2022年6月の記事

2022年6月28日 (火)

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図は55手目▲8六歩の局面です。この手は直前の△5四歩の一瞬に反応した手で、陣形を発展させようとしています。△8六同飛なら▲9七角の間接王手飛車取りがあります。後手が△5四歩としなければ▲8六歩は突きにくい手でした。
とはいえ、▲8六歩で先手作戦勝ちというわけではなく、伊藤匠五段は△5三角▲8七金△6四歩と先手が8筋に手をかけている間に動いていきました。戦いに向けて、局面が少しずつ動いています。

Dsc_3274(8筋を盛り上げていく佐々木大七段)

Dsc_3356_2(鳩森八幡神社は860年創建で歴史が古い)

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Dsc_3364_2(神社内に残る富士塚。江戸時代に富士信仰のため、富士山に模した人工の塚。1789年の築造で、都内で現存するものでは最も古い。1789年は九代大橋宗桂が八世名人を襲位した年でもある)

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図は35手目▲6五歩まで。いち早く腰掛け銀に構えた佐々木大七段は▲6五歩と位取りに出ました。後手の腰掛け銀を阻んでいます。
以下指し手が進んで下図の47手目▲7八玉まで進んでいます。相掛かりは定跡が進んで先鋭化された形とそうではない形があります。本局は後者で、知識よりも構想力が問われています。



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Dsc_3294_2 (考える伊藤匠五段)

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図の41手目▲6八玉の局面で伊藤五段が13分使って昼食休憩に入りました。消費時間は▲佐々木1時間5分、△伊藤34分。対局は12時40分再開です。
昼食の注文は、佐々木七段が豚と厚揚げ玉子とじ弁当(鳩やぐら)、伊藤五段は豚しゃぶバンバンジー弁当(鳩やぐら)でした。

23日の読売新聞朝刊に第35期竜王戦特集が掲載されました。読売新聞オンラインにも記事がアップされています。
また、読売新聞オンラインのYouTubeチャンネルに、第35期竜王戦決勝トーナメント開幕特集の動画が3本アップされています。藤井聡太竜王によるランキング戦振り返り、決勝トーナメントの見どころや展望紹介、ランキング戦の大盤解説と内容盛りだくさんです。
この中で、藤井竜王は挑戦者の本命に永瀬拓矢王座(1組優勝)、対抗に大橋貴洸六段(4組優勝)と本局の両対局者を挙げました。

【藤井竜王への挑戦権は誰の手に…本戦、28日開幕】
https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/ryuoh/20220622-OYT8T50163/

【藤井聡太竜王と振り返る第35期竜王戦ランキング戦 竜王戦本戦開幕特集①】
https://www.youtube.com/watch?v=gf_JWwdumdA
【藤井聡太竜王に聞く 第35期竜王戦本戦の見所と展望 竜王戦本戦開幕特集②】
https://www.youtube.com/watch?v=aNiRRuyfdt8
【藤井聡太竜王による、ランキング戦注目対局のワンポイント大盤解説 竜王戦本戦開幕特集③】
https://www.youtube.com/watch?v=M9KmdpRR4E8

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図は9手目▲9六歩まで。相掛かりに進みました。藤井聡太竜王は決勝トーナメント展望のインタビューで本局について「二人とも相掛かりを得意にしている。どちらがペースをつかむのがポイント」と述べていました(https://www.youtube.com/watch?v=aNiRRuyfdt8)。

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(得意の相掛かりを用いた佐々木大七段)

江戸時代、将棋の家元に大橋本家、大橋分家、伊藤家の3家がありました。駒の並べ方の「大橋流」や「伊藤流」はこの家元に由来しています。プロ棋士の多くは大橋流で並べていますが、少数派ながら伊藤流で並べる棋士もいます。その一人が本局の対局者である伊藤匠五段。伊藤姓で縁を感じてのことのようです。
大橋流は一段目から二段目、三段目の駒を中央から左右に並べますが、伊藤流は玉金銀桂のあとに歩香角飛の順番で並べます。

Dsc_3158_3 (伊藤匠五段が7三に歩を並べるところ。佐々木大七段は大橋流で並べている)