数手前、稲葉八段にも1時間以上の長考がありました。それでも残り時間では相手よりも圧倒的に余裕があります。56手目△7三銀までの消費時間は▲伊藤匠3時間49分、△稲葉1時間7分。
いまは激しい変化を回避して戦いがいったん落ち着き、局面は中盤に戻ったといってよいでしょう。以下(1)▲8三桂には△8一金▲9一桂成△同金で、先手に追撃手段がありません。むしろ後手に桂が渡ることで△7六桂の王手竜取りが生じてしまいます。実戦はここから(2)▲7二歩△8二金▲7一歩成と進みました。稲葉八段としては先手の攻めを切らして、持ち駒の豊富さや、盤上の駒の働きでまさる点(先手の2八飛や9七桂が使えていない)を生かしたいところです。