時刻は16時を回りました。豊島竜王は△7七桂成と銀を取られた局面で長考しています。▲7七同桂が普通ですが、すぐに指さないところを見ると何か嫌な筋があるのかもしれません。控室の青野九段に見解を伺いました。
「もしかしたら△8六銀(下図)の強手があるかもしれません」と青野九段。
歩切れの先手は▲8六同歩と取りづらい形のため、▲8五桂と歩を取る手が考えられます。しかしそれには△7七銀打が目の覚めるような強手です。以下▲同金△同銀成▲同玉△8五飛(下図)まで一本道ですが、次に△6五桂と△6九角の二つの厳しい狙いがあるため、この変化は先手が苦しいとされました。
戻って、最初の△8六銀に▲同歩と取り、△同歩に▲8五桂打と桂を打つ変化が検討されました。以下△8七角▲7九玉△7五歩(下図)に、先手からも▲4四歩や▲2四歩などがあって「意外に難しい」とされました。ただ、先手としてはかなり気を使う変化のため、「これは時間を使って当然ですね」とのこと。しかし、ここで▲7七同金は妥協した感があるため、▲7七同桂と取れないようだと先手変調と言えそうです。
控室では、青野九段と山崎八段が継ぎ盤を挟んで検討している。
16時過ぎ、豊島竜王は32分の考慮で、図から▲7七同桂と応じました。妥協しない取り方に対して、青野九段が指摘した△8六銀の強手が指されるのかどうか。次の一手が注目されます。