永瀬九段が読み勝つ
杉本五段は1図で1時間4分の長考に入り、▲4二角成の勝負手を放ちました。以下△3九歩成▲同銀△1七桂▲3八銀打△4二金上▲5一竜△3一歩▲4二竜△2一香(2図)までノータイムで駆け抜けました。△1七桂、△3一歩、△2一香の組み立てが見事です。
△2一香で先手の詰めろが続かない。それが永瀬九段の読みだったようです。2図で4二の竜を逃げるようでは後手玉が鉄壁になり、△5七角くらいで後手勝勢です。実戦は▲4三竜△同金で先手玉が詰めろになりました。杉本五段が仕掛けた渾身の勝負順でしたが、永瀬九段は読みきっていました。正確であり、強い勝ち方です。
(杉本五段の仕掛けたスパートに、永瀬九段は正確に対応し、逆に差を広げた)
(牛蒡)

71手目▲3三桂に永瀬九段の応手は△3一金寄でした。これには攻防の▲7五角でどうか。杉本五段は前傾姿勢で読み始めました。まだ好転したわけではないと思いますが、杉本五段は何かある、と感じているのかもしれません。普段の杉本五段は、勝負どころを迎えると、畳を凝視するかのような深い前傾姿勢を見せることがあります。本局でもその姿が見られるかどうか。
図で△3一金寄で余せているならわかりやすいですが、川上七段は▲7五角が嫌みと指摘します。「思ったほど簡単ではない」とのこと。金を寄れないなら3三で清算することになりそうです。仮に△3三同金▲同歩成△同銀左なら、駒割りは飛車金交換まで接近します。もう一つ、後手には時間差という懸念点もあります。16時現在、永瀬九段は図で27分使い、残り52分になりました。時間が切迫するようだと、逆転の材料になりえます。
図の局面、玉の耐久度は明らかに後手が上です。まず、穴熊を構成する金銀の枚数が違います。先手はわずかに2枚で薄く、一方の後手は5枚の堅陣です。▲3三桂の狙いはありますが、△5一歩で二枚飛車を緩和できるため、後手玉はそう簡単に崩れません。そもそも上図では△3五馬と△3九馬の厳しい狙いがあるため、先手は何か受けなければいけない状況です。実戦は▲3七香でした。

杉本五段は上図から1時間5分の長考で▲5五同銀としました。予想の本命とされていた手です。しかし、その後の展開は意外でした。△8六角▲8八飛△7七角成▲8二飛成△5五馬。
これは先手が銀損の変化です。典型的な先手の失敗例に見えます。杉本五段は銀損の先に光明を見いだしたのか。それとも誤算があったのか。真意はわかりませんが、局面が大きく動いたのは間違いありません。実戦は△5五馬以下、▲5一飛△6六角▲9一竜△4二銀(14時30分現在)まで進んでいます。
13時20分、局面は休憩時のまま、動いていません。杉本五段は早指しから急停止。研究を外れたのかもしれません。AI研究は、AIの示す最善手や次善手をベースに進めるものですから、研究にない手がきたということは、先手に何かうまい手段があるはず、と考えることが多いです。先手がペースを握る順があるかどうか。杉本五段は慎重に時間を使っています。










図の局面で杉本五段が16分使って昼食休憩に入りました。休憩時間は12時から40分間。ここまでの消費時間は、▲杉本23分、△永瀬1時間10分。杉本五段の昼食注文は「豚の甘辛スタミナ焼き弁当、ごはん大盛り」(鳩やぐら)、永瀬九段が「キーマカレー、大盛り、温泉卵2個」(rico curry)。永瀬九段はゼリー飲料等の買い出しも頼んでいました。

11時10分、図から▲3五歩で戦いが始まりました。以下△3五同歩▲2六金△4二銀▲3五金△4三銀▲3四歩△4二角▲6五歩(11時30分現在)まで進んでいます。
