対局者退場後、棋士紹介と見どころ紹介が行われました。
(左から室田伊緒女流二段、竹内貴浩指導棋士四段、荒田敏史三段、村田顕弘五段、澤田真吾六段、飯島栄治七段、石田和九段)
石田和九段 棋聖戦第2局なんですけども、「常勝」羽生さんも今回はカド番という気持ちで臨むと思いますよ。相手が4戦して1番も勝てない永瀬さんということで、今日はいつになく厳しい表情でした。戦型は……現役の人に任せたいと思います。じゃあ飯島さん、よろしく。
飯島七段 明日の対局が非常に重要なんです。羽生棋聖が負けて残り3連勝しないといけないとなると、防衛はかなり厳しいと思っています。今回は第1局から日にちが開いていますから、充電というか、調子を戻してくると思っています。明日の一局が非常に重要で、明日でほとんど決まると思っています。戦型は……(会場から「引き角!」の声)引き角にはならないですね。私は引き角になってほしいんですが。横歩取りの可能性はあると思います。あとは矢倉ですかね。立会人の立場として、お二人とも名局を指していただいて、明日の大盤解説会にたくさんの方が来ていただけるように祈っています。
青野九段 羽生さんは19歳でタイトルをとってから、1回も「今年は不調だな」というのがない人なんですね。これは非常に珍しい。名人戦は第2局で詰みを逃して、そこからガタガタと3連敗したわけですが、人間だなと思ったんですね。でもそういうことが長く続かないのが羽生さんです。この棋聖戦で立ち直れるか、永瀬さんに一気に持っていかれるか、そこがいちばんの見どころですね。羽生さんは45歳、永瀬さんは23歳で年が2回り違う。これは大山(大山康晴永世棋聖)-中原(中原誠永世棋聖)、中原-羽生の関係とだいたい同じで、自分がさんざんやられたことがないわけですから、あんまり怖くない。これはひとつの強さです。明日の対局は羽生さんが今年どうなるかを占う、非常に重要な一局になると思います。
(書き起こし=文、写真=紋蛇)
対局者による決意表明です。
(挑戦者・永瀬六段)
皆さんこんばんは。棋士の永瀬拓矢です。今日は来ていただきましてありがとうございます。ホテルフォレスタに来るのは棋士になってからのひとつの目標でしたので、今回はとても楽しみにしておりました。明日の対局のお昼なんですが、いろいろおいしいものがあるとホームページに書いてありまして、何を食べようかといまも考えておりまして、決断しなければいけないなと思っております。明日の対局なのですが、羽生先生に教われるということで、一生懸命指して、しがみついていきたいと思います。できることは限られていると感じてはいるんですけども、いい将棋を指すことがいま自分ができる限界だと感じておりますので、それを頑張りたいと思っております。産経新聞社さま、ホテルフォレスタさま、トヨタ自動車さま、豊田共栄サービスさま、厚く御礼申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
(羽生棋聖)
皆さま改めましてこんばんは。第87期棋聖戦五番勝負第2局の前夜祭をこのように盛大に開催していただきまして、誠にありがとうございます。棋聖戦の対局は2年ぶりということで、開催にあたりましてご尽力を賜りました皆さまに厚く御礼を申し上げます。こちらはいままで数多くの対局が行われてきたわけですけれども、非常に自然があふれていて、将棋の対局をするには素晴らしい会場だなと思っています。明日は子どもの大会も開催していただけると聞いています。将棋は小さいお子さまから年配の方まで、幅広い世代の方が楽しめるものだと思っています。こども大会に負けないように、棋聖戦の対局を盛り上げていければいいなと思っています。気候としては梅雨に入ったということらしいんですけども、今日は夏のような暑さで、私自身も熱い気持ちを持って、明日からの対局に臨みたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
(乾杯の挨拶・トヨタ自動車株式会社総務部部長・財津裕真)
ただいま紹介に預かりました。トヨタ自動車総務部の財津でございます。市長からのご挨拶にもありましたけれども、2年ぶりにここ豊田で棋聖戦をやらせていただくことになりました。私自身、うれしい気持ちとほっとした気持ちでございます。2年前までトヨタ自動車が10年間スポンサーという形でやらせていただいて、今年から豊田市、豊田市文化振興財団さんといった公的な機関が中心になって、そこに民間企業のトヨタが、協賛という形でお手伝いさせていただく形になって、永続する体制になりました。これで来年以降もずっと棋聖戦が行っていけるかなと思います。
18時、ホテルフォレスタで前夜祭が行われました。
(主催者挨拶・産経新聞社東京本社文化部長・小川記代子)
棋聖戦が2年ぶりにここ豊田に戻ってきました。ホテルフォレスタさん、素晴らしい対局場をご用意していただきましてありがとうございます。豊田市はすごく将棋に力を入れてくれていまして、明日はお子さんたちがたくさん来る将棋フェスティバルを開いてくださる。この素晴らしい環境で、お子さんがたくさんいる中で、トップの2人が対局しているのは理想郷のような光景だなと思います。羽生棋聖に対する挑戦者の永瀬六段は若く、この五番勝負は大いに注目されています。明日は皆さんと一緒に楽しみたいと思います。
(主催者挨拶・日本将棋連盟専務理事・青野照市九段)
日本将棋連盟専務理事の青野でございます。ここ豊田に2年ぶりに棋聖戦が帰ってきました。集まっていただいた皆さまに感謝いたします。日本将棋連盟としては、地方のファンの方にタイトル戦を見ていただきたい、お子さんに本物の棋士を見ていただきたい、という思いでやっております。明日もたくさんのお子さんに来ていただいて、いい日だったと感動を与えられればと思っております。棋聖戦は第87期を迎えまして、いちばん数多いタイトル戦でございます。第2局はずっとトヨタ自動車さんにお世話になってまして、私も何回来たかわからないくらい来ております。永瀬さんは羽生さんに負けていないんですが、羽生さんもタイトル戦では、初登場の人には負けたことがない。負けたことがない人同士でどうなるかというのも、ひとつの興味かなと思います。思えば羽生さんも19歳で竜王をとってタイトル保持者になりましたから、23歳の永瀬さんが出てきてもおかしくない、むしろ昔は自分が、「若くて強いのが出てきて嫌だな」と思われたわけです。明日は素晴らしい対局になるだろうと思います。地元の石田九段や、若手の素晴らしい棋士がいますから、面白い解説ができると思いますので、ひとりでも多くの人に来ていただければと思います。
(地元代表挨拶・豊田市長・太田稔彦)
ご紹介いただきました豊田市長の大田でございます。先ほどもありましたが、ここ豊田での棋聖戦開催は2年ぶりです。おととしまで10年、ホテルフォレスタで棋聖戦のタイトル戦をやらせていただいていたんですが、1年ちょっと間を開けて思ったことは、トヨタ自動車さんにばかりおいしいところを持っていってもらっては困るなということです。今回から、豊田市は文化振興財団も地元も一緒になって、市民総出で受け入れ態勢を整えて、新たにタイトル戦をやらせていただく、そういう取り組みに変えさせていただいています。今後ともよろしくお願いいたします。ちょっと宣伝になりますが、明日は夜、豊田スタジアムで日本代表とスコットランド代表のラグビーの試合がございます。昨年のイングランド大会、予選で唯一負けたチームスコットランド代表です。また豊田市美術館ではデトロイト美術館展が開催中で、日本で初めて公開される作品が15点含まれております。明日の対局はもちろん、とよたふれあい将棋フェスティバルは子どもたちにとって貴重なふれあいの機会になりますし、スポーツもあります、美術もあります。とてもにぎやかで、素敵な一日になると思います。
(書き起こし=文、写真=紋蛇)