2016年12月の記事

2016年12月 2日 (金)

__kifu_for_windows_pro_v6_64_11___5 攻防の▲7四角に△5二金打としたのが図の局面。▲7四角に△5八角から迫って、先手玉が詰むかどうかが検討されていたが、「詰まないんじゃないか」の声が控室では上がっていた。渡辺竜王も詰まないと判断したので、受けに回ったということだ。

Dsc_0539 (第5局は大熱戦になった)
 

__kifu_for_windows_pro_v6_64_11___4先手は中段玉で頑張る。形勢の差が詰まってきていると見られている。ここにきて後手の指し手が変調との声が聞こえる。「△6七銀不成▲4七玉に△6八銀不成▲同金に△8八竜で、後手が残っていると思うのですが」と阿久津八段は話す。

Dsc_0527 (丸山九段の逆転はあるのか)

__kifu_for_windows_pro_v6_64_11___3図の△4三金右を見て、大盤解説から戻った阿久津八段は「後手が優勢です」と話す。「後手は玉が堅く、攻めが途切れそうにありません。▲6四とは△7七銀があります。以下(1)▲同銀は△同桂成▲同角に△7六銀、(2)▲7七同角は△同桂成に▲同銀は△8九角、▲同玉は△4五角から寄りです。後手は△7六銀と△7七銀の狙いがあります。▲7七歩には△6六歩▲同飛△5五金で盤面を制圧できます」と続ける。

Dsc_0402 (現在は渡辺竜王が優勢だ)
 

Dsc_0579 (モニターを見つつ、記者に解説を行う阿久津八段。このあと大盤解説に向かった)

Dsc_0584 (北海道新ひだか町出身の日浦市郎八段。笑顔でモニターを見る。日浦八段は、先月20日に北海道今金町で開催された「第1回どうなん王将戦in 今金』で審判長を務めた。その模様が本日、UHBテレビ(北海道文化)の『みんなのテレビ』で18時30分ごろから放映される予定だ)
 

__kifu_for_windows_pro_v6_64_11___2 図は△2七桂と打った局面。1九の香を取って、△5三角から△1七角成を狙って、後手ペースだといわれていた手だ。

Dsc_0576 (図の△2七桂を着手する渡辺竜王の手を映し出すモニター)

Dsc_0575_2(トレードマークの大きな扇子を広げて盤面を見る丸山九段)
 
 

二上達也九段は2001年に函館市栄誉賞を受賞しています。「北海の美剣士」「寄せの二上」と呼ばれ、スピーディーな指し回しが大きな持ち味でした。 竜王戦の前身である九段戦、十段戦で大山康晴十五世名人に何度も挑戦しましたが、いずれも厚い壁に阻まれています。 
逝去したのは、先月の1日。今月19日にお別れの会が東京で開かれます。

【九段戦(全日本選手権戦)・十段戦】http://www.shogi.or.jp/match/finished/10_9.html
【訃報 二上達也九段】 http://www.shogi.or.jp/news/2016/11/post_1461.html
【「二上達也九段お別れの会」のお知らせ】http://www.shogi.or.jp/news/2016/11/post_1471.html


二上九段の竜王戦の勝局を紹介します。1989年の竜王戦1組出場者決定戦、相手は当時、若手の中村修七段(現九段)です。

20161202ahutagaminakamur27二上九段は自著『棋士』(晶文社、2004年)で、自身の棋風を次のように述べています。「塚田さん」は、塚田正夫名誉十段のことです。

「短手数で終局することの多い私の棋風が、塚田さんと、塚田さんの師匠で函館出身の花田長太郎九段とを足して二で割ったようだと、ほかならぬ塚田さんから聞かされたこともあった。指し将棋の高段者でありながら、詰将棋作家という共通点のあることも親近感を増した」。

二上九段は終盤の切り合いを好みました。一手違いの勝負になりやすい、相掛かりの腰掛け銀は得意戦法だったのです。

戦いを起こしたのは中村修七段。しかし、二上九段は手に乗ってうまく反撃します。△6二金にどう指すか。

20161202ahutagaminakamura70実戦は▲2四歩△同歩▲4五歩△5五銀▲2四飛と進みました。

20161202ahutagaminakamura75_2▲2四飛に△2三歩は、▲3三歩成があります。以下△同金は▲5四飛△同歩に▲7五角の王手飛車、△同玉は▲5四飛△同歩に▲5一角の王手金取りです。

中村修七段は△7六馬と逃げましたが、▲6七銀△2三歩に▲7三歩成も強い踏み込みでした。

20161202ahutagaminakamura79△7三同桂は▲3三歩成が王手飛車。実戦は△2四歩と飛車を取りましたが、▲6二とが詰めろです。以下△8五馬▲7四歩(詰めろ)△2三金に▲7七桂△7四馬▲同角から駒を補充し、勢いのある指し回しで勝利を収めています。

20161202ahutagaminakamuratryou

開始日時:1989/04/13 10:00:00
終了日時:1989/04/13 22:00:00
棋戦:竜王戦
持ち時間:各5時間
先手:二上達也九段
後手:中村修七段

▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩 
▲7八金    △3二金 ▲2四歩    △同 歩 
▲同 飛    △2三歩    ▲2六飛    △6二銀
▲3八銀    △6四歩    ▲4六歩    △6三銀 
▲4七銀    △8六歩 ▲同 歩    △同 飛 
▲8七歩    △8四飛    ▲5六銀    △1四歩
▲1六歩    △5四銀    ▲7六歩    △3四歩 
▲4八金    △4二玉 ▲3六歩    △5二金 
▲3七桂    △9四歩    ▲9六歩    △7四歩
▲5八玉    △7五歩    ▲同 歩    △6五銀  
▲同 銀    △同 歩 ▲2五飛    △3五歩 
▲同 飛    △6六歩    ▲同 角    △同 角
▲同 歩    △4四銀    ▲2五飛    △3五歩 
▲2六飛    △3六歩 ▲同 飛    △2七角
▲3四飛    △3三金    ▲3六角    △同角成
▲同 飛    △2七角    ▲4七角    △3五歩 
▲2六飛    △5四角成 ▲3四歩    △3二金 
▲7四歩    △6二金    ▲2四歩    △同 歩
▲4五歩    △5五銀    ▲2四飛    △7六馬
▲6七銀    △2三歩 ▲7三歩成  △2四歩
▲6二と    △8五馬    ▲7四歩    △2三金
▲7七桂    △7四馬    ▲同 角    △同 飛
▲2二歩    △3六角 ▲4七金打  △同角成 
▲同 金    △2八飛    ▲6九玉    △6六銀
▲2一歩成  △3四飛    ▲5一角    △3二玉 
▲3一と    △同 玉 ▲3三歩    △2二玉 
▲3二銀    △3三金    ▲同角成    △同 飛
▲3四桂    △1二玉    ▲2二金
まで111手で先手の勝ち