2014年10月の記事

2014年10月17日 (金)

今回で23回を数える海外対局の経験者を見ると、羽生善治名人が12回、谷川浩司九段と佐藤康光九段が6回ずつと、竜王戦で活躍した3人で50%以上を占めました。
谷川九段に海外対局の思い出話などをうかがいました。

「フランクフルトで行われた第3期竜王戦のときは、初めての海外でした。対戦相手だった羽生さんは初めての防衛戦、駒箱を開けるとき手がぶるぶると震えていたのを覚えています。ライン川などの観光もしました。

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第5期竜王戦第1局の△5七桂は筋が悪い手なので、読み切れないと指せないですが、優勢なので紛れなく分かりやすい手で攻めました。ヨーロッパでは時差はあまり気になりませんでしたが、ニューヨークやロサンゼルスは時差が大きかったですね。着いた次の日からは普通でしたが。地元支部の歓迎をいただき、ホームパーティをしていただいたことがあります。ロサンゼルスのときは、支部の方の自宅で開かれたのですが、大きなプールがあって驚いたことがあります。
今日の対局者は二人ともリラックスしているように感じました。対局が始まって、普段と変わらずやれていると思います。駒を並べるとき、羽生さんや佐藤さんだとゆったり並べますが、糸谷さんは早いので、森内さんも少し早めて並べていたように見えましたね」

本局を開催するにあたり、ハレクラニで竜王戦対局のチーフを担当された橋本公山さんの力によるところが大きいものでした。橋本さんは2001年に水泳の日本選手権で優勝。世界選手権に出場した経験を持ちます。12年12月から帝国ホテルからハレクラニへ出向し、もうすぐ2年になります。
「普段はゲストサービスマネージャーを担当しています。日本客の宿泊の手伝いや日本語のサポートをしています。ハレクラニで対局することになり、名誉でもありますし光栄です。大変うれしく思います。竜王戦というトップ対局の異次元の世界を垣間見られればと思います。
指導対局では井道さんに教えていただきました。多面指しでもあり、待って考えているときに楽しさがありました」
井道女流初段には六枚落ちで見事勝利され、拍手に包まれました。橋本さんは小学生のころに少し指していたことがあり、将棋連盟の方から将棋の本が贈られて、本や番組を見て勉強したとのことでした。

20141016_hashimoto(対局前日の15日に井道千尋女流初段の指導を受ける橋本さん)

ハレクラニの歴史は漁師をもてなしたビーチハウスに始まる。この家が"The House Befitting Heaven(天国にふさわしい館)"と呼ばれたことから、ハワイ語で"Halekulani"と名づけられた。haleは「館」、kuは「適当な、妥当な」、laniは「天国の」という意味だ。開業は1917年。1932年には建築家のチャールズ・ディッキーが設計した「ルワーズハウス」が建設され、現在のメインビルディングとして残っている。傾斜のある屋根が特徴的で、今回の対局室があるのもこの建物だ。
1981年、三井不動産が子会社の「ハレクラニ・コーポレーション」を通じて旧ハレクラニを取得。約2年間の工事期間を経て、1984年3月に新生ハレクラニとして開業した。今年は開業30周年を迎える記念の年となる。

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14時になり、ハレクラニ2階で大盤解説会が始まった。谷川九段があいさつし、続いて解説に移る。ハワイに到着したときの話から始まり、糸谷七段の初めての和服の話題になると「ここだけの話をすると……」と谷川九段。その場だけのエピソードが聞けるのも解説会の魅力だ。

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谷川「まず主催の読売新聞社さま、そしてこの素晴らしい対局場を提供していただきましたハレクラニさま、今日もいらしていますけども地元ハワイの支部の皆さま、ありがとうございます。今日は1日目ですのでゆったりしているわけですね、明日が勝負の着く着かないという日になります。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います」

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13時30分、対局再開。糸谷七段は対局室に早めに戻り、森内竜王は13時34分ごろに対局室に戻った。森内竜王が腰を下ろすと、記録係の石田四段が「時間になっております」と告げる。森内竜王はしばらく盤面を見ていたが、やがて盤上に手を伸ばした。糸谷七段は険しい表情でその様子を追っていた。

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12時30分、図の局面で昼食休憩に入った。昼食は森内竜王がチーズバーガー、ホットティー。糸谷七段がクラブハウスサンドイッチ、本日のスープ(ターキーと野菜)、アイスコーヒー。対局は13時30分に再開される。

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20141016_45図は45手目▲1八香の局面。森内竜王が長考しています。佐藤康九段に角換わり腰掛け銀について聞きました。

「最近の角換わりは、手の待ち方が難しいです。飛車や金だけでなく、香の位置の組み合わせなのですが、それがどれといいのか、整理し切れていないのが現状です。そこが棋士にとっては面白いところなのですが、パッと見では何がなんなのか違いがわかりにくいですよね。
香を上がる手待ちは▲1八香、▲9八香、△1二香、△9二香、△9三香と5種類もあります。上がらないシンプルな形もあるので香だけでかなり選択肢はあり ます。玉側の香を上がると穴熊にできますが、9八香に△9七歩とたたかれて損するかもしれません。そういう細かさがあります。玉側の香上がりはマイナスイメージがあったのですが、プラスもあるとわかってきました。やはり穴熊にすれば1路遠くなりますから。
後手は一番いいときに△6五歩▲同歩△7三桂と攻められればベスト。飛車が4八にいるときが理想的です。というのは、先手が4筋を攻めているので2二玉は直撃にならないのです」