19日は天童市内を巡りました。将棋駒、将棋盤の「中島清吉商店」を訪れ、飾り駒の文字入れ体験をした豊島竜王・名人。今回、【その15】の写真の何枚かは「豊島監督」が撮影しました。人間将棋が行われる舞鶴山から天童市内を眺め、水車そばでは駒形のそばに舌鼓を打ちました。食べ終わると、「王将」が浮かび上がってきました。どこまで行っても、天童は「将棋のまち」でした。
天童市、米沢市、山形市を巡った今回の祝賀会・旅行編は結びの時を迎えます。将棋ファンのみなさま、1月14日(火)夜に東京都渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行われる「第32期竜王就位式・祝賀パーティー」でお会いしましょう。(※第32期竜王就位式・祝賀パーティーのご案内)
【エピローグ】
お祝いムードに包まれた天童を後にした彼は、上杉家の歴史をたどるべく米沢へ足を運んだ。上杉氏の「結界」に心を洗われ、蔵王の冷気に本格的な冬の訪れを感じた。山寺では、むこうの連山に沈みゆく、ほのかな紅色に染まった夕焼けに心を奪われた。
天童では子供たちと盤を挟んで会話をした。「お願いします」「ありがとうございました」と、天童の夜空が張り裂けんばかりの声であいさつする少年がいた。その透き通った声を聞いた彼が心をふるわせていたことは、誰の目にも明らかだった。彼は文字通り、山形・置賜地方、村山地方を五感で味わっていた。
「東北が、好きです」と彼は照れながら語った。さわやかな駒音を響かせるため、豊島将之は再び天童の地に降り立つだろう。
[天童編 完](写真、記:読売新聞・吉田)