2008年10月の記事

2008年10月29日 (水)

対局者の食事メニュー表は以下のようになっています。

【朝食】

和定食(おまかせ)

洋定食 パン、肉料理(ハムorベーコンorソーセージ)、卵料理(スクランブルエッグor目玉焼きorゆで卵)、飲み物(オレンジジュースorトマトジュースorアップルジュースor牛乳orコーヒーor紅茶)

【昼食】

食事は以下から選択。

・平取産和牛ステーキ御膳 ・噴火湾海鮮バター焼き御膳 ・伊達産地鶏すき焼き御膳

・幕の内弁当 ・お刺身定食 ・鮭いくら丼 ・カツ丼 ・エビフライカレー ・冷そば又はうどん

飲み物はオレンジジュースorコーラorウーロン茶or緑茶or紅茶orコーヒー

【おやつ】

おやつは以下から選択。

・苺のショートケーキ ・チョコレートケーキ ・チーズケーキ ・シュークリーム ・アップルパイ

飲み物はオレンジジュースorコーラorウーロン茶or緑茶or紅茶orコーヒー

(烏@洞爺湖)

2008_003 関係者一行は16時頃に、対局場となる北海道「洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス」に到着しました。

検分は17時から行われます。(烏@洞爺湖)

2008年10月20日 (月)

 午後4時45分、終局間近との情報で、私は対局室に入った。そして午後6時15分の終局まで、あまりの緊迫感に嘔吐を催したために10分だけ控え室に戻ったが、それ以外はずっと両対局者を見つめていた。

 「負けました」

 渡辺竜王が投了する前の数手、「△6七銀で勝利を確信した」と対局後に語った羽生名人のそれから三手の指し手は、最後までふるえることはなかった。

 ずっとリアルタイムでお伝えしてきたように、控え室では「かなりの名局だ」と感動が渦巻いていた。にもかかわらず、感想戦での渡辺竜王は、「ぜんぜんダメな将棋だった」と反省ばかりを繰り返したのだ。

 それに私は驚愕した。羽生名人は、渡辺をいたわるような雰囲気を醸し出し「そんなことはないでしょ、こうやったらどうだった?」といった発言を、感想戦が終わるまで繰り返した。

 厳しい勝負を終えたわずか数分後に、羽生は「やさしい先輩」という雰囲気になった。

 

 一言で言えば、渡辺竜王は、

 「(12) 佐藤康光棋王、現代将棋を語る」の中で、佐藤棋王が言っていた感想

 『「いや、△6四角そのものよりも、△6六歩と取り込んで、△6七歩成って、それで△6九角のところ、ですかね。それが間に合うって感覚はちょっとないですね。それが感心するところです。(中略) でも、『(6七歩を)成って角(6九角)で大変』という感覚は、ちょっと持ち合わせてる人は少ないような気がします。」』

 と、ほぼ同じ主旨の感想を述べた。勢いよく▲2三角と打った渡辺の攻めに対する羽生の構想が、渡辺にはまったく思いもよらないものだったらしいのだ。

 『本譜の展開は意外でした。予想外で困りました。△6四角を打たれて、あまりにも手がないので唖然としました。なんかあると思ったんですけど、ここで手がない。弱りましたね。大局観が悪かったです。金打って(▲4三金)、角打たれて(△6四角)、何かあるだろうと思ったのに……。打たれてみて読んでみて、何もないんじゃひどいですね。打たれて困っているようじゃダメですね。ちゃんと読んでから指さなくちゃね。△6七歩成のときにもう悪いっていうのは、そのとき気づいていないんですよ。そこで気づいているくらいなら▲2三角なんて打たなかったわけだけど。▲2三角からの攻めに対してどういう攻め合いになるんだろうな、と思っていたんですよ。でも、6七歩を成って角(6九角)から徹底的に受けにまわられて全然ダメだなんて、考えもしなかったんですよ。』

 渡辺の切れ切れの発言をまとめるとこうなる。そして、感想戦の最後にさらにもう一度、渡辺は

 『でも何回指しても、角打っちゃう(▲2三角)なあ。』

 とつぶやいた。

 立会人の米長会長は「二枚がえになって飛車が成ればふつうはいいのにねえ」と羽生に問うたが、羽生は「ふつうはそうですけどね……」と答えた。

 

 総括すれば、この将棋は、渡辺竜王が「二枚がえに成功してさらに飛車を成り込む」という望外の展開になったはずだったのに、「その展開で、必ずしも先手有利とは言えない」という大局観を持っていたのが、羽生名人ただ一人だった、ということなのだ。

 羽生は本局にのぞんで「パリらしく芸術ともいえる将棋を指したい」と抱負を述べたが、本局は、まさに羽生一人が作り上げた芸術だったと言えるのかもしれない。

 

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 さざ波のように襲う変化手順の検討を進める中、渡辺竜王が89手目、▲67金と指した。検討陣一同、「これは詰みですね。」

 羽生名人の手が盤上に伸び、△88金と指す。▲同玉△78金。ここまで、激闘を続けてきた両雄の頭が盤上に被る。終局の合図だ。パリでの激闘を制したのは、挑戦者である羽生善治名人。初戦を白星で飾った。

 終局後、両者疲労困憊の様相。これが、パリの激闘を何よりも如実に物語っている。25dsc_0255_2 26dsc_0255_2 27dsc_0255

24dsc_0255  超難解な終盤戦、これぞまさしく将棋界を代表する頭脳同士の闘い。そして超絶技巧の応酬。芸術の都パリに相応しい二人が織り成すこの将棋、この勝負。これを芸術と云わずして何と言おう。

 しかしながら、控え室検討陣は、この局面で、再び苛まれている。果たしてどっちが勝っているのか?優勢なのか?激しい意見の応酬がこちら側で交わされている。

4_2  81手目、▲7七同桂と渡辺竜王が指したところで、羽生名人の手がピタリと止まる。この数手、両者ノータイムで指していたが、果たしてどうなのだろうか?米長会長の解説によると、▲7七同桂の局面での千日手の筋があるとのこと。
 「△8八歩に▲同金△7九銀。この局面は後手の持ち駒が金二枚だが、もし金銀ならば△8八銀成▲同玉△7九銀▲同玉△5七馬で先手玉が詰むので、以下▲6三歩△同金▲5二銀(右変化図1)と後手玉に詰めろをかけていく。41_3
 そこで後手は危険なので△6二金打とはじくが、▲6三銀成△同金で、こんどは駒が入れ替わったので先手玉が詰めろ。よって▲8九金打として△8八銀成▲同金△7九銀。▲5二銀(再び変化図)とせまって△6二金と打って・・・という千日手になる可能性もある。」
 つまり循環手順は、変化図から△6二金打▲6三銀成△同金▲8九金打△8八銀成▲同金△7九銀▲5二銀の八手一組。「こんな筋は見たことがない」と一同。