2022年7月15日 (金)

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時刻は11時20分、図の局面で伊藤匠五段が40分以上の長考に沈んでいます。以下(1)▲8八同金△8六飛▲8七歩△7六飛(変化図)の進行は、(A)△6六飛の銀取りと(B)△7九角の王手金取りを同時に狙えるため後手好調と見られます。変化図で▲6五銀と桂を取るのは、△6六飛が王手銀取りです。

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伊藤匠五段は何か対抗策が必要です。現局面での候補手は多くあり、(2)▲7七桂△同桂成▲同銀△8九歩成に▲4五桂から反発するのがひとつ。これは比較的穏便といえるでしょう。(3)▲9七桂△8九歩成▲6五銀で先手だけが桂を入手するのは強気な手段。そこで後手の指す手は悩ましいですが、ここまで早指しで進めてきた稲葉八段には何か用意があるはず。(4)▲6五銀△8九歩成に▲6四歩で攻めの拠点作りを優先することも考えられます。

Img_7094(初手▲2六歩を着手する伊藤匠五段。写真右は観戦記を執筆する池田将之さん)

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(決勝トーナメントはそろそろ折り返し。赤線が本局。クリックで拡大可)

稲葉八段の竜王戦成績は45勝21敗。今期は1組からの出場で、ランキング戦で八代弥七段に敗れましたが、続く出場者決定戦で豊島将之九段、阿部健治郎七段、木村一基九段に勝って5位に。これにより6度目の決勝トーナメント出場を決めています。

伊藤匠五段の竜王戦成績は10勝2敗。今期は6組からの出場で、ランキング戦6連勝で優勝。自身初の決勝トーナメント出場を決めました。その決勝トーナメントでは佐々木大地七段(5組優勝)、大橋貴洸六段(4組優勝)を相手に勝ち進んでいます。

また今期の公式戦成績は、稲葉八段が7勝2敗(0.778)、伊藤匠五段が16勝2敗(0.889)。高勝率同士の初対戦となりました。

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戦型は角換わりとなりました。いまは後手の稲葉八段がいきなり突っ掛けたところです。以下▲6五同歩△7三桂▲5八金△6五桂と進んでいます。図の局面では前例が3局ありますが、いずれも先手が勝利を収めていました。どう覆すのか、稲葉八段の研究に注目です。

Img_7093(朝の稲葉八段。駒を並べ終え、しばし瞑想)