屋敷九段と勝又六段が明日の対局について話しました。
(屋敷九段は棋聖を3期獲得している)
屋敷「壮大な前夜祭ですよね。ちょっとした披露宴のような感じ。羽生さんと斎藤さんはお色直しでしたっけ。もちろん、退室されたので戻ってこないですよね」
藤田「ここまでの2局を見ていかがでしたか」
屋敷「2局ともいい勝負でしたが、羽生棋聖の懐の深さが出ています。巧みに斎藤七段の鋭さを封じ込めています。いずれも相居飛車で、急戦の速い展開でなく、昭和のゆっくりした将棋です。羽生棋聖がうまく戦っているように感じます。内容はいい勝負ですが、最後が届いていません。そこがいけるか正念場です」
藤田「斎藤七段はあとがないですね」
屋敷「でもファンの数では負けていなかったですね。羽生棋聖は大スターだから当然ですけど、斎藤七段は若くてイケメンで」
藤田「初挑戦でも緊張した様子はありませんね。
屋敷「大舞台でも堂々としていて楽しみですね」
(屋敷九段は棋聖戦で、タイトル挑戦・獲得・防衛の最年少記録を達成した)
藤田「屋敷九段といえば、棋聖戦でタイトルを取りました」
屋敷「藤井聡太四段のおかげで、最年少タイトル獲得が注目されるようになりました。もう27年前ですか。知らない方も多いと思います。私のときは緊張しましたよ。中原先生に貫録あってオーラがとてつもなかったですね。当時に第一人者と戦えたのは大きかったですね」
藤田「戦型はいかがでしょうか」
屋敷「謎ですね。おそらく居飛車戦です。矢倉か角換わりか、後手の横歩取りもあるでしょうね。
終盤の競り合いが見どころです。斎藤七段がペースをつかみながら、なかなか届かないですね」
(屋敷九段に続いて勝又六段が登壇)
勝又「毎年こちらに呼んでもらい、設営なんかで協力しています。羽生棋聖はいうまでもありませんが、斎藤七段の人気もすごかったですね。とにかく対局姿がかっこいいですよね。私は挑戦者決定戦の斎藤-糸谷哲郎八段戦の観戦記担当だったんです。1日斎藤くんの顔を見られるんです。ただ、プロ棋士の対局中の顔は怖いじゃないですか。普段はにこやかな羽生さんだって怖いです。もちろん斎藤くんも怖いけど、色っぽいんですよ。動作がしなやかで歌舞伎のようです」
勝又「師匠の畠山鎮七段は『うちの斎藤は勝負弱い』とよくいっていましたね。性格がよすぎる、鬼になりきれないと。でも、順位戦はB級1組まで上がって、同世代をごぼう抜き。急速に力をつけました。性格のよさはそのままにこれだけ急に上がってくるとは。隙が無いでしょ」
藤田「斎藤七段は詰将棋が好きですよね」
勝又「詰将棋を愛しているといっています。藤井聡太四段の前に斎藤くんは詰将棋解答選手権で2連覇したことがあるんです。詰将棋は解けないと悔しいからやってられないこともあるんですよ。それを我慢してやる。地道な努力が実を結んでいるんだと思います」
藤田「最近の将棋はどうでしょう」
勝又「ものすごく強い。昨日、B級1組で木村一基九段と対戦したんです。斎藤くんがよかったけど、ねじり合いになって、逆転しそうになった。そこで踏みとどまって勝ったんだからすごい。だけど、それ以上の棋聖がいるので、そこに勝てるかどうか。羽生棋聖は棋聖戦で豊島将之八段、中村太地六段、永瀬拓矢六段とスターをたたいてきました」
勝又「斎藤七段は正念場ですね。明日は相居飛車になると思います。とはいっても、この1年半くらいで戦術が大きく変わりました。始まってからの楽しみですね。一方的にはならないと思います」
(書き起こし=銀杏、写真=牛蒡)
対局者にインタビューが行われました。
このあと、対局者は明日に向けて英気を養うため、自室に戻っています。
藤田「今回が5回目の沼津対局となりますが、印象はいかがですか」
羽生「対局場が和風の建築物で庭もきれいです。景色が印象的です。私もいろんなところにいっていますが、着席式でこれだけの人がいるのは、ほかにないかもしれません」
藤田「結婚式のようですよね。最近の将棋界は藤井聡太四段をはじめいろいろな話題で盛り上がっています」
羽生「知らない人にも影響がありますね。最近、藤井さんはどうですか、と聞かれることがあります」
藤田「明日の昼食は何にしましたか」
羽生「明日のメニューは決めましたが、秘密です。おいしいものを頼みました」
藤田「最後にメッセージをお願いします」
羽生「明日は大盤解説会が開かれますので、楽しんでいただけるよう頑張ります」
藤田「女性ファンの方に囲まれていましたね」
斎藤「これだけ多くの方がこられた前夜祭は初めてです」
藤田「対局場の印象はいかがですか」
斎藤「着いてから景色に圧倒されました。いい環境で、対局が楽しみです。自分としては心地よかったですね」
藤田「斎藤七段だけでなく、菅井竜也七段も王位戦挑戦など関西の棋士の活躍が目立ちます」
斎藤「彼が勝っているから負けたくないというように刺激がプラスになっていると思います。みんな意識的にプラスにしていますね。互いに話すことは少なくても、そこから感じ取って、一緒に戦っています。ライバルでもあり、友人でもあり、仲間でもあります」
藤田「料理を作ることがあるそうですね」
斎藤「ひとり暮らしなので、必要に迫られてです」
藤田「最近ハマっている料理は」
斎藤「一品料理のようなお酒のアテみたいなものを作ることがありますね」
藤田「最後にメッセージをお願いします」
斎藤「楽しい前夜祭を過ごさせていただきました。明日はお時間がありましたら、大盤解説会にお越しいただけたらと思います。将棋はもちろんですけど、対局姿などを見ていただいて、何か感じるものを伝えられるように精いっぱい頑張りたいと思います」
(書き起こし=銀杏、写真=牛蒡)
(花束贈呈。渡すタイミングがなかなかつかめず、対局者から手を差し伸べる)
(青野九段が乾杯のあいさつをした)
棋聖戦は第88期ということで、期数はいちばん多いです。棋聖戦はドラマがある棋戦です。今回の立会人を務める屋敷伸之九段は17歳で棋聖挑戦、18歳で棋聖を獲得しました。中原誠十六世名人も初タイトルが棋聖でした。スターが誕生しやすい棋戦といえるでしょう。
藤井聡太四段の話題が多く、将棋に触れる子どもが増えたといわれています。それは子どもに将棋を覚えさせたいと思っているお母さんが増えたということでもあります。
斎藤七段は5年目ですが、順位戦は早くもB級1組です。昨日の対局も勝って意気揚々としています。若い女性ファンも多いです。これまで2局は遠慮した感じでしたが、もうあとがありませんので力を発揮するのではないかと思います。
対局場の沼津倶楽部は、これまで私が見てきた中でもトップクラスの対局場です。
(以上、青野九段)
(ファンと会話を交わしながら記念撮影に応じる。羽生棋聖の人気は相変わらず)
(斎藤七段も人気が高く、ファンや地元の方と交流を深めていた)
(斎藤七段が前菜にナイフを入れたのは、乾杯から45分後のことだった)
対局者の決意表明です。
(羽生棋聖)
棋聖戦の番勝負で沼津を訪れるのは、今年で5年連続になります。
いつも盛大な会を開催してくださりありがとうございます。今回は満員御礼の垂れ幕が出るのでは、というくらい多くの方がきてくださり、うれしく思います。棋聖戦は各地を転戦しますが、地元の方の心温まる歓迎をうれしく感じています。
斎藤七段との対戦ですが、強くて研究熱心な若手棋士と顔を合わせる機会が増えました。明日は朝から指導対局のイベントや大盤解説が行われると聞いています。ファンの皆さんに喜んでもられる将棋を指したいと思います。
棋聖戦の沼津対局は実行委員長の林さんがいつも元気でパワフルで、そういう力で活性化していくと感じますし、将棋が交流を深めるツールであると感じています。明日は一生懸命頑張ります。よろしくお願いします。
(以上、羽生棋聖の決意表明)
(斎藤七段)
沼津にくるのは初めてになります。沼津について少し調べようと思っていましたが、林さんがバスの中で、予定の倍以上話してくださり、魅力を伝えてくださいました。
夏は涼しく、冬は暖かいところとのことで、とてもいいところではと思いました。梅雨で蒸し暑いですが、話を聞いてから散歩すると、海風があり、対局場は松原が広がっているためか涼しい風を感じ、さわやかな気持ちでした。
明日は厳しい戦いが予想されますが、この状況だからこそ迷いなく決断よく指せるように思います。それは前夜祭の明るい雰囲気も影響をしているような気がします。
(以上、斎藤七段の決意表明)
18時から3時間の予定で前夜祭が開催されました。会場は市内の「沼津リバーサイドホテル」です。
例年盛会となる沼津対局の前夜祭ですが、今期は過去最多の360人が出席しました。
(前夜祭は立食形式が多いが、沼津対局は参加者全員に席が用意される)
(主催者あいさつ 堀晃和・産経新聞社東京本社文化部長)
これだけ盛大な前夜祭は経験がありません。沼津では5年連続で開かれています。
藤井聡太四段の活躍などで、将棋はいまだかつてないブームがきているようです。
将棋のルールを知らない妻が、藤井四段や順位戦の話などをしてきましたから。
今回は羽生棋聖と斎藤七段の争い。屈指の対局が期待されます。
(以上、堀文化部長のあいさつ)
(主催者あいさつ 佐藤康光・日本将棋連盟会長)
あまりの盛大ぶりにびっくりしています。私も緊張しています。今年は関西棋士のタイトル挑戦が多くて、その流れに乗って斎藤七段はタイトル初挑戦を果たしましたが、その実力は以前から知られていました。今回は待望の登場です。
第1局、第2局と内容の濃いすばらしい将棋でした。羽生棋聖がここ一番の力で連勝しました。斎藤七段がどう巻き返すか注目されます。これまでの2局と引けを取らない将棋を期待しています。
将棋を取り上げられることが増えてきました。藤井四段の連勝も大々的に取り上げていただきました。私の印象では、羽生さんが全冠制覇されたときもかなりのブームでした。当時、私もタイトル挑戦していまして、修学旅行の女子高生が羽生さんを空港で発見して取り囲んだんです。私も近くにいて一緒に囲まれたのは複雑でしたが。そうした記憶があります。将棋界盛り上がっているところでのタイトル戦です。注目いただけたらと思います。
(以上、佐藤会長のあいさつ)
(歓迎のあいさつ 大沼明穂・沼津市長)
私は昨年11月10日に市長となりました。
ようこそ沼津にお越しくださいました。
北は富士山、南は駿河湾と風光明媚な街です。
温暖な気候により、著名人の別荘や、皇族の御用邸が作られました。
若山牧水や井上靖ら文化人ゆかりの地でもあります。
(以上、大沼市長のあいさつ)
(あいさつ書き起こし=銀杏、写真=牛蒡)