15時30分、郷田九段が長考に沈んでいる。郷田九段は棋界有数の長考派。2008年の決勝トーナメントにおける二人の対局でも、右図から△2五桂(41分)▲4五歩(87分)△5三銀(8分)▲6七金(41分)と郷田九段は2手に2時間以上を費やしたことがあった。
カテゴリ「第26期竜王戦決勝トーナメント」の記事
2013年8月 6日 (火)
構想の立て方
15時、図の局面で郷田九段が時間を使っている。中継室には吉田正和五段が訪れているが、「先手がどう指すか難しい」と話す。「▲4五銀とぶつけたいのですが、△6三銀と引かれて大したことがなさそうです。後手は金をくっつければいいので指し手がわかりやすいですね。先手はどうやって角を使うかが問題です」と吉田五段。
後手は△5一金~△4二金上~△8四角と進めれば攻守ともに満足の構えになる。機を見て△6五歩と戦いを起こせばすべての駒が働く展開になる。対する先手は後手の態勢が万全になる前に動きたいところではあるが、囲いが薄く不安が残る。また、角がなかなか参加しにくい形で、ここから駒をどう使っていくかがポイントになりそうだ。
後手は△5一金~△4二金上~△8四角と進めれば攻守ともに満足の構えになる。機を見て△6五歩と戦いを起こせばすべての駒が働く展開になる。対する先手は後手の態勢が万全になる前に動きたいところではあるが、囲いが薄く不安が残る。また、角がなかなか参加しにくい形で、ここから駒をどう使っていくかがポイントになりそうだ。
曇り空
長い駒組みに
対局再開
昼食休憩に入る
二人の歩み
郷田九段は本棋戦には第4期(1990年)から参加。2期連続優勝で1組に昇級したあとは、14期連続で1組を維持している。これだけ長期間在籍していながら、これまで挑戦者決定三番勝負に出ていないのは意外だ。
山崎八段は第12期(1998年)から本棋戦に参加。4組、3組を1期で抜けて現在1組は3期目。昨年は丸山忠久九段と挑戦者決定三番勝負を戦ったが、タイトル挑戦はならなかった。
(下表の対戦相手の肩書き・段位は当時のもの)
山崎八段は第12期(1998年)から本棋戦に参加。4組、3組を1期で抜けて現在1組は3期目。昨年は丸山忠久九段と挑戦者決定三番勝負を戦ったが、タイトル挑戦はならなかった。
(下表の対戦相手の肩書き・段位は当時のもの)
【郷田九段の決勝トーナメント成績】
・1998年 第11期
北島忠雄四段 ○
羽生善治四冠 ●
・1999年 第12期
丸山忠久八段 ●
・2001年 第14期
畠山鎮六段 ●
・2008年 第21期
山崎隆之七段 ○
木村一基八段 ●
・2010年 第23期
戸辺誠六段 ○
久保利明二冠 ●
・1998年 第11期
北島忠雄四段 ○
羽生善治四冠 ●
・1999年 第12期
丸山忠久八段 ●
・2001年 第14期
畠山鎮六段 ●
・2008年 第21期
山崎隆之七段 ○
木村一基八段 ●
・2010年 第23期
戸辺誠六段 ○
久保利明二冠 ●
【山崎八段の決勝トーナメント成績】
・2003年 第16期
高野秀行四段 ○
杉本昌隆六段 ○
谷川浩司王位 ●
・2008年 第21期
郷田真隆九段 ●
・2011年 第24期
佐藤天彦六段 ○
久保利明二冠 ●
・2012年 第25期
豊島将之七段 ○
飯島栄治七段 ○
挑戦者決定三番勝負 丸山忠久九段 ●○●
・2003年 第16期
高野秀行四段 ○
杉本昌隆六段 ○
谷川浩司王位 ●
・2008年 第21期
郷田真隆九段 ●
・2011年 第24期
佐藤天彦六段 ○
久保利明二冠 ●
・2012年 第25期
豊島将之七段 ○
飯島栄治七段 ○
挑戦者決定三番勝負 丸山忠久九段 ●○●
決勝トーナメントまでの道程
山崎好みの銀上がり
矢倉模様の立ち上がりから、10手目△5三銀(図)。積極的に動く意志を秘めた銀上がりで、早くも山崎八段の棋風が出る展開になった。通算では9局指して6勝3敗と高勝率をあげている形だ。だが今期は1組ランキング戦で佐藤天彦七段に試みるも敗れ、その後のNHK杯戦でも再び敗北を喫した。残る1つの負けは、山崎八段が初めてこの形を指した▲郷田真隆棋聖-△山崎隆之五段戦(2001年9月、棋王戦、肩書き・段位は当時のもの)でのものだ。
実戦はここから▲5八金右△8五歩▲7七銀△5五歩▲5七銀△5二飛▲7九角(下図)と進んだ。
後手は飛車を5筋に転回して中央制圧の姿勢を見せている。先手はひとまず後手の動きを受け止めて、態勢を整える時間を作りたいところだ。
矢倉の序盤は先手が早々に角道を止めるため、瞬間的な大駒の働きは後手に分がある。急戦矢倉と呼ばれる速攻作戦は、この構図があるために生まれたものだ。
実戦はここから▲5八金右△8五歩▲7七銀△5五歩▲5七銀△5二飛▲7九角(下図)と進んだ。
後手は飛車を5筋に転回して中央制圧の姿勢を見せている。先手はひとまず後手の動きを受け止めて、態勢を整える時間を作りたいところだ。
矢倉の序盤は先手が早々に角道を止めるため、瞬間的な大駒の働きは後手に分がある。急戦矢倉と呼ばれる速攻作戦は、この構図があるために生まれたものだ。