研究範囲
先手は三間飛車から中飛車に振り直したあと、5筋の歩を交換しました。図の局面は前例が3局で、そのうち2局は杉本六段が先手番を持って指しています。銀河戦本戦(対狩山幹生四段戦)と朝日杯一次予選(対増田康宏八段戦)という早指し棋戦でしたが、杉本六段が深く研究している形なのは間違いありません(肩書は対局当時)。
藤井棋聖も上記の実戦例は織り込み済みと思われますが、前例の△5四歩を踏襲せず、図で△4二角と応じました。
(玉響)
先手は三間飛車から中飛車に振り直したあと、5筋の歩を交換しました。図の局面は前例が3局で、そのうち2局は杉本六段が先手番を持って指しています。銀河戦本戦(対狩山幹生四段戦)と朝日杯一次予選(対増田康宏八段戦)という早指し棋戦でしたが、杉本六段が深く研究している形なのは間違いありません(肩書は対局当時)。
藤井棋聖も上記の実戦例は織り込み済みと思われますが、前例の△5四歩を踏襲せず、図で△4二角と応じました。
(玉響)
先手番を得た杉本六段は、十八番の三間飛車を採用しました。角道を止めるオーソドックスな振り飛車ですが、トーチカ囲いと組み合わせているのが工夫です。対する藤井棋聖は穴熊に組み上げました。現局面は手元のデータベース上に10局の前例があり、そのうち3局は杉本六段が先手番を持って経験しています。
(玉響)
両対局者は明日の対局に備えて退室。その後はトークショーが開かれました。
(左から和田あ女流二段、藤井猛九段、近藤正七段、戸辺七段、吉田三段)
途中から山本博志五段(写真右)が飛び入り参加。『将棋世界』で第1局の観戦記を担当する
トークショーで交わされた話の一部をご紹介します。
近藤正七段「振り飛車党って結構、繊細な人が多いっていわれてますけど」
藤井猛九段「逆じゃない。豪快な人、自由奔放な人が多いんだから。そもそもゴキゲン中飛車は、このご機嫌な人(近藤正七段)から作られたんだから」
近藤正七段「杉本さんが先手番なら中飛車、後手番なら三間飛車を予想します」
山本博五段「杉本さんは泥沼で長期戦でしょうかね。とりあえず絶対穴熊なんですよ。150手を超える戦いがやっぱり杉本さんの持ち味だと思います」
戸辺七段「杉本さんはすごいファイターなんですよ。終盤とかも洗顔ペーパーで顔を拭いて、目をぐわっと見開いて勝ちに行くような杉本ポーズっていうのがあります」
(書き起こし=紋蛇、写真=玉響)
両対局者は明日に向けて抱負を語りました。
「今期の棋聖戦は杉本六段とのシリーズになりまして、私にとってとても新鮮な五番勝負になるのかなと思っています。一手一手を大切に指せていけたらと思っています。
さて、今日は東武特急「スペーシアX」に乗って、こちらにやって参りました。今回は特別に先頭車両の「コックピットラウンジ」に乗車する機会をいただきまして、社内の雰囲気と前面展望をより一層楽しむことができたと感じています。前面展望を見ていますと、景色が少しずつ移り変わっていって、それを見ていると本当に飽きないなという感じがします。
明日の対局では盤上において、そういった一手ごとの景色の移り変わりというのも表現できるように全力を尽くしたいと思っています」
「前夜祭にたくさんの方にご来場いただきまして、とても嬉しく思うとともに、自分がタイトル戦に出ているんだなという実感を改めて感じているところでございます。
私は日光に来るのは初めてだったのですが、先ほど日光東照宮に参拝させていただいて、荘厳な雰囲気に圧倒されました。対局場の日光金谷ホテル様の素晴らしい建造物、歴史的な建造物の中で明日の対局を行えるということに、棋士冥利に尽きるなと改めて感じております。
私の師匠の米長は初タイトルが棋聖で、永世棋聖の称号を獲得するなど、棋聖戦は大変ゆかりのあるタイトルとなっています。今回も挑戦を決めた際に師匠の奥様に一応、挑戦の報告をしに行ったんですけれども、大変驚かれてしまいまして。その時に幸運にも和服をいただけることになりまして、明日の第1局はそれを着用して臨もうかなと思っています。
師匠は「さわやか流」と「泥沼」をあわせもった棋風といわれています。自分はかなり泥沼の部分を受け継いだような棋風になっているんですけれども、そういった自分の持ち味を発揮して、明日は皆様に熱戦をお見せできたらなと思っております」
(書き起こし=紋蛇、写真=玉響)
18時からは対局場の日光金谷ホテルで前夜祭が開催されました。
(司会は和田あき女流二段。明日は大盤解説会の聞き手を務める)
「杉本六段は対抗形を好む振り飛車党でありますが、実は藤井棋聖のこれまでのタイトル戦で振り飛車党の相手は少なかったと聞いております。そうした意味でも、ファンからの注目が非常に高い今期の棋聖戦、明日の第1局を心より楽しみにいたしております」
「杉本さんのように初めてのタイトル戦、あるいは初獲得が棋聖戦だったという棋士が非常に多い。また、昨年は山崎隆之九段が15年ぶりにタイトル戦に出るなど、様々なエポックがたくさんある棋戦です。藤井さん自身も初めて取ったタイトルでもあります。そういう意味でも、明日からの五番勝負は将棋界の歴史にひとつ刻まれるタイトル戦になるのかなと期待しています」
「日光金谷ホテルでございますが、指定登録有形文化財となっておりますし、日本最古のクラシックリゾートホテルでもございます。これまで皇室をはじめ多くの著名人の方がご利用、ご宿泊をいただいております。是非、将棋ファンの皆様におかれましても、この建物自体が醸し出す雰囲気やストーリーなどを堪能していただければ幸いだと思っております」
(書き起こし=紋蛇、写真=玉響)