2017年10月の記事

2017年10月19日 (木)

両対局者が退室すると中村太王座と島九段が第1局の見どころを話した。

Dsc_0232(中村太王座は今月11日に王座を奪取したばかり)

中村 渡辺竜王は竜王戦で無類の強さを発揮されています。明日から始まる七番勝負に向けても相当の準備を積まれていると思います。最近では雁木戦法がはやっていたり、流行戦法も以前と比べてがらっと変わっていますが、そういう最新の形が見られるのではないかと。

島 太地さんのような若手の方にも予想がつかない戦いになるのではないかと思います。多分、お二人とも対局しているうちにだんだんエンジンがかかってくるのではないかと。やはり第1局を取るのは非常に大きいですし、公開対局ということでやりがいもありますよね。

中村 戦型予想はいかがですか。

島 それはいちばん苦手な分野ですね。太地さんはいかがですか。

中村 先後によっても違ってくると思いますが、個人的には角換わりが好きなので、角換わりが見たいですね。ちなみに、直近のお二人の将棋は中飛車になっているんですよね。

島 今年は20代が大きく台頭した年だったと思いますが、20代の太地さんから見てお二人の対局はどうですか。

中村 やはりゴールデンカードですね。僕も棋士になってからこのお二人の将棋をお手本にして勉強してきましたので。お二人が最高峰の舞台で戦われるということは楽しみですし、安心感もあります。最終盤までぎりぎりの戦いになることがとても多いので、最後まで目が離せない将棋になるのではないかと思います。

Dsc_0238(軽妙なトークを繰り広げる島九段)

島 明日の1日目から激しい戦いになりそうですか。

中村 最近は早くに戦いになることが多いですからね。特に渡辺竜王もそういった展開をいとわないので、可能性は高いかもしれません。

島 羽生さんは、ちょっと私の感じなんですけど、ガンガンくるんじゃないかなと思ってるんですよね。

中村 それはどうしてでしょうか。

島 太地さんの前でいうのも何ですけれども、王座、それから王位も失冠して、流れとしてはあまりよくないのですが、ピンチと思われるところで開き直るのが羽生さんの棋士人生なんですね。今回は挑戦者ということもありますし、第1局から前向きにガンガンいくんじゃないかと。

中村 バチバチの戦いが見られそうですか。

島 渡辺さんとしても今回は受けに回るとまずいと思うので。だから、第1局の1日目から激しい戦いになるとすれば、それは今期の番勝負全体を予見するようなことになるのではないでしょうか。渡辺さんは公開対局が初めてなんですね。さっき聞いて驚いたんですけど。

中村 タイトル戦で公開対局となると全然違うものがありますか。先生は第2期(1989年)の竜王戦第1局で経験されているんですよね。

島 挑戦者の羽生さんが19歳で、私が26歳でしたかね。そのときの公開対局は、ずーっとぶっ続けで公開されたんですよ。最初はお客さんも緊張されていたんですけど、2時間、3時間と見ているうちに疲れてくるんですね(笑)。一方の私たちのほうも息が抜けないんですよ。でもそのときは、タイトル戦を楽しんでやってましたね。戦型予想については、先後も決まっていませんし、正直分かりませんけれども、居飛車系でお互いに降りたほうが負けという勝負になりそうな気がします。

中村 どちらが主張を通し続けるのかに注目ですね。

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(書き起こし・睡蓮、写真・吟)

渡辺竜王と羽生棋聖は竜王アカデミー受講生代表から花束を受け取り、竜王戦への決意を語った。

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(渡辺竜王)
竜王戦は今回で第30期という節目を迎えますけれども、そこで対局者として参加できることは非常にうれしいです。今回は公開対局ということですが、近年のタイトル戦では公開対局は珍しく、私自身は初めてです。舞台の上の対局ということでいままで経験がない状況ですので、あとから思い返して印象に残る対局になると思います。そこに将棋の内容もともなうようにしなければと思っております。
明日からの第1局が、ちょうど羽生さんと指す70局目の将棋になります。これまでもいろいろな思い出があるのですが、明日からの対局も後世まで語り継いでいただけるような内容の将棋を目指して頑張りたいです。今期の七番勝負はファンの方の注目度も非常に高いと感じておりますので、その期待に応えて最高棋戦にふさわしい将棋が指せればと思います。どうぞ最後までご注目ください。

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(羽生棋聖)
本日セルリアンタワー東急ホテルにきて、対局場を検分しまして、いよいよ明日から竜王戦の七番勝負が始まるんだなということをひしひしと感じています。将棋の世界も能の世界も非常に長い歴史と伝統がありまして、その中で今回、能の舞台の上で対局をするというのは初めてのことです。舞台の上で座っていると自然と厳かな気持ちになるのが感じられて、本当に素晴らしい場所を提供していただいたなと思いました。
私は竜王戦に第1期から参加させていただいています。この30年は非常に短かったですし、同時に長かったなあという気持ちもあるんですけれども、このような素晴らしい場でまた対局できるということは、私にとってこれ以上ない光栄なことです。せっかくの機会ですので、自分自身の持っている力を振り絞って、面白く内容の濃い将棋を指せるように全力を尽くしたいと思っております。

Dsc_0214(花束を手に記念撮影をして、両対局者は会場をあとにした)

(書き起こし・睡蓮、写真・吟)

東京都内での開催ということもあり、多くの棋士が前夜祭に訪れ、ファンと触れ合った。

Dsc_0153(森下卓九段・日本将棋連盟常務理事)

Dsc_0143(青野照市九段)Dsc_0149(中村修九段)

Dsc_0167(藤井猛九段)

Dsc_0138(安食総子女流初段)

Dsc_0125(会場に用意されたお料理)
 

18時からセルリアンタワー東急ホテルのボールルームで竜王戦第1局の前夜祭が開催された。

Dsc_0094(開会のあいさつは老川祥一・読売新聞グループ本社 取締役最高顧問 主筆代理)

いよいよ明日から竜王戦七番勝負が始まります。1988年に棋界最高位の棋戦として創設された竜王戦も、今期が30期目です。ここまで続いてこられたのは、ご関係の皆様のお力添えによるものでありまして、この場をお借りして心から感謝申し上げます。
渡辺竜王と羽生棋聖が竜王戦七番勝負で初めて対決されたのは2008年の第21期で、このときは初の永世竜王の資格を巡っての対決でもありました。渡辺竜王が第1局から3連敗で徳俵に足がかかったところで、そこから一気に4連勝されてひっくり返し、伝説の勝負となりました。そのようなお二人の対決が今回また見られるということで、大変白熱した七番勝負になることは間違いありません。
今期の竜王戦は最年長棋士の加藤一二三九段と最年少棋士の藤井聡太四段の対決で幕を開けました。勝利した藤井四段はその後も勝ち続けてランキング戦6組で優勝し、決勝トーナメントの1回戦においては公式戦29連勝という新記録を達成しました。そこから起こったいまの空前の将棋ブームの中で、将棋界の顔ともいうべき渡辺竜王と羽生棋聖の対決が行われるわけであります。渡辺竜王は勝てば竜王3連覇で12期目の獲得、羽生棋聖が勝てば永世竜王の資格を得ると同時に永世七冠という偉業を達成することになります。将棋ファンにとってはたまらない魅力に満ちた対決と思います。また、今回の一局は東急グループ様のご助力によって能楽堂での対局が実現し、さらに竜王戦では28年ぶりの公開対局と、話題に富んだものとなりました。ご関係の皆様のご尽力に心からお礼を申し上げて、ごあいさつとさせていただきます。
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(佐藤康光九段・日本将棋連盟会長)

今期の竜王戦七番勝負は、3連覇を狙う渡辺竜王に対して、永世竜王を目指す羽生棋聖が挑戦することになりました。竜王戦は節目の30期目を迎え、第1期からここまでの間にはさまざまな名勝負が繰り広げられてきましたが、その中でも中心的役割を担って時代をつくられたのは、何といっても明日から対局される渡辺竜王であり、挑戦者の羽生棋聖であります。このお二人が竜王戦の歴史をつくってきたといっても過言ではありません。そんなお二人の勝負がまた竜王戦七番勝負で見られるということで、ファンの皆様も大変注目されているのではないかと思います。
今回、能楽堂という場所を対局場としてご提供いただきまして、先ほど私も下見をさせていただいたのですが、やはり静けさの中に日本文化が漂い、将棋を対局させていただくのにも非常にふさわしい場所であると感じました。歴史に残るような大変な名局が第1局から見られるのではないかと期待しております。

Dsc_0113(乾杯のご発声は巴政雄・東京急行電鉄株式会社 代表取締役副社長執行役員)

棋界最高峰の竜王戦がかくも盛大に開催されますことを心よりおよろこび申し上げます。ご存知でなかった方も多いと思いますが、私どもはこのセルリアンタワー東急ホテルの中に能楽堂を有しております。今回対局場としてお使いいただけることは非常に光栄で、ありがたいことです。
渋谷というと「若い街」というイメージをお持ちになっているかもしれませんが、私どもは「Bunkamura」、「渋谷ヒカリエ」、「東急シアターオーブ」など、大人の方が楽しめるような街づくりも心がけております。渋谷は大変に多様性のある街でございます。現在の将棋界におかれましても、若手棋士の台頭、ポーランド出身の女流棋士の活躍など、多様性が花開いて活況を呈しているところです。そんな中で行われる、渡辺竜王と羽生棋聖による最高峰の戦い。非常に楽しみにしております。力一杯戦っていただいて、好勝負を見せていただきたいと思っております。

Dsc_0118(乾杯)

(書き起こし・睡蓮、写真・吟)

Dsc_0058(竜王経験者が記念撮影に応じる)

Dsc_0075左から島九段(初代竜王)羽生棋聖(第2期・第5期・第7期・第8期・第14期・第15期獲得)佐藤康光九段(第6期獲得)藤井猛九段(第11期~第13期獲得)森内俊之九段(第16期・第26期)渡辺明竜王(第17期~第25期、第28期・第29期獲得)Dsc_0078(棋界の顔。豪華メンバーが並ぶ)

このあと、18時から前夜祭が行われる。ブログの更新は前夜祭終了後になります。

 

17時から行われる予定だった対局検分。両対局者、立会人がそろって、16時55分に検分が開始された。

Dsc_0028(駒袋を開ける渡辺竜王)Dsc_0032(駒を並べていく渡辺竜王と羽生棋聖)

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Dsc_0045(注目の開幕局。報道陣も多い)

 

渡辺明竜王に羽生善治棋聖が挑む第30期竜王戦七番勝負(主催・読売新聞社)がいよいよ開幕する。第1局は10月20日(金)・21日(土)、東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で行われる。
対局は9時開始。持ち時間は各8時間(2日制)。1日目18時の時点で手番の側が封じ手を行う。先後は振り駒で決定される。
立会人は島朗九段、読売新聞観戦記解説は中村太地王座。記録係は森田富裕二段(飯島栄治七段門下)が努める。
中継は棋譜コメント入力が睡蓮、ブログを吟が担当する。どうぞよろしくお願いいたします。

Dsc_0002(今日の渋谷はあいにくの雨。午後の渋谷駅前)

【YOMIURI ONLINE】【囲碁・将棋】:竜王戦:カルチャー:読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/culture/igoshougi/ryuoh/

【セルリアンタワー能楽堂】
http://www.ceruleantower-noh.com/