【日浦市郎七段】本局は渡辺竜王の完勝でした。森内九段としては実力が発揮できずに終わってしまいました。この将棋で一番印象に残ったのは48手目△2二角(日浦図)でした。僕はこの手を指されるまでまったく気づきませんでした。一歩間違えば単なる壁駒になりかねないこの角打ちに森内九段としては本局の命運を懸けたのですが、結果的にはうまくいきませんでした。ただ、この角打ちに代わる手も難しい。△6五銀とぶつける手も考えられましたが、▲同銀△同歩▲7三角△8一飛▲7二銀△4一飛▲8四角成という手がある。もしかするとその局面で渡辺竜王の研究範囲だったかもしれないと思います。今期の竜王戦は全体を通して渡辺竜王の充実振りが目立ったシリーズでした。近いうちに竜王以外のタイトルも取るような気がします。
【佐藤和俊五段】
本局は渡辺竜王の快勝となりました。私が一番印象に残った手は49手目の▲9六香(佐藤図)です。指されてみればこの局面では普通の手ですが私は▲7四歩が第一感だったので非常に落ち着いた一手に感じました。 45手目の前例を離れた▲7五同歩も堂々とした手ですが、その後▲9六香、▲7四歩、▲7三歩成と指したい手を全部指して勝ってしまったという一局でとても強い勝ち方だと思います。森内九段にとっては力の出ない将棋になってしまいましたが、初日が終わったところでやや先手が厚いと私は見ていたのでひょっとしたら将棋の作り自体があまり良くなかったのかもしれません。このカードが4局で終わるのはちょっと信じられませんがそれだけに渡辺竜王の強さと充実ぶりが際立ったシリーズだったと思います。
【澤田真吾四段】私が印象に残った手は45手目の▲7五同歩(澤田図)です。前例では▲6六角と打ちましたし、実際私は▲6六角と打つのではないかと思っていました。この▲7五同歩は相手に有効な攻めがないのを見越した好手だったと思います。
一局を通してですが、42手目の△9五歩以降、森内九段の攻めは細く、渡辺竜王の方が若干良かったのではないかと思います。
(桜木)
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