2010年12月15日の記事
東京・将棋会館の大盤解説会による、最終盤の解説
将棋会館の大盤解説会で調べられていた一変化を紹介します。
図は142手目△6七歩の局面。実戦は羽生名人が▲4四銀打としましたが、大盤解説会では▲4一馬△2四玉を利かしてから▲4四銀打の変化を調べていました。ところが、この手順は△4四同金と取られ、▲同銀△6八歩成▲同銀△同と▲同玉△5七銀(参考1図)
▲同玉△4六角▲6七玉△5八銀▲5六玉△4七銀不成▲6五玉△7三桂(参考2図)
▲7四玉△8四金▲同玉△8一香▲8三銀△同香▲同玉△9三金▲7四玉△8三銀▲7五玉△8四金(参考3図)
と進んで、先手玉が詰んでしまいます。実戦は羽生名人が単に▲4四銀打と迫りましたが、渡辺竜王は後手玉が詰めろではないことを見切り、△6六角と出て先手玉を受けなしにして勝ちを決めました。森内九段は「(110手目の)△2三玉が冷静でした」と述べていました。
(銀杏)
感想戦(羽生名人)
感想戦(渡辺竜王)
野月七段の総括
序盤は渡辺竜王が角換わり腰掛け銀の同型ではなく、従来は後手がやや苦しいという形で工夫を見せました。そこから互いに手待ちを重ねて、先手が仕掛けのタイミングに苦慮する展開となっていきました。中盤は先手が積極的に動いて、互いに角を手放した局面は互角だったと思います。83手目に▲1五歩と本格的な開戦となりましたが、88手目の△4六歩(図)が機敏で、後手が主導権を握ったと思います。先手は91手目▲8三銀と右辺 から手を作り、局面を優位に導こうとしました。そこから後手は自陣の玉の周辺で、力強い応手を見せ、厚みを気づいたのですが、その辺りはやや後手が指せる局面だったと思います。終盤戦は104手目の△4七歩成(図)を境に、激戦が繰り広げられました。先手も5一に馬を作って激しく追い込みましたが、後手玉は空間が広く、つかみどころのない陣形で先手の攻めを凌ぎました。一方の先手陣は、玉の狭さが最後まで祟ってしまったように感じました。一手一手の意味が非常に難しく、熱のこもった将棋だったと思います。最後まで予断を許さない、緊張感のあふれる一局だったと思います。
(吟)