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2017年4月

2017年4月25日 (火)

解体新書

本局の両者は、昨年8月にマイナビ出版から『糸谷&斎藤の現代将棋解体新書』という本を発売しています。矢倉、横歩取り、角換わり、そして振り飛車における27のテーマ図を題材に、互いの見解や将棋観を述べ合った一冊です。

本書の「まえがき」で、糸谷八段は「幅広い分野をカバーする斎藤六段(当時)の研究、棋士である私から見て感心の声しか上がりません」と書き添えており、斎藤七段は「糸谷先生と意見交換するところでは、私自身楽しく参加させていただきました」と記しています。高段者向けですが、そのぶん読み応えのある内容です。

現代将棋解体新書

【糸谷&斎藤の現代将棋解体新書(マイナビBOOKS)】
https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=59133


さらに斎藤七段は先週、同じくマイナビ出版から新刊『矢倉左美濃急戦・基本編』を発売しました。今期の決勝トーナメント1回戦(森内俊之九段戦)でも用いられた戦法で、矢倉党、そして攻め将棋を好む方にお勧めの一冊です。

矢倉左美濃急戦

【矢倉左美濃急戦・基本編(マイナビBOOKS)】
https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=65956

(夏芽)

控室に北浜八段、杉本昌七段が来訪

昼食休憩の▲2四歩から、△7四歩▲3三角成△同桂▲2九飛と進みました。

▲2九飛

控室
(控室に北浜健介八段と杉本昌隆七段が来訪した)

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(「先手の狙いは▲5六角でしょうね」と杉本昌七段)

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(「△8五飛に▲8八銀で、まだまだこれからの将棋」と北浜八段)

(夏芽)

対局再開

斎藤七段
(斎藤七段は食事以外ほとんど席を離れず、再開20分前には戻っていた)

糸谷八段
(12時38分、糸谷八段が入室)

対局再開

糸谷八段

斎藤七段

対局再開
(12時40分、再開してすぐ糸谷八段が席を外し、斎藤七段の長考が続いた)

(夏芽)

昼食休憩時の対局室

対局室
(昼食休憩時の対局室)

盤面
(手番の斎藤七段側から見た盤面)

児玉龍兒師作
(糸谷八段の王将。駒の作者である児玉龍兒師の名前が入っている)

源兵衛清安書
(斎藤七段の玉将。書体は源兵衛清安)

棋譜
(休憩前の斎藤七段の考慮は46分だった)

(夏芽)

両対局者の昼食

チキンステーキ&白身魚
(糸谷八段の昼食、チキンステーキ&白身魚のサービスランチ)

他人丼セット
(斎藤七段の昼食、他人丼セット)

(夏芽)

昼食休憩

▲2四歩

12時になり、図の31手目▲2四歩の局面で斎藤七段が46分考えて昼食休憩に入りました。ここまでの消費時間は▲糸谷八段25分、△斎藤七段1時間17分。昼食の注文は糸谷八段がチキンステーキ&白身魚フライ(サービスランチ)、斎藤七段が他人丼セット(温そば)。対局は12時40分に再開されます。

(夏芽)

長考の斎藤七段

△8六歩以降、▲8五歩△6四歩▲2四歩と進みました。2筋に攻めの拠点を作った糸谷八段に対し、斎藤七段はどう動いていくのか。この局面で30分を超える長考に沈んでいます。

▲2四歩

糸谷八段

斎藤七段

(夏芽)

決勝トーナメントの足跡(2)

続いて斎藤七段の将棋を振り返ります。棋聖戦成績は15勝4敗(勝率0.789)で、今期は二次予選からの出場で井上慶太九段、金井恒太六段、北浜健介八段を破って、決勝トーナメントに進出しました。

トーナメント表


◆1回戦:森内俊之九段戦(2017年3月28日)

▲5三桂

森内九段の矢倉に対し、斎藤七段は得意の「左美濃急戦」で挑みますが、鉄板流の巧みな受けの前に苦戦に陥ります。ところが第1図の森内九段が打った▲5三桂が大錯覚。代えて▲4六飛なら先手優勢とのことでした。本譜は△5三同角▲4五桂△4四角と進んで一気に形勢が逆転。最後は4四にかわした角が寄せに働き、斎藤七段が2回戦に進出しました。


◆2回戦:木村一基八段戦(2017年4月7日)

▲7八同玉

木村八段との将棋は横歩取りでした。端桂を跳ねて積極的に動こうとする斎藤七段に対し、木村八段は角道を止め、緩やかな流れに持ち込みます。中盤以降は互いの歩の手筋が乱れ飛び、難解な形勢のまま終盤戦にもつれ込みます。最終盤の第2図。ここで△9八飛成▲6七玉△8九角なら後手勝ちでしたが、実戦は△8九角▲6九玉△7八歩だったため、▲6七桂が次の▲5五桂の王手を見た絶好の一手になりました。


◆準決勝:郷田真隆九段戦(2017年4月18日)

▲6四玉

郷田九段との将棋は角換わり腰掛け銀の先後同型(▲9五歩△1五歩型)。先手の斎藤七段が先攻し、この戦型特有の激しい攻め合いへと進展します。途中、斎藤七段に指しすぎの一手が出て流れは後手に傾きますが、そこから粘り強い受けを見せて大激戦に。最後は両者一分将棋の中、161手で斎藤七段が逃げきり、挑戦者決定戦に駒を進めました(第3図は投了図)。

斎藤七段

(夏芽)

8筋の歩

その後はしばらく駒組みが続き、糸谷八段は飛車を五段目の位置でキープして▲8七歩を打たない方針で進めています。これに対し、斎藤七段が12分の考慮で△8六歩と垂らしました。次の狙いは△8七歩成ですが、▲8五歩と受けられたあと、斎藤七段がどういう継続手を用意しているかに注目です。

△8六歩

勝又六段
(控室では観戦記を務める勝又清和六段が継ぎ盤を動かしている)

(夏芽)

決勝トーナメントの足跡(1)

両対局者の準決勝までの将棋を振り返ります。

糸谷八段の棋聖戦成績は22勝10敗(勝率0.688)。前期ベスト4によるシードで、今期は決勝トーナメントからの出場でした。

トーナメント表


◆1回戦:松尾歩八段戦(2017年3月22日)

▲7五歩

松尾八段との将棋は相掛かり。先手の2八飛型に対し、後手の糸谷八段は飛車の活用で歩得を果たします。作戦勝ちからペースをつかみ、迎えた第1図。ここで△3一歩▲7四歩△8四角とあっさり銀を取らせたのが好判断でした。次に△6八銀と打ち込む攻めがあり、さらには6六の銀も質駒で先手は受けが難しくなっています。実戦は△8四角に▲7五銀打△6八銀▲同金△同歩成▲同玉△3八竜と進んで、糸谷八段が寄せきりました。


◆2回戦:広瀬章人八段戦(2017年4月4日)

▲3七歩

広瀬八段との将棋は相矢倉の出だしから、後手の糸谷八段が腰掛け銀に構えて急戦調の展開に持ち込みます。互いに強気の攻め合いが続く中、勝負の明暗を分けたのは第2図。本譜、糸谷八段は△2七銀不成とタダの場所に銀を捨て、以下▲同飛△6八銀▲5五金△7七銀成▲同桂△7九角打と進んで流れを引き寄せました。途中、先手の▲5五金が危険な一手で、代えて▲6七金と引けば難しかったようです。


◆準決勝:佐藤康光九段戦(2017年4月19日)

△7六角

佐藤康九段(永世棋聖)との将棋は角換わりで、早い段階で▲3七桂~▲4五桂と仕掛けていきました。過去の自身の前例をなぞる展開で、序盤から一貫した早指しでペースをつかみます。第3図から▲2四歩△1二銀▲2三金△2二歩▲1二金△同香と進み、そこでさらに▲2三銀を打ち込んだのが強手。以下△同歩▲同歩成△同金▲同飛成と竜を作ることに成功し、そのまま押し切りました。本局、糸谷八段のトータル消費時間は「59分」でした。

糸谷八段

(夏芽)

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