郷田九段は長考して飛車を下段まで引きました。8一桂にヒモを付けた意味で自然な手ですが、これで手番が先手に回りました。
控室には糸谷六段が仕事を終えて戻ってきてくれました。
「渡辺竜王に攻めのターンが回りました。自然なのは▲4五歩だと思います。後手陣は金銀4枚の囲いですが、手が付くと早い形なので、受けに回るのは難しい。攻め合いの筋としては△8五歩しか見えないので、どこで手を抜いてそれを実行するかですね。一例は▲4五歩にすぐ△8五歩ですが、▲4四歩△同銀左▲4七香(参考図)が厳しいですか。私は先手持ちですね」(糸谷六段)
(八雲)
図は15時40分過ぎの局面。△9六飛までの消費時間は▲渡辺1時間43分、△郷田2時間34分。
△9六飛が指された瞬間、「取ったよ、うわー……」と控室には驚きの声があがりました。図で▲9七香と打てば飛車が詰むので、郷田九段が勝負に出た形です。対して渡辺竜王は、図から少考で▲9七歩と受けました。▲9七香には△7六歩▲9六香△7七歩成▲同金に△6九角(参考図)や△5四角が嫌だったのかもしれないとのこと。控室では、「香を打てないのでは後手の主張が通ったか」と言われています。
(八雲)