カテゴリ「第27期竜王戦挑決第3局」の記事 Feed

2014年9月 9日 (火)

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終盤で時間をかけて調べられたのが▲2三歩(73手目)の局面。本譜は単に△1六竜と引いたので▲3五馬が絶好になってしまった。感想戦では△5四香と打ち、▲7五歩△1六竜▲5四馬△同歩▲2四香(A図)の進行が示された。

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ここでは後手の手段として(1)△4七銀、(2)△5一銀、(3)△6三銀が検討された。

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A図で(1)△4七銀は▲同玉なら△3六角▲5六玉△6二飛▲5三銀△5五歩▲同玉△1五竜▲4五桂△8二角(B図)で後手やれる。△2四竜と香を外す手が利くのが大きい。しかし最初の△4七銀に▲6八玉と逃げられたときに思わしい手がない。

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A図で(2)△5一銀は、▲5三銀△3六角▲6八玉△2一歩▲5二銀引成△同銀▲同銀成△5八飛▲7七玉△7六銀▲6六玉△6五歩▲7六玉△7八飛成▲7七銀△7五歩▲6五玉△6七竜▲6六歩(C図)と進めて先手が余している。「そうか、ちょっと足りないですか」と羽生名人。

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A図で(3)△6三銀は、▲5三銀△3六角▲6八玉△4五桂(D図)と勝負する。▲同桂なら△5八飛▲7七玉△4五角が厳しい。しかし、D図から▲5二銀引成△同銀▲同銀成△5七桂成▲7七玉△7六銀▲同玉△7五歩▲6五玉△1五竜▲4五桂と進むと先手が余している。「詰まないか。ちょっと足りないですね」と羽生名人
結局、▲2三歩の局面で後手に思わしい手はなかった。後手の改善案は▲3三歩(51手目)とたたかれた局面にさかのぼる。

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本譜は△同桂と取ったが、これが大きな利かしになった。そこで感想戦では△2五角と打つ手が調べられた。糸谷六段は対局中、この手を気にしていたという。以下▲6八玉△3三桂▲8三角△5八飛▲7七玉△7八飛成▲同玉△7一金打でE図。

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こうして無理やり竜に働きかけて角を取りにいく。E図以下は▲9一竜△8三銀▲2六銀△5八角成▲6九銀△同馬▲同玉△5五角でF図。

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△8三銀で角を取り、△5五角と打てば竜が詰んでいる。複雑な順である。羽生は「捕まえ方がちょっと……」と話しており、考えにくい順だったようだ。F図以下は▲3四歩△9一角▲3三歩成△4九飛▲5九飛△4六飛成▲3七銀△7六竜▲7九香△6七竜▲6八歩△6五竜▲3二と△6二玉が示された。「自信ないです。皮膚がないから」と糸谷六段。羽生名人は「飛車の取り方がいまいちと思いましたが、こうやるんでしたか」と話していた。
2014年9月 8日 (月)

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森内俊之竜王―糸谷哲郎七段 第27期竜王戦七番勝負日程

第1局 10月16日(木)、17日(金) ハワイ「ハレクラニ」
第2局 10月30日(木)、31日(金) 大阪市北区「帝国ホテル大阪」
第3局 11月6日(木)、7日(金) 東京都千代田区「帝国ホテル」
※第2、3局とも2日目13時30分より終局までの大盤解説会のほか、多数プロ棋士による指導対局、サイン会を実施予定です。
第4局 11月20日(木)、21日(金) 静岡県袋井市「ヤマハリゾート 葛城北の丸」
第5局 12月3日(水)、4日(木) 石川県金沢市 湯涌温泉「かなや 青巒荘」
第6局 12月10日(水)、11日(木) 山形県天童市「ほほえみの宿 滝の湯」
第7局 12月17日(水)、18日(木) 山梨県甲府市「常磐ホテル」

10月16日に開幕する七番勝負をお楽しみに。本日はご観戦ありがとうございました。

Dsc_0284(タイトル初挑戦、七番勝負ではどんな将棋を見せてくれるのか)

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Dsc_0296(盤側の高野六段へ話しかけながら感想戦を進める)

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Dsc_0306(感想戦は22時16分に終了した)

Dsc_0255_2(終局し、報道陣が一斉に対局室へなだれ込む)

Dsc_0250(挑戦を決めた糸谷六段)

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―― 終わったばかりですが、タイトル初挑戦の気持ちはどうですか。

糸谷 そうですね。まだ将棋を指せて嬉しいです。

―― これまで勝ち上がってきましたが、いい将棋の内容で勝てたんですか。

糸谷 いや反省は多いです。
   
―― 今年はあまり負けてなく、数字は非常にいいのですが理由はあるのですか。

糸谷 時間がちゃんと使えてるのかなと思います。

―― 2日制の対局は楽しみですか?

糸谷 そうですね。長い将棋が指せるので楽しみです。

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―― 羽生先生、残念な結果でしたがひと言お願いします。

羽生 そうですね。ちょっと勝負どころで誤ったような気がします。ただ、もうちょっと調べてみないと分かりませんが。

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▲2三歩(投了図)を見て羽生名人が投了した。投了図からは△1二玉▲1三歩△同玉▲2四金△1二玉▲2二歩成△同玉▲2三馬△2一玉▲2二歩以下、歩の数が足りてぴったりの詰み。終局時刻は21時26分。消費時間は▲糸谷4時間14分、△羽生4時間44分。糸谷六段が挑戦者決定三番勝負を制し、竜王挑戦を決めた。規定により糸谷六段は七段昇段を果たした。

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▲3四馬で詰めろ竜取りが掛かった。▲2二金△同歩▲同歩成△同金▲同香成△同玉▲2三歩△1二玉▲1三歩△同玉▲2四金△1二玉▲2二歩成△同玉▲2三馬△2一玉▲2二歩以下の詰めろで、1六の竜に当たっている。

Dsc_0138(ビックタイトルへ挑戦、七段昇段へ近づいている糸谷六段)

Photo_36(21時前、難解な変化に考え込む久保九段、船江五段、大石六段)

1_2(長沼洋七段が棋士室に来訪していた)

Photo_37(継ぎ盤で検討する稲葉七段と宮本四段は、自身の対局を思わせる熱の入りよう)

Photo_38(21時頃、休憩中だった大盤解説会が再開。次の一手の解答が発表されていた)

Photo_39(プレゼンター役を務めた長谷川女流二段と北村女流1級)

(潤)

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図は羽生名人が△6五歩と打った局面。 △6五歩がモニターに映ると控室では悲鳴があがる。▲5五銀△同飛に▲2四香(変化図)が受けにくいからだ。▲2四香は▲2二金△4二玉▲3二金以下の詰めろ。うまい受けがなければ先手が優勢ということになるのだが……

Dsc_0147(羽生名人に妙防はあるのか)

Dsc_0226(左からモニターを見る伊藤真吾五段、継ぎ盤を見る青野照市九段と片上六段)

Dsc_0229(継ぎ盤に向かう西川和宏五段と香川女流王将)

Dsc_0231(多くの報道陣も詰めかけ、控室はびっしり)

Photo_32 図は20時20分頃の局面。棋士室では、「この△5四飛で勝ちと思って羽生先生はやってますね」という会話が聞かれました。ここで先手は(1)▲2二金と、(2)▲2二銀が有力とのことですが、(1)は以下、△同金▲同歩成△同玉▲2三歩△3二玉▲2一銀△2三玉(1図)で後手凌いでいる。また(2)は以下、△同金▲同歩成△同玉▲2三歩△同玉▲2四歩△同飛▲2二金△同玉▲2四馬△2三歩▲2一金△同玉▲3三馬△3二金▲1三桂△1二玉▲3二馬△1三玉(2図)が△5七角成以下先手玉が詰めろとなり後手よしの見解となっています。以上の順が羽生先生の読み筋の本線ではないかと推測されていますが、ただ棋士室の予想手順はこの(2)でした。しかし糸谷六段はここで、▲6八金と受けに回っています。

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 (潤)