(終局直後の様子。両者はすでに口を開いて感想を述べ合っていた)
――豊島名人、本局を振り返って、いかがでしょうか?
豊島 最新の形から、ずっと難しい際どい将棋だった気がします。初めのほうでこちらが時間を使う展開になったので……。
――よくなったと思ったところはどこでしょうか?
豊島 最後のほうまで分からなかったですね。夕食休憩明けのところで飛車を切っていきましたが、まだよく分かっていないところもあったので。最後、▲8三金(89手目)を打って勝ちかなとは思ったんですけど。
――渡辺三冠は、本局を振り返って、いかがでしょうか?
渡辺 作戦は予定で、桂得してどうかという感じの将棋なんですけど、ちょっと▲5八金(61手目)のところで……そうですね、長考した割にはあまり、本譜はさえた手順がなかったというか。そこの辺りが勝負どころだったような気がします。
――勝負どころで誤ったかもしれない、と。
渡辺 そうですね。代わるいい手があったかどうかは分からないですけど、本譜はちょっとずつ悪くなっていったような。
――豊島名人は初の挑戦者決定三番勝負進出です。抱負をお願いします。
豊島 竜王戦はこれまで、本戦には出られるものの、なかなか挑決までいけなかったので……。まあでも、いつも通り一局一局やっていきたいと思います。
――対戦相手は永瀬拓矢叡王か木村一基九段です。
豊島 どちらがこられても強敵ですが、積極的に指して自分のよさを出したいと思います。





93手まで豊島名人が勝ちました。終局時刻は21時41分。消費時間は▲豊島4時間35分、△渡辺4時間58分。勝った豊島名人が挑戦者決定三番勝負に進出しています。
前記事の△6九角に対し、豊島名人は25分の考慮で▲8三金(図)と打ちました。この手は△7八飛▲9七玉△8八銀▲8六玉△8一飛までの詰みを防ぎつつ▲7四桂△同銀▲5二金△6三玉▲5三とまでの詰めろをかけた詰めろ逃れの詰めろです。▲8三金に△8七角成▲同玉△8五飛▲7八玉△8三飛とすれば後手は8三金を抜くことができますが、先手玉も少し余裕ができるので、以下▲5三と(△同玉には▲4四角がある)から自然に攻めていって先手が勝てるようです。中継室の高野秀六段は、「なるほど、これがいちばん手堅いですか」と納得したように口にし、対局室に向かいました。



時刻はまもなく20時になろうかというところ。豊島名人の強攻に対し、渡辺明三冠が悩まし気な様子で考える姿が目立ってきています。図の局面での残り時間は豊島名人が1時間39分、渡辺明三冠は24分です。
18時40分になって対局が再開されると、豊島名人は▲4三歩成△同金上▲同飛成(図)という飛車切りの攻めを決行しました。これで一気に終盤戦に突入です。









時刻は16時を回りました。図の▲5八金に、渡辺明三冠が50分ほど考えています。後手は△5四歩と打って5五銀を引かせられればよいですが、先手からは銀を引かずに▲1七角(△5五歩に▲4三歩成の狙い)や▲4九飛(△5五歩に▲1七角~▲4三歩成の狙い)という手段が考えられ、△5四歩が成立するかどうかは微妙なところであるようです。