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2025年4月

2025年4月25日 (金)

五番勝負日程

第1局 6月3日(火) 栃木県日光市「日光金谷ホテル」
第2局 6月18日(水) 兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」
第3局 6月30日(月) 千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」
第4局 7月11日(金) 静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」
第5局 7月21日(月・祝) 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」

以上で本局の中継を終わります。ご観戦いただきましてありがとうございました。

(牛蒡)

囲み取材

感想戦後に杉本和陽新六段の囲み取材がありました。

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――タイトル初挑戦について。

棋士になり、タイトル戦に出たいという気持ちはもちろん持っていたのですが、身近に感じることすらできない現状がありましたので、ちょっと信じられないところはあります。

――タイトル戦に向けての意気込み。

今日の将棋も泥臭く粘って逆転という感じでした。失うものは何もないので、そのあたりの泥臭さとか、もちろん精度も上げていかなければいけないのですが、そのあたりも見ていただければと思います。

――藤井聡太棋聖とどう戦うか。

せっかくなので、普段の藤井先生のタイトル戦とは少し毛色が違うような、いろいろな作戦を用意して臨みたいと思います。

――師匠の故・米長邦雄永世棋聖が初めて獲ったタイトルが棋聖だった。縁を感じるか。

決勝トーナメントに入ったのも初めてでしたし、縁を感じるところまで、まだいけていなかったですけど、(五番勝負は)頑張りたいなと思います。

――改めて師匠に結果を報告するとすれば、どのような内容になるか。

師匠の奥様には、今回の挑決の前に(挑決までいったと)ご報告しました。挑戦を決めてから報告すべきかと迷ったんですけど、報告できるうちにしておこうと思いまして。師匠の奥様にも改めてご報告できればと思いますし、師匠のお墓参りにもこれを機会にまた行こうと思います。

――和服は持っているか。師匠や兄弟子からもらう予定などは。

和服はまったく持っていません。師匠の和服は、すでに中村先生(中村太地八段)がいただいているかもしれないので。そうですね、自分で用意するか、何かあるか。ちょっとだけ期待しています(笑)。

――ご自身の奥様には、どう報告するか。

おそらく、この放送(ABEMA/囲碁・将棋チャンネル)を見ていると思います。自分も対局前は家でピリピリしてしまうこともあったので「そういうときも支えていただいて、ありがとうございます」という感じですね。今日もAIの評価値が放送で表示されて、かなり不安になったと思うので、いまは少し安心しているのかなと思います。

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――師匠の米長永世棋聖は、さわやか流とも泥沼流とも称された。自身も継承していると思うか。

本局の振り飛車穴熊という作戦は、小学生の頃からずっと愛用している作戦で、かなり愛着があります。悔いのない作戦選択をしたつもりです。穴熊と心中してダメだったら仕方ないかな、という感じでした。戦法の性質上、長手数になりやすいですし、格上という言い方が適切なのかわからないですけど、格上の相手にも型にハマれば勝ちに持っていけるのが、この戦法の魅力です。けっこう泥臭くなりがちな戦法かなと思います。

――王位戦でもリーグ入りを果たした。好調の要因は何か。

何かこれ、というものを挙げるのは難しいのですが、年齢も30の半ばになり、精神的にも落ち着いてきた、ということはあるのかなと思っています。将棋界に入って以来、ずっと周りと自分を比較して、比べてきました。そういったところをなくす、までは至っていないですけど、ちょっとずつ減らすことはできているのかなと思います。

――振り飛車の魅力。現代振り飛車に対する思いは。

振り飛車は、自分で囲いを選べたり、自分の指したい形を絶対に再現できるのが、いちばんの魅力だ思っています。本局は自分にとっての大一番だったんですけど、指し慣れた作戦に託しました。本局は研究が行き届いていなかったんですけど、もっと綿密に研究して、序盤で時間を節約したり、球種を散らして相手の意表を突くとか、振り飛車の戦い方もまだあると思っています。振り飛車は受難の時代といわれていますけど、自分なりに工夫しながら振り飛車を指していこうと思います。

――藤井七冠に挑戦した振り飛車党としては、菅井竜也八段に続いて2人目になる。菅井八段の戦いぶりはどのように見ていたか。

菅井先生が最初に挑戦された叡王戦(2023年)は、相穴熊の将棋が多く、振り飛車がうまく勝った将棋もあったと記憶しています。次の王将戦(2024年)では、藤井先生が盤石の対応をされているなと感じました。(自分も)厳しい戦いになると思っています。

――藤井七冠とタイトル戦を戦うとしたら、こういう指し方でいこうと考えたことはあるか。

番勝負まではいかないですけど、対戦したことは2回ほどありまして、1年半ほど前の銀河戦も自分としては大きなところで当たりました。八冠を獲られた直後の対局で、かなり気合を入れて準備をして臨んで、木っ端微塵にされた記憶があります。そのときの反省点として、もう少しいろいろな作戦を用意すべきだった、ひとつの作戦に固執してしまった、というものがあります。(棋聖戦五番勝負では)臨機応変にやっていきたいとは考えています。

――どのような五番勝負にしたいか。

皆さまに棋譜を見ていただける、せっかくの機会です。今日の内容では先が思いやられるなという感じはしたので、開幕まで1ヵ月くらいはあると思いますので、できる限りのことをして盛り上げられたらと思います。

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――自身の棋風について。

自分は序中盤の研究をするのが好きで、タイプとしては西田さん(西田拓也五段)に近いのかなと思います。

――棋聖戦五番勝負の優勝賞金アップについて。

そういうニュースはたいてい自分には縁のないもので、まさか自分が当事者になるとは思っていませんでした。今日も金銭的なことはなるべく意識しないように指していました。

――25歳でプロになり、タイトル挑戦まできた。

棋士になってからがスタートなのですが、棋士になった年齢によって、この人はだいたいこれくらいまでいくだろう、と見られる風潮があります。それに抗いたいなとは、ずっと思っていて。王将戦で西田さんが挑戦者決定戦までいったことには勇気づけられました(西田五段と杉本六段は同じ年、四段昇段も同期)。最近は24歳や25歳で棋士になられた方でも活躍されています。棋士になる年齢が早ければ早いに越したことはないんですけど、歳を重ねても強くなることは諦めたくないと思っています。

――お盆の上にサンドイッチがあるのですが、それは。

最近は4時間の対局の途中、空腹感を感じてフラフラすることが続きまして、今回は4つ買ってきていただきました。でも今回はこれを食べきる前にやられそうな形勢になってしまいました(苦笑)。なんとか3つは食べきれて、ちょうどいいエネルギー補給になりました。今日はいくら食べてもお腹が空いているような感じでした。消耗度が激しかったです。

――今日の動画配信の視聴者に向けて。

本日はご観戦いただいて、ありがとうございました。自分でもまだフワフワしている状態ですけれども、1ヵ月間しっかり準備をして、タイトル戦を盛り上げられるように精いっぱい全力を尽くします。

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(牛蒡)

感想戦

感想戦の終盤は、永瀬九段が感想を述べ、杉本五段はそれをじっと聞いていることが多くありました。永瀬九段は体感していた形勢と、AIの示す評価値に差があったようで「対抗形の将棋は大変なんですよ。詰む詰まないではないから」と話していました。勝ちきるまでが難しい将棋でした。

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(牛蒡)

終局直後

終局直後にインタビューがありました。

【杉本和陽六段がタイトル初挑戦 声震わせ「くさらず良かった」】
https://www.youtube.com/watch?v=po2_AzDk_BU

Dsc_8943(杉本和陽五段は初のタイトル挑戦。規定により六段昇段)

――本局を振り返って。

杉本 準備してきた形にはなったんですけど、昼食休憩の局面で想定から外れてしまって、思わしい順があまり見えなかったので、作戦がどうだったかという感じはしていました。

――夕方くらいまで苦しい状況が続いていたか。

杉本 はい、苦しい展開だと思いました。

――どこで好転したか。

杉本 ▲3三桂(103手目)と打ったあたりで少し楽しみが出てきたのかなと思いました。

――抜け出したと思った局面は。

杉本 最後の詰みが見えたあたりです。

――初めてのタイトル戦となる。

杉本 棋士になったときは、自分がタイトル戦に出るのは想像しがたい部分もあったんですけど、腐らずやってきてよかったと思います。

――五番勝負では藤井聡太棋聖に挑む。

杉本 人生でもなかなかない機会だと思うので、できることはすべてやって臨みたいと思います。

――タイトル挑戦で六段に昇段した。

杉本 段位をひとつ上げるのも大変だったので、そこは素直にうれしく思います。

Dsc_8964(永瀬九段はあと一歩で挑戦権を逃した)

――本局を振り返って。

永瀬 ▲2八銀打(87手目)の局面は、さすがによくなったと思いました。

――夕方くらいまで、かなりよかったか。

永瀬 よかったですけど、うーん。何といいますか、盤上だけでいうと、もう少し形勢がよくなったという決断をすべきだった気がします。

――どこで形勢が難しくなってきたと感じたか。

永瀬 ▲5七歩(99手目)をうっかりしてしまって、急に粘る感じになってしまいました。対局が多いとうっかりしやすんですけど、それが出てしまったのは残念でした。

――棋聖挑戦は惜しくもならなかった。

永瀬 本局は残念でしたけど、ベストは尽くせたのかなと思います。

Dsc_8955(すべてのカメラが杉本五段に向けられる)

Dsc_8957(三段リーグに17期在籍した苦労人だった)

Dsc_8999(「腐らずにやってきてよかった」)

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(牛蒡)

杉本和五段が挑戦権獲得

 

20250425_165杉本和五段が永瀬九段に勝ちました。終局時刻は20時2分。消費時間は、▲杉本3時間50分、△永瀬3時間59分。杉本五段は自身初のタイトル挑戦とともに、六段昇段を果たしました。藤井聡太棋聖との五番勝負は、6月3日(火)に栃木県日光市「日光金谷ホテル」で開幕します。

最終盤

20250425_151_2手数は150手を超え、いよいよ1筋の攻防に入りました。最終盤に突入です。

(牛蒡)

熱戦、先行き見えず

20250425_132一度は消えた先手の二枚飛車がここにきて復活。後手は自玉周りに駒を打ちつけて耐えようとしています。川上七段も容易に形勢判断を下せない熱戦が続いています。

(牛蒡)

杉本五段が逆転

20250425_119図の局面は先手が後手玉に食いつき、逆転しています。しかも残り時間は▲27分、△4分でかなりの差があります。仕掛けで銀損になって以降、ここ数手で初めて先手よしの評判になりました。杉本五段にとって棋士人生で最大の勝負は、ドラマチックな展開を見せています。途中の粘りの姿勢が功を奏しました。ただ、永瀬九段の粘り強さも棋界随一です。再逆転はあるのか。白熱した戦いです。

1913(両ひざをつかむ杉本五段の手に力がこもる)

(牛蒡)

後手変調の声

20250425_097_2後手は図から△6六角と打ちました。それ以前にも△3六桂や△5九飛を決め、明らかに寄せに出ています。しかし、△6六角に▲5七歩△同飛成▲3四歩△5二竜と一転、受けに転じました。▲5七歩に△同角成ではなく△同飛成としたのは、▲5四角を消したり、△5一歩を残すためだと思われますが、攻めていた流れを考えると先手変調です。

20250425_102102手目の局面。残り時間は▲杉本40分、△永瀬8分です。

Dsc_8516(永瀬九段は踏み留まれるか)

(牛蒡)

終盤の粘り

20250425_09772手目▲4二角成以下の攻めを受け止められた杉本五段。最後まであきらめずに粘りに出ています。後手には△5一歩の保険がありますが、穴熊自体は崩壊しているので、絶対に安全な玉とはいえません。正確な指し回しが求められます。

Dsc_8923(原宿、東郷神社)

(牛蒡)

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