二上達也九段は2001年に函館市栄誉賞を受賞しています。「北海の美剣士」「寄せの二上」と呼ばれ、スピーディーな指し回しが大きな持ち味でした。 竜王戦の前身である九段戦、十段戦で大山康晴十五世名人に何度も挑戦しましたが、いずれも厚い壁に阻まれています。
逝去したのは、先月の1日。今月19日にお別れの会が東京で開かれます。
【九段戦(全日本選手権戦)・十段戦】http://www.shogi.or.jp/match/finished/10_9.html
【訃報 二上達也九段】 http://www.shogi.or.jp/news/2016/11/post_1461.html
【「二上達也九段お別れの会」のお知らせ】http://www.shogi.or.jp/news/2016/11/post_1471.html
二上九段の竜王戦の勝局を紹介します。1989年の竜王戦1組出場者決定戦、相手は当時、若手の中村修七段(現九段)です。
二上九段は自著『棋士』(晶文社、2004年)で、自身の棋風を次のように述べています。「塚田さん」は、塚田正夫名誉十段のことです。
「短手数で終局することの多い私の棋風が、塚田さんと、塚田さんの師匠で函館出身の花田長太郎九段とを足して二で割ったようだと、ほかならぬ塚田さんから聞かされたこともあった。指し将棋の高段者でありながら、詰将棋作家という共通点のあることも親近感を増した」。
二上九段は終盤の切り合いを好みました。一手違いの勝負になりやすい、相掛かりの腰掛け銀は得意戦法だったのです。
戦いを起こしたのは中村修七段。しかし、二上九段は手に乗ってうまく反撃します。△6二金にどう指すか。
実戦は▲2四歩△同歩▲4五歩△5五銀▲2四飛と進みました。
▲2四飛に△2三歩は、▲3三歩成があります。以下△同金は▲5四飛△同歩に▲7五角の王手飛車、△同玉は▲5四飛△同歩に▲5一角の王手金取りです。
中村修七段は△7六馬と逃げましたが、▲6七銀△2三歩に▲7三歩成も強い踏み込みでした。
△7三同桂は▲3三歩成が王手飛車。実戦は△2四歩と飛車を取りましたが、▲6二とが詰めろです。以下△8五馬▲7四歩(詰めろ)△2三金に▲7七桂△7四馬▲同角から駒を補充し、勢いのある指し回しで勝利を収めています。
開始日時:1989/04/13 10:00:00
終了日時:1989/04/13 22:00:00
棋戦:竜王戦
持ち時間:各5時間
先手:二上達也九段
後手:中村修七段
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三歩 ▲2六飛 △6二銀
▲3八銀 △6四歩 ▲4六歩 △6三銀
▲4七銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲8七歩 △8四飛 ▲5六銀 △1四歩
▲1六歩 △5四銀 ▲7六歩 △3四歩
▲4八金 △4二玉 ▲3六歩 △5二金
▲3七桂 △9四歩 ▲9六歩 △7四歩
▲5八玉 △7五歩 ▲同 歩 △6五銀
▲同 銀 △同 歩 ▲2五飛 △3五歩
▲同 飛 △6六歩 ▲同 角 △同 角
▲同 歩 △4四銀 ▲2五飛 △3五歩
▲2六飛 △3六歩 ▲同 飛 △2七角
▲3四飛 △3三金 ▲3六角 △同角成
▲同 飛 △2七角 ▲4七角 △3五歩
▲2六飛 △5四角成 ▲3四歩 △3二金
▲7四歩 △6二金 ▲2四歩 △同 歩
▲4五歩 △5五銀 ▲2四飛 △7六馬
▲6七銀 △2三歩 ▲7三歩成 △2四歩
▲6二と △8五馬 ▲7四歩 △2三金
▲7七桂 △7四馬 ▲同 角 △同 飛
▲2二歩 △3六角 ▲4七金打 △同角成
▲同 金 △2八飛 ▲6九玉 △6六銀
▲2一歩成 △3四飛 ▲5一角 △3二玉
▲3一と △同 玉 ▲3三歩 △2二玉
▲3二銀 △3三金 ▲同角成 △同 飛
▲3四桂 △1二玉 ▲2二金
まで111手で先手の勝ち