▲4三角成の両狙いで、同時には受からない。後手が失敗したようだが、実はこれもひとつの定跡。ここからは△5二玉▲8三角成△3六歩と進み、序盤から激しい展開へと進んでいく。

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9時50分頃、特別対局室に動きがあった。伊藤真四段が対局室に現れたのだ。伊藤真四段は52分の遅刻で、3倍引きで156分=2時間36分が持ち時間から引かれることになる。両者駒を並べ、9時56分に対局が始まった。
対戦成績は2局戦って伊藤の2勝。2007年と今年、王位戦予選で戦っている。清水女流六段の対男性棋士成績は29勝139敗(0.173)。対局数168は女流棋士中トップで群を抜いている。

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【伊藤真吾(いとう・しんご)四段】
1982年1月4日生まれ、東京都八王子市出身、桜井昇八段門下。1993年9月に奨励会へ6級で入会、2007年4月に四段昇段。

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【清水市代(しみず・いちよ)女流六段】
1969年1月9日生まれ、東京都東村山市出身、(故)高柳敏夫名誉九段門下。1985年4月女流2級、2000年10月、女流棋界で初の女流六段。タイトル獲得は女流名人10期、女流王将9期、女流王位14期、倉敷藤花10期で獲得合計は43期。タイトル戦登場回数は62回。女流名人・女流王将・女流王位・倉敷藤花の4タイトルでクィーン称号を獲得している。棋戦優勝はレディースオープントーナメント7回、鹿島杯女流将棋トーナメント3回で合計10回。1996年7月文部大臣表彰、1997年2月都民文化栄誉章、2000年11月東村山市民栄誉賞、2008年8月倉敷市将棋文化栄誉章を受賞している。

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吉田四段-里見女流三冠戦は、里見女流三冠が得意の中飛車で戦っている。吉田四段は5筋の位を保ち、早い段階で△5三銀(図)と繰り出した。これは佐藤康光九段が公式戦で初めて用いた対策で、図から▲2八玉には△7七角成▲同銀△6四銀として5筋の飛車先を受け止める狙いがある。この手を見た里見女流三冠は▲6六歩と角道を止め、オーソドックスな中飛車へ合流した。この後、里見女流三冠がどのように駒組みを進めていくのか注目だ。

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永瀬四段-甲斐女流二冠戦は、先手番を得た甲斐女流二冠が「石田流」に構えた。7筋の位を取る三間飛車で、非常に攻撃的な布陣だ。対する永瀬四段は居飛車を選択、ベーシックな守備隊形で対応している。永瀬四段の棋風は、独特の感覚を備えた受け将棋。永瀬四段は、先手の飛車を圧迫する方針で指してくるだろう。甲斐女流二冠は押さえ込みに気をつけつつ、うまく大駒をさばいていきたい。

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大石四段-矢内女流四段戦は、なんと矢内女流四段が「ゴキゲン中飛車」を採用。居飛車党の矢内女流四段が振り飛車を選んだことで、かなり意外な展開になっている。大石四段は図から▲2二角成△同銀▲9六歩と、「丸山ワクチン+佐藤流」で対抗。互いに角を手持ちにしつつ駒組みを進めることになる。必然的に相手の手を殺し合う流れになるので、じっくりした中盤戦になりそうだ。

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大広間の一角・雲鶴(うんかく)の間では、大石四段-矢内女流四段戦が行われている。両者は本局が初手合いだ。矢内女流四段の対男性棋士成績は5勝34敗(0.128)。

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【大石直嗣(おおいし・ただし)四段】
1989年9月16日生まれ、大阪府八尾市出身。森信雄七段門下。2009年4月に四段昇段。第51期王位リーグ入り。

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【矢内理絵子(やうち・りえこ)女流四段】
1980年1月10日生まれ、埼玉県行田市出身。関根茂九段門下。1990年に育成会入会。1993年4月女流2級。2004年8月女流四段。タイトル戦登場は17回、獲得は女王2期、女流名人3期、女流王位1期で計6期。棋戦優勝はレディースオープントーナメント2回。2005年、2006年に最優秀女流棋士賞。2007年に女流棋士賞。2007年2月、第2回さいたま輝き萩野吟子賞。2008年7月、行田市観光大使。

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