2010年12月15日 (水)

野月七段の総括

Ryuou2010121488_5 野月七段の総括

序盤は渡辺竜王が角換わり腰掛け銀の同型ではなく、従来は後手がやや苦しいという形で工夫を見せました。そこから互いに手待ちを重ねて、先手が仕掛けのタイミングに苦慮する展開となっていきました。中盤は先手が積極的に動いて、互いに角を手放した局面は互角だったと思います。83手目に▲1五歩と本格的な開戦となりましたが、88手目の△4六歩(図)が機敏で、後手が主導権を握ったと思います。先手は91手目▲8三銀と右辺Ryuou20101214104_7 から手を作り、局面を優位に導こうとしました。そこから後手は自陣の玉の周辺で、力強い応手を見せ、厚みを気づいたのですが、その辺りはやや後手が指せる局面だったと思います。終盤戦は104手目の△4七歩成(図)を境に、激戦が繰り広げられました。先手も5一に馬を作って激しく追い込みましたが、後手玉は空間が広く、つかみどころのない陣形で先手の攻めを凌ぎました。一方の先手陣は、玉の狭さが最後まで祟ってしまったように感じました。一手一手の意味が非常に難しく、熱のこもった将棋だったと思います。最後まで予断を許さない、緊張感のあふれる一局だったと思います。

(吟)