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2024年7月 1日 (月)

終局直後インタビュー

Img_9867(棋聖位5連覇で永世称号を獲得した藤井聡太棋聖)
□藤井棋聖のインタビュー
――▲5六銀から▲6六歩、▲6五歩(27手目から31手目)と進んだ序盤の進行について。
手が広い局面でした。まずは7三の銀を活用できるかが、こちらにとって最初のポイントだと思っていました。
――△4四角(52手目)は、どのような考えで打たれたか。
馬を作られるのが価値が高く、動いていかなければいけない形かと思って、本譜の進行でどうかなと思っていました。
――終盤、勝勢と判断したのは。
△2四玉(92手目)まで逃げ出せて、玉の安全がひとまず確保できたのかなと。
――一局を振り返って。
△2二銀(26手目)と上がったのですが、戦いになるとあまりよくない形なので、そのあたりの判断が難しいと思いながら指していました。
――5連破を達成して、永世称号最年少での資格を得た。
初めてタイトルを取ることができた棋戦でもありますし、思い出も多いので棋聖戦で永世称号を取れたのはうれしく思います。
――永世称号を獲得し、歴代の偉大なる棋士に名を連ねた。
もちろん光栄なことで、同時に今後の活躍が問われるのかなと思います。

Img_9870(敗れた山崎隆之八段)
■山崎八段のインタビュー

――序盤の立ち回り、作戦について。
力戦的な形で動きましたが、いちばん嫌な順を指されました。苦しかなと思っていましたが、どうやって自分なりに難しいと思う順を模索して戦いました。しかし、さすがの指し回しで、チャンスが回ってこなかったという印象です。

――序盤の▲5六銀について。
代えて▲3七桂と跳ねるのが推奨されているのは調べていたのですが、▲5六銀はうまくいけば主導権を取りやすいので、やってみたい作戦でした。ただ、本譜のように居玉で動かれるのが最も嫌でした。

――△4四角と打たれたあたりの局面について。
△7七歩に▲8八金で頑張れるかと思っていたのですが、読み負けてしまっていました。ほかに代わる手も難しかったように思いますし、それは実力なので仕方がないです。△4四角からの攻めは、予想以上に厳しかったです。

――今シリーズを振り返って。
1、2局目は慎重になり過ぎて、やりたい手を指せず差が開いて負けました。3局目は自分なりのベストを尽くそうと思っていました。自分なりに集中して踏ん張って指しましたが、力戦の将棋で読み負けていて完敗でした。

――15年ぶりのタイトル戦を終えた、いまの心境は。
タイトル戦に出られることは幸せなことで、3局を通して素晴らしい対局場で指させていただいて、ありがたいと感謝しています。藤井棋聖と3局指してもっと強くなっておいて、挑戦したかったです。もっと強ければ、楽しさはもっと無限にあっただろうなと感じます。改めてそういう気持ちにさせていただいたタイトル戦でした。
Img_9872(多くの報道陣が詰めかけた)

(武蔵)

藤井棋聖が防衛、5連覇で永世棋聖の資格を獲得

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藤井棋聖が山崎八段に勝ちました。終局時刻は18時46分。消費時間は▲山崎八段3時間59分、△藤井棋聖3時間48分。五番勝負は藤井棋聖が3勝0敗で防衛を果たしました。5連覇を達成するとともに永世棋聖の資格を獲得。21歳11ヵ月での永世称号資格獲得となり、これまでの最年少記録を更新しました。

(文)

決め手か

2024070186藤井棋聖は少考で△7三金とただの地点に金を打ちました。しかし、▲同竜には△5五角の王手竜取りを用意しています。▲8二竜と逃げられても自玉の詰めろにはなっておらず、金が先手玉の上部を押さえる駒として働きます。控室では「からい」との声が聞かれ、最短での勝ちを目指した一着との評判です。

(武蔵)

勝負手

2024070169△6五歩の銀取りに対して、▲同銀では△5五角が痛打です。山崎八段は▲6四桂の勝負手で攻めに転じます。攻め合いに活路を見いだせるでしょうか。
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(武蔵)

後手指しやすい

2024070162上図△8二銀は大駒の両取りで、厳しい一打となりました。検討では、後手が指しやすいと見られています。
Img_9858(佐々木大七段と藤本五段が登壇。会場は大きな拍手に包まれた)
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Img_9865(藤本五段は緊張もあったか、ゆっくりと声を発していた)

(武蔵)

永世称号

「永世」称号は各棋戦によって、獲得の条件が変わります。棋聖位は通算5期の獲得でその資格を得られます。過去には大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、米長邦雄永世棋聖、羽生善治九段、佐藤康光九段の5名のみです。
永世称号獲得の最年少記録は、中原十六世名人の23歳11か月です。藤井棋聖が今シリーズを制して防衛を決めると、最年少記録の更新となります。本棋戦でタイトル挑戦、獲得、防衛の最年少記録を更新した藤井棋聖は、新たに記録を塗り替えるのでしょうか。

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(武蔵)

手筋の一打

2024070158上図△7七歩は、玉、金、銀、桂の焦点に放つ「焦点の歩」の手筋です。検討では「この歩の対応が難しいのではないか」との評判です。▲7七同玉は△7三飛が王手角取り。玉以外の対応は脱出口が塞がって、△2六角と逆サイドから攻められて都合が悪そうです。
山崎八段は、この局面で残り時間が30分を切りました。時間も懸念材料といえそうです。
Img_9847(大盤解説会場には、澤田七段と佐々木海法女流初段が登壇した。どちらも山崎八段と同門)
Img_9851(佐々木女流初段は、本局を勉強する傍らで、観光も楽しんだという)

(武蔵)

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