2020年9月の記事

2020年9月19日 (土)

豊島将之竜王と羽生善治九段で争われる第33期竜王戦七番勝負は、下記の日程で行われます。

<第1局> 10月9、10日(金、土) 東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」
<第2局> 10月22、23日(木、金) 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」
<第3局> 11月7、8日(土、日) 京都府京都市「仁和寺」
<第4局> 11月12、13日(木、金) 福島県福島市「吉川屋」
<第5局> 11月26、27日(木、金) 鹿児島県指宿市「指宿白水館」
<第6局> 12月5、6日(土、日) 神奈川県箱根町「ホテル花月園」
<第7局> 12月16、17日(水、木) 山形県天童市「ほほえみの宿 滝の湯」

本日はご観戦くださいまして、ありがとうございました。

感想戦終了後、別室に移動して記者会見が行われました。

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――今日の対局を振り返っていかがでしたか。

羽生「序盤戦から力戦模様というか、手探りの感じの展開が続いていたので、互いに漠然としていて、はっきりしないような将棋だったという感想です」

――2年前の七番勝負でタイトル通算100期は成りませんでした。竜王戦で100期に挑戦することになりました。

羽生「タイトル戦に舞台に出場できないと、そういうチャンスがないので、挑戦者になれたのは非常によかったなと思っています。終わったばかりなので、気持ちの準備はできていませんが、これから開幕までにしっかり調整して、いいコンディションでスタートを迎えられたらと思います」

――現在の体調はいかがでしょうか。

羽生「体調はまったく普通で、変わりなく臨めています」

――豊島将之竜王の印象はいかがですか。

羽生「豊島さんは最新の形にも精通していますし、攻めても受けてもあまりミスがないというか、力強さを棋譜を見るだけでも感じています。七番勝負の舞台で顔を合わせられることは非常に楽しみに思っています」

――タイトル戦の舞台についてですが、前回竜王を失ってから2019年はタイトル戦から遠ざかっていました。タイトルに挑戦できた要因についてどのように感じていますか。

羽生「ほかの棋戦でも勝ち進んでいないので、今回挑戦できたのは幸運だったと思っています。そういうチャンスというか、機会を生かせてよかったなと思います」

――豊島竜王との七番勝負です。挑戦者決定戦が終わったばかりですが、ご自身で七番勝負はどういうところがポイントになりそうと思いますか。

羽生「2日制ですし、序盤でリードされると苦しいと思うので、作戦面でも準備しておくことが大事になると思います」

――番勝負前に50歳を迎えます。過去のご自身と50歳になってからのご自身のイメージの差や変わってきたことはありますか。

羽生「誕生日まではもう少しありますが、50代になってもタイトル戦に出られたのは、棋士として非常に名誉だと思っています。ただ、それに満足するのではなく、励みにして、前に進んでいけたらと思っています」

――タイトルホルダーは最年長は渡辺明名人が36歳。ご自身よりも一回り以下の世代がすべてのタイトルを持っています。ご自身も羽生世代という世代を形成しましたが、世代間にご自身で思うことはありますか。

羽生「30代や20代以下でも強い人はたくさんいますし、同年代でも久保さんが王座に挑戦しています。同年代も変わらずに活躍しているので、世代にこだわずに目の前の一局を一生懸命やっていくということでしょうか。

――若い世代の代表格で藤井聡太二冠がいて、過去のご自身のフィーバーに近い人気があると思います。新しい世代の活躍が刺激になった部分はありますか。

羽生「刺激というか、藤井さんは二冠ですから、大きな実績を残されているわけですし、日々の対局や棋譜を見て、参考にしたり勉強したりというところです」

――2年ぶりのタイトル戦です。それまでは毎年タイトル戦に出るのが日常生活のような状況だったと思います。タイトル戦に出ない期間というのは、以前とリズムが変わったと思うのですが、どのように対局に準備しましたか。

羽生「移動が少なくなって、体調面では少し楽になったのはあります。本当の真剣勝負というか、大舞台での対局はなかったので、その辺はどうなるのかなというのは、やってみないと分からないと思っています。生活はここ1、2年は変わったと思います」

――将棋の向き合い方や対局の準備でここ1、2年で工夫されたのでしょうか。

羽生「課題というか、考えないといけないことが多くありすぎて、最近の将棋を理解しているかどうかわからないですが、自分なりに少しずつそういうところを後れを取らないように考えています」

――100期という節目は、羽生九段にとってどのようにありますか。

羽生「タイトル戦に出ないとどうにもならないですし、最近はその機会すらずっとなかったので、考えることもなかったというのが実感です。ただ、非常に大きな記録がかかるシリーズですので、その舞台にふさわしい将棋を指したいなと思っています」

――応援するファンや50代の方からの視線が送られるタイトル戦になると思います。その思いをうかがえますか。

羽生「将棋は幅広い年代というか、世代でできる競技ではあるので、50代であれば50代なりの将棋を指せていければいいなと思っています。それがどういうものになるのかというのは、これからの課題になると思います」

――失冠して九段を名乗ってから2年間のチャレンジは、それまでタイトルを持っていた日々とは違う意義というか、位置づけですか。

羽生「なかなかタイトル戦に近づくのは難しかったですし、いまは強い人がたくさんいるので、一局一局を一生懸命にやっていたということですね。タイトル戦にすごく出ていた時期は、1年もたつとだいぶ忘れてしまって、目の前の課題に集中していくというところでした」

――22日から王将戦のリーグも始まります。初戦は藤井聡太二冠です。意気込みをお聞かせください。

羽生「王将リーグも来週から開幕で、11月の終わりぐらいにリーグ最終戦です。間隔が詰まってやっていきますので、気力を充実させていきたいと思っています」

――竜王戦七番勝負に向けての意気込みをお願いいたします。

羽生「私にとっても久しぶりのタイトル戦ですので、張り切って臨みたいと思っています。ファンの皆さんに楽しんでもらえるな将棋を指せるように力いっぱいやりますので、よろしくお願いいたします」

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(書き起こし=銀杏)

終局直後、主催紙によるインタビューが行われました。

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【羽生九段の談話】
――本局を振り返っていかがでしょうか。
羽生「序盤から見通しが立たない感じの将棋と思って指していました。難しいというか、形勢判断がつきかねる感じで進んでいたと思います」

――どのあたりでペースをつかんだと思いましたか。
羽生「香を取って、飛車取りの催促をする形になったところはよくなかったのではないかと思います」

――三番勝負は丸山九段の先勝でしたが、どのように修正しましたか。
羽生「一手ずつ丁寧に指していこうと思っていました」

――挑戦権を獲得になります。2年前に挑戦されたタイトル100期がかかっています。
羽生「そういう舞台で指せることは非常にありがたいことだと思っていますので、充実させて開幕を迎えられたらと思います」

――豊島竜王との七番勝負です。抱負はいかがでしょうか。
羽生「終わったばかりでまだ何も考えていませんが、これからしっかりとコンディションを整えたいと思います」

――七番勝負の始まる前の9月27日に誕生日で50歳になります。
羽生「特別意識していたことはありませんが、よかったなと思います」

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【丸山九段の談話】
――本局を振り返っていかがでしょうか。
丸山「4筋で歩交換したのはつまらなかったかと思いましたが、そのあともしょうがなかったと思いましたけど、その辺から方向性がおかしくなってしまったかと思いました」

――三番勝負は先勝したわけですが。
丸山「三番勝負ですが、一局一局が勝負ですから」

A7302407(インタビュー終了後、感想戦が行われた)

(書き起こし=銀杏)

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豊島将之竜王への挑戦を目指す第33期竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局は、21時31分に99手で羽生善治九段の勝ちとなりました。消費時間は▲羽生4時間26分、△丸山4時間47分。羽生九段が竜王復位、タイトル通算100期を目指して挑戦権を得ました。
第1局は10月9・10日に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で指されます。

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図の▲4四桂が後手玉の急所を突いた一着。△4四同歩は▲6三銀と捨てる手があり、後手玉は寄り形になります。羽生九段が勝ちに近づいています。

控室では常務理事の鈴木大介九段、将棋プレミアムで解説を務める中村太地七段、中村真梨花女流三段が継ぎ盤で検討しています。

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A7302340_2 (鈴木大介九段)
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(中村太地七段)

A7302352(中村真梨花女流三段)


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図は19時40分頃の局面。▲4七角が△2九飛成を防ぎつつ、▲8三銀を狙った攻防手です。控室では、この手の評判がよく、先手が確実にリードを広げているとみられています。

20200919_71夕食休憩の直前から急に指し手のペースが上がってきました。図は▲7五桂と打った局面。後手は放置すると▲5四飛△同歩▲4四馬から寄り筋に入るため、何か処置を施す必要があります。7五桂は、4七馬の利きがなくなれば▲8三銀と覆いかぶさる手もあり、後手にとってやっかいな存在です。丸山九段が形勢不利をひっくり返せるか、正念場を迎えているようです。

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